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しおりを挟むベッドで大泣きしていると、ドアの向こうからジャンが、
「姫様、姫様、聞いて下さい!姫様!」
と言いながら、ドアをドンドンと叩いている。
「姫様、大きくなってたから驚いただけなんです!あんな手のひらにでも乗りそうな大きさだったのに、急に大きくなったから驚いただけなんです!
だから、そんなに泣かないで下さい!
もう見ませんから!姫様が嫌ならここに来ませんから!」
「嫌なんじゃない!」
「姫様。」
私はベッドからピョンと降りてドアの前まで行った。
ジャンに会いたいけど、この姿では会いたくない。
「ジャン、ごめんね、ちゃんと謝りたかったんだけど、この気持ち悪い姿をジャンが見て、嫌われたのかと思ったの…」
「嫌いになんかなりませんよ、安心して下さい。」
「ホントに?」
「はい、騎士は嘘をつきません。」
「この姿を見ても嫌な顔しない?」
「しません。」
「私は自分の姿を見て気絶したわ。」
「俺は騎士です。表情を隠す事くらいなんて事ないです。」
「隠してんじゃない!」
「いやいや、違うってば、ホントに嫌だったらちゃんと言います。でもどんな姫様でも姫様には変わらないんだから、俺は嫌じゃないって事を言いたかったの!」
「でも、一瞬でも嫌な顔されたら泣く…」
「だから、しないって言ってるでしょ!」
「でも…」
「あーーーーーー面倒くさい!開ける!姫様、開けるから!」
「ダメダメダメ!開けないで!」
「こんな事してたら姫様に会えないでしょ?大丈夫だから開けるよ。」
「ヤダヤダヤダ!」
「行くよ、せーの!」
「キャーーーー!」
バタンと勢いよくドアを開けたジャンと、ドアを身体で押さえていた私はゴロンと後ろに転がった。
「姫様!大丈夫?」
と駆け寄ったジャン。
「イタタ、大丈夫…」
「なんだ、姫様、さっきはチラッとしか見えなかったけど、少し毛深い姫様なだけだよ。」
「それが嫌なの!そしてこの四つん這い!」
「四つん這いって…。ウサギだもの仕方ないでしょ?」
「全身を見てないからだよ!裸の私の気持ち悪さは半端ないんだから!」
「裸…」
「そ、想像しないで…」
「あ~すみません…」
「ワンピースを着たウサギ…いわゆる人面ウサギ…私、将来本物のウサギになると思ってたけど、この姿が将来の自分なら今すぐ誰かと赤ちゃん作る!」
「待って待って!ヤケクソにならないで!」
「だって…」
「少し、落ち着こう、ね?」
ジャンは私の頭を優しく撫でてくれた。
こういう所が好きだ。
でも、ジャンには振られた。
だから別の人を探さなきゃならない。
でもなぁ…。
トボトボ・・ピョンピョン隣りの応接セットの所まで跳ねていく。
「お、やっぱ大きいから移動も早いね!」
とジャンは変な所に感動している。
「自分で移動出来るのはやっぱり良いね。」
「抱っこされるのは嫌だったの?」
「嫌ではないけど、迷惑でしょ?」
「俺は姫様抱っこするの好きだったのにな~あったかいし。」
「ちょ、あの、好き…とか…あの…」
「あれ?どうしたの?姫様。なんとなく顔赤い?恥ずかしいの?」
「はず、恥ずかしくなんかないし!」
「ふぅ~ん、じゃあ、抱っこしてみる?」
「は?出来るわけないよ、この大きさだよ?」
「だってもとの姫様くらいなんでしょ?出来るよ。」
「無理無理無理、ウサギだよ?ワンピース着た人面ウサギを王宮人気No.1のジャンがそんな不気味な物抱っこしてたなんて噂がたったら私殺されちゃう!」
「誰もみてないし!」
「いるし!そこにみんないるし!」
「彼女達は誰もそんな事言わないよ、ね?」
「「「「はい」」」」
「いやいや、噂って怖いよ!どこで誰が見てるか分かんないんだよ!」
「ハイハイ、しません。」
「ジャンは自分の人気をもっと自覚した方が良いと思う!」
「なにそれ?」
「だって、フェリスはジャンと仲が良いってだけで意地悪されてたんだよ。ローズマリーさんに。」
「ローズマリー?」
「そう、ローズマリー・チルベル侯爵令嬢。怖いんだよ、あの人。ダリア・エタノス伯爵令嬢がジャンに手紙渡したってだけで怒ってたもの。ジャンの婚約者になりたいんだって。」
「そうですか…。」
と言ったジャンは真剣な顔で黙ってしまった。
「姫様はフェリスが虐められてた時、フェリスを助けてくれてたんですよね?」
「うん。だってあの人酷かったもの。」
「そうですか…」
「どうしたの、ジャン?」
「ちょっと確認したい事が出来ました。これで失礼しますね、じゃあ、また!
姫様、もう泣いちゃダメですよ!」
と言い、走って行ってしまった。
そういえば、私大泣きしてたんだった!
顔、目が、きっと不細工に・・・・あ、そんな事よりもじゃもじゃだった私…。
ガックリと肩を落とし、ピョンピョンと寝室に戻ってベッドに丸まってそのまま寝てしまった。
その頃、ジャンはブチギレていた事を私は知らない。
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