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シアのアザ
しおりを挟むロイの退院祝いをした日から結婚式に向けての準備が猛スピードで進められた。
大人達がロイの暴走を恐れて、少しでも早くと切羽詰まったように進められている。
お母様、シェリルおば様、ロイによるドレスデザイン争奪戦は鬼気迫るものがある。
着る本人はその中には入れない。
入る勇気はない。
お父様は、あの退院祝いの後からたまに遠くを見つめ、涙ぐんでいる事がある。
こっちからしたら、あんな枕送っておいてと思うが、お父様の意見よりもお母様の意見が通ったのだろう。
そっとしておこう。
殿下とトリーも結婚式の準備に入ったようだ。
トリーの方はトリーのお母様が張り切って仕切っているらしい。王妃様は?と思うが、いろいろあるのだろう。
親子でワイワイ楽しそうだ。
そういえば陛下は最近体調を崩すようで、私とロイ、アンネリッタ様のお父様がよく陛下のお見舞いに行っている。
陛下は大丈夫だろうか…
お父様に聞いたら、
「あの人、怖がりなだけだから。」
とよく分からない事を言っていた。
学院ももう学期末で試験が終わったら冬の長期休暇に入る。
試験勉強でみんながカリカリしてる時、
それは起きた。
シアが顔にアザを作って登校してきた。
「シア!どうしたの!」
シアに駆け寄るも、
「リリー様、大丈夫です。大した事ないんで。」と言ってすぐ自分の教室に行ってしまった。
「ロイ、シア誰かに叩かれた。女の子の顔を叩くなんて許せない!」
「あのアザは気になるな。後で代理に聞こう。」
そう思っていたのに、シアが捕まらない。
いつもはトリーの代わりに私達に付いてるのに今はいない。
それでも誰かがいるだろうと呼んでみる。
「誰かいますか~」
と言うと、キャサリンさんが出てきた。
「今日はキャサリンさんだったんだね。」
「そうなんです。本当はシンシアさんだったんですけど。用事があるとかで交代しました。」
「キャサリンさんはシアの事何か知ってる?会員の人で知ってる人いない?」
「知ってるというか…」
「何か知ってるなら教えて欲しいの。最近全然会えてなかったから、シアに何があったか分からないの…」
「言っていいのかもアザの原因がそれなのかも分かりませんが…。
ちょっと前に、正門を出てすぐの所で男性と揉めているのを見ました。
シンシアさんは無視しようとしてましたが、男性がかなり怒っているようでした。
その時は暴力はなかったですが。」
「どんな人だったか分かる?」
「遠かったのでハッキリとは見えなかったのですが、“マシュー”とシンシアさんは呼んでいました。」
「マシュー…」
「ロイ、誰か分かる?」
「マシュー・・・すぐ誰とは出てこないな。」
「あ!殿下は?殿下に聞こう!
トリーちゃん今日いないから、殿下もいないかな…」
「さっきいたぞ。」
「マシューは代理の婚約者だ。」
と殿下が教えてくれた。
シアの婚約者。
シアは婚約者の事を何度聞いても教えてくれなかった。
「何かあったのか?」
殿下に今朝の事を話した。
「オレも詳しい事は分からんが、あまり関係が良くないようだ。
以前はそんな事はなかったが、最近はマシューに女が出来たらしいという話しは聞いた。それにしても婚約者を殴るとは許せんな。」
「女…」
シアは飄々として掴みどころがない感じだけど、明るくて、一本すっと芯がある正義感のある優しい女の子だ。
私がおかしくなった時、私を心配して眠れなくなるほどの優しい子だ。
そんな子を裏切り、殴り、傷付けた。
事情があろうがなかろうが知ったこっちゃない!
どうしてくれよう!!!!!!
「リリー、考えてる事は大体分かるけど、先ずは代理の話しを聞かないと。先走ってはダメだよ。」
「…そうだね、話し聞かないとね。逃げられないように作戦を練らないと!」
そうして、ロイとわちゃわちゃしながら作戦を練っていると、
「ここを出てからやれ!仕事にならん!」
と言ってたくせに最後は殿下も作戦会議に参加した。
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