番なんていません、本当です!

jun

文字の大きさ
7 / 36

7

しおりを挟む


食堂に着いたが、昼休みの時間も半分ほどになってしまったので、サンドイッチとジュースを皆で注文し、席についた。

「しかし、いつもあんな事されてるの、フェリス様は?」と聞けば、

「そう…ですね、よくあります…。ですが、叩かれたのは初めてです。」

「あの子は昔から誰にでもああなのよ!
ジャン、ジャン、五月蝿いのよ!」とナタリー。

「そうですね、中等部に入る前からでしたね。」とシャーリー。

「そうなんだ…なんか大変だね…グレンの彼女なのに、ジャンの事で難癖つけられるんだから」

「ジャン兄様は昔から人気がありましたから…。」

「グレン様とは婚約しないの?」

「近々する事にはなってます…」

「まあ、それはおめでたい事ね!」

「ありがとうございます。」と頬を赤らめ微笑むフェリス様は女の私でも惚れそうだ。

ニマニマしていると、
「メアリー…気持ち悪いわよ…」とナタリー。

「だって、フェリス様が可愛らしくて可愛らしくて!」

「メアリー様、恥ずかしいです…」

「クゥー、私が男だったら嫁に貰うのにぃ!」

「フェリス様はグレンのものよ。メアリーは早く結婚相手見つけなさい!」

「だって…誰も男子は寄ってこないのよ…どうやって見つけるのよ…」
サンドイッチを食べながら不貞腐れる。

「メアリー様は結婚相手を探していらっしゃるのですか?」

「そうなの…私ね…人間の男性と結婚して子供産まないとウサギになっちゃうのよ…」
耳がへにょりと垂れ下がってしまう。

「え⁉︎ウサギ⁉︎」

「たまに先祖返りみたいな子が生まれるらしいの。普通は耳と尻尾があるくらいで、ほとんど人族と変わらないのよ。でも私は二十歳までに人族と結婚して血を薄めないと喋るウサギになっちゃうの…」

「喋るウサギ…。それは大変ではありませんか!」

「そうなの…。だから昨日たまたま会ったジャンとグレンに誰か良い人いないか探してもらう事にしたの。試しにジャンに婚約してっていったら速攻で断られたわ。
グレンはきちんと彼女がいるっていってたわよ。」

顔を真っ赤にしたフェリス様は、
「そうなんですね…」
と嬉しそうに笑っている。

「私もお手伝いできる事があればやらせていただきます」

「ありがとう、フェリス様」

「メアリー様、私の事はフェリスとお呼び下さい。」

「じゃあ遠慮なく、フェリス、これからよろしくお願いしますね」

「はい」

うんうん、可愛い子が近くにいるだけで明るくなるね!

「さあ、早く食べないと午後の授業に遅れるわよ。」ナタリーの言葉に皆が慌てて食べ出し、教室へ戻ったが、私達を後ろから睨んでいたローズマリー様の事は誰も気付かなかった。

午後の授業が終わり、ナタリーと教室を出ようとした時、後ろでガターンと音がした。

振り返るとフェリスが倒れていた。

フェリスの横にはローズマリー様が立っていた。

「ごめんなさいね、少しふらついてしまって、ぶつかってしまったの。」

すぐフェリスの側に近付き、手を貸して立たせた。
ドレスは汚れ、腕も赤く擦り傷が出来ている箇所もある。見えないが足も負傷してるかもしれない。

「大丈夫、フェリス?」

「…はい…」

小さな声で涙ぐみながらフェリスが答えた。

「ローズマリー様!百歩譲ってふらついてぶつかったとしても、お優しいローズマリー様なら手を貸してあげるくらいなさっても宜しかったのではないでしょうか?
それともお昼休みにイジメ足りなかったのですか?それとも貧血になられたのでしょうか?それは大変です!
早く医務室にお連れしなければ!
誰か早くローズマリー様を医務室にお連れして下さい。また倒れられては大変ですわ!
誰か、誰かーーーー!」

「ちょ、ちょっとお待ちになってメアリー様、わたくしは大丈夫ですわ、体調がすぐれないようなのでこれで失礼いたします。」

そういうと走って行ってしまった。

教室に残っていた生徒達は、ポカーンとした後、プッと誰かが吹き出した後、大爆笑となった。

「もうメアリー、あなたキレてたでしょ?
耳、ピーンってなってたよ。」
とナタリーが笑いながら寄ってきた。

「メアリー様、ありがとうございました。」

「いやいや、フェリス大丈夫?怪我してるよ」

「大丈夫です、さっき倒された時は怪我より心が痛くて辛かったですが、メアリー様がローズマリー様を言い負かしてる姿を見ていたらスッキリして、痛みも忘れました。」

「だって、あの方、フェリスの横にふんぞり返って“いい様ざますわ”って顔で立ってたんだよ!その顔見たら我慢出来なかったの…」

「メアリーが言わなかったら私が言ってたわ。面白かったし。」

「メアリーもナタリーもあんまり刺激するなよ、あの人執念深いし根に持つタイプだから。」とシリウス様。

「でしょうね。喧嘩売ってくるなら真っ向勝負するまでよ!」

オオーーと歓声が上がり、

「頑張れー」
「応援してます!」
「可愛いーーーメアリー様~」
などと皆に声援してもらった。

みんなローズマリー様には色々溜めてたものがあったんだね。

みんなに手を振りながら、今度こそナタリーと下校した。





















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

番ではなくなった私たち

拝詩ルルー
恋愛
アンは薬屋の一人娘だ。ハスキー犬の獣人のラルフとは幼馴染で、彼がアンのことを番だと言って猛烈なアプローチをした結果、二人は晴れて恋人同士になった。 ラルフは恵まれた体躯と素晴らしい剣の腕前から、勇者パーティーにスカウトされ、魔王討伐の旅について行くことに。 ──それから二年後。魔王は倒されたが、番の絆を失ってしまったラルフが街に戻って来た。 アンとラルフの恋の行方は……? ※全5話の短編です。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

『番』という存在

恋愛
義母とその娘に虐げられているリアリーと狼獣人のカインが番として結ばれる物語。 *基本的に1日1話ずつの投稿です。  (カイン視点だけ2話投稿となります。)  書き終えているお話なのでブクマやしおりなどつけていただければ幸いです。 ***2022.7.9 HOTランキング11位!!はじめての投稿でこんなにたくさんの方に読んでいただけてとても嬉しいです!ありがとうございます!

王子の婚約者は逃げた

ましろ
恋愛
王太子殿下の婚約者が逃亡した。 13歳で婚約し、順調に王太子妃教育も進み、あと半年で結婚するという時期になってのことだった。 「内密に頼む。少し不安になっただけだろう」 マクシミリアン王子は周囲をそう説得し、秘密裏にジュリエットの捜索を命じた。 彼女はなぜ逃げたのか? それは─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

婚約破棄を言い渡したら、なぜか飴くれたんだが

来住野つかさ
恋愛
結婚準備に向けて新居を整えていた俺(アルフォンソ)のところへ、頼んでもいないキャンディが届いた。送り主は一月ほど前に婚約破棄を言い渡したイレーネからだという。受け取りたくなかったが、新婚約者のカミラが興味を示し、渋々了承することに。不思議な雰囲気を漂わす配達人は、手渡すときにおかしなことを言った。「これはイレーネ様の『思い』の一部が入っています」と――。 ※こちらは他サイト様にも掲載いたします。

処理中です...