番なんていません、本当です!

jun

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午前中の授業が終わり、ナタリー、シャーリーと食堂へ向かい、何を食べようかとワイワイ話していると、

「キャーー」

と後ろから悲鳴が聞こえた。

「え?」
と振り返ると誰もいない。

「メアリー、どうしたの?」
「今、女の子の悲鳴が聞こえた。」
「何も聞こえなかったけど。」 
「私も聞こえませんでした。」とナタリーとシャーリー。

私はウサギなので耳が良い。
でも、確かに聞こえた。

「だれかが泣いてる!あっちだよ!」
と悲鳴が聞こえた方に駆け出した。

「待って、メアリー!」

途中でシリウス様とすれ違った。
「どうしたの、メアリー?」

「誰かが悲鳴をあげて泣いてるの!」
と走りながらシリウス様に伝えると、ナタリー達も走って来ていて、シリウス様も合流し、みんなで悲鳴がした方へ向かった。

悲鳴は校舎の裏の方だ。数人の声も聞こえる。
よく聞くと、“ジャン”、“生意気”、“ブサイク”の単語が聞こえた。

近くの物陰から覗くと、一人の女子をリーダー格の女子を中心に罵声を浴びせている。
悲鳴をあげたであろう子の頬は赤くなっている。
なんて事を!

飛び出そうとした瞬間、後ろから腕を掴まれ止められた。振り返ると、ナタリー達だった。
「ダメよ、メアリー!一人で突っ込まないで!」

「でも、あんな大勢で一人を寄ってたかって虐めるの、許せない!」

「私も行くから、少し落ち着いて、メアリー。」

「ごめん、ナタリー…」

「じゃあ、行こう。」

ナタリーを先頭に、女子達の所に向かう。

「貴方達、一体何をしているの!」

ナタリーの一言に一斉にこちらを見て、虐めてた人達の顔色が変わった。

「ナタリー様…これは…」

私は、頬を赤くし、青ざめて涙を流している女の子の側に近寄り、
「大丈夫?」と声をかけた。
こちらを向いた女の子は、超絶美少女だった。

「あり…がとう…ございます…」と言うと、
ポロッと涙が溢れた。

綺麗なブルーの瞳、サラサラの銀髪、パッチリお目目、長い睫毛をバッサバッサさせる度に溢れる涙。
何これ、惚れそうな程可愛いんですけど!

慌ててハンカチを出し、涙を拭いてあげた。

「ローズマリー・チルベル侯爵令嬢、この状況の説明をしなさい!」

「あの…フェリス様の間違った行いを正しておりました…。」

「間違った行いとはなんですか?」

「…フェリス様は日頃から白騎士のジャン様に付き纏い、ジャン様に迷惑をかけていますので、それを止めるよう言い聞かせておりました…。」

「フェリス様、そうなのですか?」

話しをふられたフェリス様はビクッとしながらも、
「私は、そのような事は…しておりません…。ただ、家が近く幼い頃から行き来しておりましたので…時折家に遊びに来る事はありますが、付き纏った事などありません。」

「だそうですが、ローズマリー様、どこがお気にいりませんの?幼馴染みならば、家の行き来など、当たり前なのでは?私もシリウス様の家に行く事がありますが、それも間違った事なのですか?」

「いえ、それは…。
申し訳ございません、私の勘違いでした…。」

「私に謝るのではなく、フェリス様に謝るのが正しいのではないのかしら?フェリス様の頬が赤いのはどうしてかしら?」

「フェリス様!申し訳ございませんでした。私達はこれで。」

と逃げるように取り巻きと共にローズマリー様達がいなくなった。

「フェリス様、大丈夫ですか?」とナタリーが聞くと、

「はい、大丈夫です。ありがとうございました。」
と、それはそれは可愛らしい笑みを浮かべお礼を言った。

男子なら“ズキューーン”とハートに矢を射られたであろう微笑みは眩しくて、思わず、
「グゥ…」
と声が出てしまった。

「どうしたの、メアリー?」

「あまりの可愛さにハートをやられた…」

「何言ってんの、メアリーは~。」

「それより、フェリス様はジャンの幼馴染みなんだね。」

「メアリー様はジャン兄様とお知り合いなのですか?」

「最近、友達になったの!グレンもね。」

「まあ、そうなんですね!ジャン兄様は少し強引な所もありますが、優しい方です。
グレン様は…とても優しい方です…」
と顔を赤らめたフェリス様の愛らしいこと!

「なるほど~グレンの彼女はフェリス様なんだね?」

「か、彼女なんて、そんな…おやめください…」と顔を隠すフェリス様。

「嘘⁉︎フェリス様、グレンと付き合ってるの?」

「…はい。」

シャーリーも混ざり、四人でワイワイしていると、
「いい加減にしないと、昼休み終わっちゃうよ!」とシリウス様に声をかけられ、急いで食堂に向かった。













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