番なんていません、本当です!

jun

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プルーム家専用の離れに戻り、部屋で考えていた。
何故婚約者がいない人だけが信じないのか…。
呪いではないだろうけど、何か理由があるはず…。
なんでよりにもよって私なんだろう…。
今までずっとそんな人いなかったのに…。
でも文献が残ってるって事は昔はいたんだなぁ…その人は何になったんだろう…。
お兄様に調べて貰おう!
何の動物になって、それからどうなったのか?

あの前歯が伸びた時、私は伸びた歯を元の大きさに戻すまで、ひたすら固いものを齧った。
お兄様が探しに探して、遠い異国にあるお魚をカチンコチンにした“かつおぶし”なるものを取り寄せてくれた。

これが意外と美味しい!
ガリガリ齧ると、いい具合に出汁が出て美味しいのだ。

そんな事をしていて、昔の事を調べるのを忘れていた。
歯が元に戻ったが、またいつ伸びるか分からないのでカツオブシは持参している。

そしてすぐマスリート王国に来て、学校に通い出したが、婚約者どころか男友達すら出来ない…。

「ハアーーーーーー」

「姫様!なんですか、そのため息は!はしたないですよ!」

「だってクレア、ため息も出るわよ!
どうして男の子の友達が出来ないの?私、そんなに人気ないのーーー?」

「姫様、そんな事はありませんよ。姫様は小さい時から愛らしく、皆から愛されておりますよ。」

「でも婚約者も出来ないのよ、ウサギだからかしら…ヒョウとかチーターだったらスタイルも良いし、例え完全体になったとしても襲われる事もなさそうだし…。」

「種別に関係はありません。こういった事はタイミングです。私の予想ではもうすぐ出会えますよ。」

「何そのいい加減な予想!でもありがとう、クレア。元気出たよ。ちょっと散歩してくるね。」

「あまり遠くへは行かないで下さいよ!」

「は~~い。」

「姫様!返事は伸ばさない!」

「ハイハイ」

「姫様!」



クレアを放っておいて、庭に出た。

ここは私達プルーム王国から獣人が来た時に使う離れだ。
国交が樹立された時に、マスリート王国の方々が色々な動物が来ても大丈夫なようにと特別に建ててくれた広ーい敷地に池や野原や森がある。
初めて来た時は広くてすごーいと思ったけど、今は申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
だって、何かしらの動物を想像しながら作ったであろうこの景観…。
走り回ろうか…と家族で気を使ってしまった事は内緒だ。
でも、こんなに良くしてもらって本当に有り難いと思う。


なので侍女のケイトと散歩という名のピクニックを楽しむ為、森の中を歩いている。
森の中に綺麗な湖があって、四阿あずまやがある。

そこでのんびりするのが最近のお気に入りだ。

「姫様、お茶の準備をしますね。今日は何にしますか?」

「今日はね、定番で!」

「紅茶とクッキーですね。ちょっと待ってくださいね。」

「うん、ケイトも一緒に飲もうよ。」

「こんなに歩かせて何も飲ませなかったら怒りますよ。」

「だよね、ごめん。でも、ここは綺麗だよね、長い距離歩く価値があるよ。」

「そうですね、空気も違いますね。」

「空気が澄んでる感じだよね~ああ~生き返る~」

「はしたないですよ、姫様。」

「クレアみたいな事言わないで。」

その時、

「うひゃーーーめちゃめちゃ綺麗じゃん!」
と声が聞こえたかと思って振り返れば、
今最後の1枚を脱ぎ、湖に裸で走っていく男性がいた。

全くこちらに気付いておらず、真っ直ぐボート乗り場から湖に飛び込んだその男性は、そのまま気持ち良さそうに泳ぎだした。

少しして、別の男性が、
「おーーい、ジャン、お前、走るの早すぎーー!」
と言いながら服を脱ぎ出した時、こちらの気配に気付いた。

「あ!・・・ウサギ?」

「・・・・・・あの…ここはプルーム王国専用の敷地だと思っていたのですが、違ったでしょうか?」

「貴方達!この方はプルーム王国の王女、メアリー様と分かってここに来たのでしたら、これは由々しき事態ですよ!」

「え?王女?」

「おーーい、グレン、泳がないのかー?
あれ?誰かいるの?」

「ジャン、上がってこい、早く!王女様がいる!」

「は?王女…様⁉︎」

「早く!」

「だって、俺、裸だけどーーー」

「待て待て、持っていくから、待て!」

「見ないようにしますからごゆっくりどうぞ。」

「ありがとうございます、少しお待ちください!」

そう言って、裸の彼の服を持って走って行った。

「姫様、これは抗議すべきです!ここはプルーム王族のみが入れる場所です!
マスリートの王族の方でも許可がないと入れません!」

「まあまあ、だってこの湖を独り占めは勿体無いもの。でも、男の人の裸を初めて見たわ。あ、でも大事な所は見なかったわよ!」

「姫様!当たり前です!」

「フフ、ケイトは見たのね。」

「見てません!」

「ほら、服を着てくれたわよ。」



二人が走ってこちらへ来て、跪いた。

「申し訳ございません、滅多にここは使われないので、見回りの時に湖に来ていました。まさか、王女様がいらっしゃっていたとは存じ上げませんでした。
私が誘いましたので、こちらのグレンは許して頂けないでしょうか。
私の事は如何様に処分されても構いませんので。」

「いえ、付いてきたのは自分の意思です。
処分されるのであれば、私も同罪です。」

「まあまあ、そんな所に跪いてないで、こちらに座ってお話ししましょう。」

「いえ、滅相もございません!」

「姫様!」

「ケイト、少し黙ってて!これはとても好都合なのよ!私の人生がかかった事よ、ケイト!
これがきっかけで男の方とお友達になれるかもしれないでしょ!」

「ですが、姫様「何か事情がお有りなのですか?」」

「そうなんです…聞いてもらえますか?」

「ジャン、お前、やめろよ!」

「まあまあ、グレン、王女様が困ってるのを助けるのも俺達騎士の役目だと思うよ!」

「そうかもしれないけど…」

「貴方の名前はジャンっていうのね。そちらの方はグレンね。」

「そうです。」

「じゃあ、ジャンとグレン、ここに座ってちょうだい。」

「姫様…よろしいのですか?」

「良いのいいの、こっちだって切羽詰まってるんだから。」


初めての男友達になってくれるかしらと期待しながら、ジャンとグレンとのお茶会が始まった。














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