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落ち込む魔王様
しおりを挟むルイジェルド視点
最近の父上は情緒が不安定だ。
カトリーヌとの結婚の準備が始まった頃から父上は、
「今日もジュリア殿は来ているのか?」
と聞いてくる。
父上の事情は聞いている。
想像でも恐ろしいのは分かる、だが、いい加減克服して欲しい。
皆に迷惑をかけていてる。
兄上も呆れて、
「もう俺が王になるか」と言っている。
父上はあんなだが、王としては尊敬出来る立派な方だ。
それが、カトリーヌの母上が来た途端ポンコツになる。
何かされる訳でもなく、会う訳でもない。
ただ来ただけで集中力がなくなる。
これは周りも頭を抱えた。
母上が
「イアン、ジュリア様はお優しい方よ。昔は怖い方だったかもしれないけれど、今はただの子を想う私と同じ母親よ。
一度、お話しになってみたら。」
と言ってみた。
それならばと、謁見以外で初めてジュリア殿と話しをする機会を作った。
その日、一人は嫌だと言うので、
オレとカトリーヌ、母上も一緒にお茶会という形でジュリア殿を待っていた。
父上もその時は母上が側にいるので落ち着いていた。
ジュリア殿が時間ピッタリにお茶会の場に現れた時、オレとカトリーヌは父上の少し後ろに立っていた。
ジュリア殿が挨拶した後、カトリーヌを見て微笑んだ。
父上はジュリア殿の笑顔が何より怖い。
そこからだ。
父上はもう何も話さなくなった。
表面上は分からないだろうが、「うん」とか、「ああ」とかしか言わない。
母上が
「陛下、ルイジェルドはもうすぐカトリーヌと結婚するのだから、もっとジュリア様と親睦を深めたら宜しいのではないですか。」
と言うと、
ジュリア殿が
「私などと慣れ親しむなど、畏れ多い事と存じます。
陛下が王太子の頃より側に仕えてまいりましたが、陛下は私にお心を開いては頂けませんでした。
ですので、御気遣いは結構で御座います。」
とキッパリ仲良くなんかならないと言われてしまった。
「ジュリア様、気分を悪くさせてしまってごめんなさいね。
陛下は気難しい方に見られるけれど本当はとっても可愛らしい方なのよ。ねえ、ルイジェルド。」
うわ、母上困ったからこっちに話しを振ってきた!
「そうですね、父上は母上に叱られると私や兄上の所に泣きついてくるなど可愛いところがありますね。」
「あら、そうなの?嫌だわ、カトリーヌもいるのに陛下を叱るなんて恥ずかしいわね。」
と母上がカトリーヌも引きずり込んだ。
「王妃様しか陛下を叱る事は出来ませんので、なんら恥ずかしい事などございません。
私はまだ陛下とはあまりお話しする機会がございませんので、お可愛い所は存じませんが、これから知っていけたらと思っております」
「そうね、これから沢山時間がありますからね。ジュリア様もそんな事は仰らず陛下と仲良くしてあげて下さいませね。ねえ、陛下。」
テーブルの下で母上が父上の手をつねっていたのが見えた。
「⁉︎・・・・・・」
「はい。こちらこそ娘共々よろしくお願い致します。
そろそろ私はお暇させて頂きます。
今日はお招きに預かりありがとうございました。」
「ええ、またお越し下さいね。カトリーヌはどうしますか、一緒にジュリア様と帰られますか。」
「私はまだする事が残っていますので。」
「そう。それではルイジェルド、ジュリア様をお送りしなさい。」
「はい、母上」
そして、オレはジュリア殿と歩いているが無言だ。
「ルイジェルド殿下、少しお話しをしても宜しいでしょうか。」
「え?ああ、どうぞ、お話しください。」
「殿下は私の昔の話は知っておられますか?」
「・・少しは知ってます。」
「そうですか…私を怖いと思いますか?」
「私は見てはいないのでその当時がどうだったのか分かりませんが怖いとは思い…ません」
「陛下は、まだ私の事が恐ろしいのですね…」
「あーーそれは、どうでしょう…私にはなんとも…」
父上、バレてますよ!
「癖…みたいなものなんです…勝利の雄叫びのようなものと言いますか、気分が昂ると笑ってしまうのです…」
「癖・・・ですか…癖なら仕方ない…ですね…」
「恐らくあの時陛下と一緒にいた方達も陛下と同じく私の事を恐れているのだと思います…」
「そんな事は…ないかと…」
「ワソニック伯爵は確実ですね」
アラン殿もバレてるぞ。
「とても印象的だったとは聞いていますが、それほどだったのですか?」
「らしいです…主人はそれが良かったらしいのですが、血を浴び、死体を前に高笑いしているのですから恐ろしいですよね…。
ですが、決して陛下をどうかしようなどと思っている訳ではないのです、誰彼構わず刃を向ける事などないのです…」
「分かっていますよ、ただ父上は命を狙われていた状況だからこそ余計に恐ろしく感じたのかも知れません。」
「そうですね…それなのに私は冷静さを失ってあのような事をしてしまいました…。
不甲斐ない限りです…。」
「分かりました。私と母上で父上をなんとかしますので、ジュリア殿はお気になさらないで下さい。」
「ありがとうございます、ルイジェルド殿下。
ここまでで宜しいですよ、話しを聞いて下さってありがとうございました。」
と言ってジュリア殿は帰って行った。
根本的に悪いのは父上だ。
ジュリア殿は父上を必死で守っただけなのだから。
それをいつまでもいつまでも、グチグチぐだぐだ騒いでるのが父上達だ。
なんか腹立ってきた。
急いで戻って母上に今聞いた話しをした。
「そうなのよ、ジュリア様はとても気にしているのよ。それなのにイアンはああでしょ…申し訳なくて…。どうにかならないかしら…ルイ、このままならそのうち、カトリーヌとの事も反対されるかもしれないわよ。」
「あり得そうですね…私が父上と話してみます」
そして何度か父上とジュリア殿の事を話したが全く納得してくれなかった。
さすがの母上も、
「そういう態度を取り続けるのなら、私は今後イアンとは一緒にいられません。
かと言ってすぐ治るものでもないですから、少し休んで下さい。
執務は私とヘンリーでなんとかしますから。」
という訳でロイ達がいる温泉地に行く事になったが、
父上がカイル殿達も引き連れて行くとゴネるのが鬱陶しいので、一緒に来る事になった、というわけだ。
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