番なんていません、本当です！

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私はプルーム王国王女メアリー、16歳。
そしてウサギ獣人です。
我がプルーム王国は獣人の国ですが、人族の方も普通に暮らしている普通の国です。
ただ耳と尻尾が特徴的なだけのふつーーうな国です。

そして、私メアリーは今隣国の人族の学校に留学しています。
かれこれ半年たちますね～。
人族の国マスリート国の王女ナタリーとは幼馴染みで仲良しだし、女の子のお友達もたくさん出来た。
でも、男の子は一切近付いて来ない。
話しかければ話してくれるが、誰一人私に興味を持ってくれない…。
私…王女なんですけど…。
顔だってなかなかのものですよ！
耳ですか？
耳がケモ耳だからですか？
それとも尻尾？
尻尾は隠しても出て来ちゃうのが気になりますか？
ご機嫌だと尻尾が可愛く揺れますよ！
女子には耳も尻尾も人気なのですが…。


人族の若者達は勘違いしております…。


私達、獣人族には“番”がいると思っていらっしゃいます…。


それ、物語の中だけですから！
都市伝説ですから！
未だかつて、そんな運命的な出会いをした方いませんから！

そんな人がいるならどんなに良かったか…。

お父様とお母様、お兄様には必ず誰か捕まえろと送り出されて早、半年…。

お父様…私の周りには綺麗な女性しかおりません…。

お母様…何でも噂では、私には運命の赤い糸で繋がった“番”がいるんだそうですよ…。

お兄様…貴方はこう言いましたね、
「メアリー、とにかくお淑やかにだぞ！
お前の好物はチョコケーキだ。決して、ニンジンだなんて言ってはいけないよ！」

はい…言いつけ通りに自己紹介でそう言いましたよ…。
なのに、ナタリーがお昼休みになる度に、
「メアリー、どうしてニンジンを食べないの？力が出ないわよ？」
と心配げに言うのです…。
ニンジンは嫌いではないけど好きでもありません…。
幼馴染みですらこんな感じです。


お友達のシャーリー様には、
「メアリー様、ウサギはニンジンを食べてこそのウサギですよ！」
と言われました…。

いやいや、私、ウサギですけど、獣人なんで、人族の方と食べる物同じですから！
友好国となってから何十年経ってるんですか？
どうして、覚えてもらえないのでしょうか…。

ま、原因は分かっているのです。

友好国となってすぐに出版された小説、
『旦那様は狼でした』が爆発的に売れ、シリーズ化し、未だに新刊が出版されているのです。
初版はもう70年前ですよ？
作者の方は一体何歳なんですか？

物語ですから、ある程度の誇張は仕方ないとして、どうして、獣人の設定を実際とかけ離れたものにしたんですか？

いい迷惑ですよ、獣人からしたら！
一度お会いして抗議したいです！

能力もほとんど退化してしまい、鳥科だからと言って、飛べる訳でもないんですよ！
くちばしがあるわけではないのですよ！
鳥類、爬虫類は見た目、人族と変わりませんよ。
哺乳類だけが耳と尻尾で獣人だとすぐ分かっちゃいますが、そのうち獣人化も無くなっちゃうと言われています。


なのに、その小説のせいで、獣人は身体能力が高く、生まれた時から“番”がいる、なんて夢のような事信じちゃうんですよ！

私以外の獣人の方、人族の方もそれほど気にはしていませんけどね…。
小説を読んでいる若者以外は番なんていないって事は知ってるんですから。
大人になれば皆さん勘違いに気付くんですけど、私は大人になるまで待ってなんかいられないんですよ！

だって、後4年で本物のウサギになっちゃうんですから！
喋るウサギになっちゃうんですよ！
中身は人で見た目はウサギって…。
恋も知らず…結婚も出来ず…買い物にも行けず…買い物には行けるかな？ダメだ、お金をつかめない…。


獣人の国プルーム王国には、稀に獣人の血を濃く受け継いだ者が生まれる事がある。
まあ、大体王族なんですけどね。
普通の獣人は10歳を超えたら耳と尻尾以外の獣人化は止まるけど、血を濃く受け継いだ者は、5年周期で次の変化が訪れる。
私が15歳の時、前歯2本が伸び始めた。

「あれ？メアリー、なんか顔変わった？」
とお父様。

「あら？メアリー、口から何か出てるわよ。え？前歯そんなに大きかったかしら？」
とお母様。

お兄様が、
「メアリー、お前、ウサギ化してるんじゃないか？」

その一言で、国王でライオン獣人であるお父様は立髪のような髪が逆立ち、

王妃でウサギ獣人のお母様の耳が今まで見た事がないほどピンと立ち、

王太子でライオンの血を継いだお兄様は、
「お前、20歳までに人族と結婚しないとウサギになるぞ。」


と冷静に私に告げた。