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番外編 辺境伯の小さなお墓
お兄ちゃまの名前
しおりを挟む父さま、母さま、僕の三人でたくさん泣いて、気付けばお兄ちゃまはいなくて、冷たくなったご飯を母さまが温め直してくれました。
その後、ベッドに三人で入り、父さまと母さまにお兄ちゃまの事を教えてもらいました。
母さまのお腹の中にいる時に、母さまが大きな怪我をして、母さまのお腹からいなくなってしまったと教えてもらいました。
「お兄ちゃまは戻ってきてくれまちた。」
「ライール、もう一人のお祖父様とお祖母様のお墓に行って、花を置いてきた事があっただろ?ライールのお兄ちゃんもお祖父様やお祖母様と一緒で、会いたくてももう会えないん所にいるんだよ。
でも、お兄ちゃん、ライールや父様、母様に会いたくてきてくれたのかもしれないな。」
「ねえライール、お兄ちゃんは・・父様に似てるの?」
「父ちゃまがちぃちゃくなったみたいでちゅ。とっても優ちいお兄ちゃまでちゅ。」
「そう・・・なのね…。母様も会いたいなあ…」
「父様も会いたい…。こうやって四人で寝たかったな…」
「そうでちゅ、聞きたいことがあるのでちゅ。」
「なんだい?」
「父ちゃま、お兄ちゃまのお名前はなんでちゅか?」
「「名前⁉︎」」
「僕はライールってお兄ちゃまが呼んでくれまちゅ。お兄ちゃまは“何お兄ちゃま”でちゅか?」
「ごめんね、母様も父様もお兄ちゃんがお腹にいる事に気付いてあげられなくて名前もつけてあげられなかったの・・・。」
「じゃあお兄ちゃまのお名前を考えまちゅ。父ちゃま、母ちゃま、お兄ちゃまのお名前を決めてくだちゃい。」
「そうね…母様と父様とライールの名前から一文字ずつとって、シアールはどうかしら?」
「あ、良い名前だね。お兄ちゃんの名前は“シアール”だ。」
「チアール…はい、とっても良いお名前でちゅ!」
「さあ、ライールはもう寝なさい。」
「はい。おやすみなちゃい。チアールお兄ちゃま、おやすみなちゃい。」
『おやすみ…ライール。ありがとう・・・』
お兄ちゃまの声が聞こえたような気がします。
とっても眠くて僕はすぐに寝てしまいました。
**********************
ライールが眠った後・・・
「ライ…あの子は男の子だったのね…。
貴方にそっくりなシアール…産んであげたかった…抱きしめてあげたかった・・・。
名前すらつけてあげなかったのに…ごめんね…母様を許して・・・」
「シシー、シアールは泣いてる俺達を抱きしめてくれる優しい子だよ、シシーが泣いていたら心配するよ。」
「そうだね…でも…私も抱きしめたい…」
「俺もだよ…小さなシアールを抱いてあげたかった…」
そんな二人に、
『父様…母様…素敵な名前をありがとうございます』
と優しく微笑み、消えていった。
その日、三人は同じ夢を見た。
窶れた様子の痩せたどこかの使用人の女性が何かのお墓のような所に、パンと花を供えて手を合わせている。その女性の側でブライアンに似た少年が穏やかな顔で立っている、そんな夢だった。
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