番なんていません、本当です!

jun

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「ランバート、何故まだローズマリーを捕まえていない!あの女は他国の王女を殺そうとしたんだぞ!」

「落ち着け、ジャン!お前、この前、王太子として俺には敬意を払うみたいな事言ってなかったか?まあ、いいけど。
とにかく落ち着け。
今、ジェフが受け取った宝石を確認している。その宝石の購入記録が残っていたらなんとかなるかもしれないが、盗まれたと言われてしまえば、決め手にはならない。
執事見習いのスタンの動きを追ってる。
無闇に動くと証拠が全て消される。
だからもう少し待て。」

「あの女、フェリスだけでなく、姫様にまで手ェ出しやがって!」

「だーかーらー、落ち着けって、ジャン!」

「済まん…」

「何?メアリーに何かあったのか?」

「姫様が変身した…」

「は?」

「だから、姫様が変身して大きくなったの!それで姫様が泣いて大変だったんだ!」

「え?え?何、どういう事?ウサギが成長したって事?」

「ウサギ化は数日で治るらしい。プルームから連絡がきた。ジョージ様がこっちに来るらしい。超速便が来てた。」

「それでなんでメアリーが泣くの?」

「姫様、寝て起きたら大きくなってたらしい。その、なんて言うか、俺は可愛いと思うが、姫様は自分の姿が嫌で泣いた。」

「うーーーん、それで何で泣くのかよく分からんが、一度会いに行こう。ウサギのままではあるんだな?」

「ああ、姫様がそのままウサギになったくらいの大きさだ。」

「あーーなるほど。子ウサギではないんだな。」

「姿勢というか、ウサギだから四つ足でピョンピョン移動は出来るんだが、そのなんだ、女の子が四つ足でぴょんぴょんしてるっていうか、なんか艶めかしいっていうか、可愛いっていうか、とにかくそれが姫様は嫌なんだそうだ。」

「メアリーが四つん這いになってぴょんぴょんしてる感じ?」

「そう、それ!」

「アハハハ、何それ?アハハ、笑える!」

「ラン!姫様は号泣したんだぞ!笑うな!」

「ごめん、想像したら面白かった!」

「気にしてるんだ…気味が悪いって…。
誰にも会わないって、俺にも会おうとしなかった。だから無理矢理ドアを開けて部屋に入った。」

「お前、女の子の部屋に押し入ったの?ダメだろ。」

「最初見た時、俺が驚いた顔を気味悪がってると思って、泣かせてしまったんだ…。
だから、誤解を解きたくてつい…」

「いつも冷静なジャンがらしくないね~なんでかな?」

「泣かせてしまったんだ、謝りたいと思うのは普通だろ。」

「ふぅ~~ん、ま、いいけど~」

「ハァ~俺はジェフにもう一度話しを聞いてくる。」

「分かった。俺は後でメアリーのとこに行こうかな」

「やめろ!お前は絶対笑う!姫様を傷つけるな!」

「はいはい、騎士様は姫を守らないとね~」

「お前、覚えてろよ!」

そう言い、ジェフの所へ行った。

「ジェフ、調子はどう?」

ジェフは布団から出て本を読んでいた。

「姫様は大丈夫か?」

「第一声が姫様か?」

「あれから会ってない。何かあったのか?」

「あったと言えばあったし、なかったと言えばなかった。」

「どっちだよ!どっちにしても何かあったんだな?」

「ウサギ化が解けかけている。」

「良かったじゃん。何が不満なんだよ。」

「姫様が泣いていた。」

「は?なんで?」

「不気味だからって。」

「え?今どうなっての?」

「大きくなった。姫様が四つん這いになってる感じだ。」

「あーーーーー、それは…ちょっとしんどいか…。」

「俺は可愛いと思っている!」

「はいはい、で、何?」

「あ。お前が受け取った宝石の購入記録を探している。でも見つけたとしても盗まれたと言われたら手が出さない。
何か他に決定的な証拠はないか?」

「そうだな…今頃何の連絡もなくて向こうは焦ってるだろうな…。
俺んとこに誰も来てないのか、チルベル家から。」

「何も報告がないのなら来てないんだろう。」

「もう来ないか…。俺達が捕まったと分かったならもう接触はしてこないな、でもお嬢様は今びびってる。俺達が何か話すんじゃないかってな。俺達に依頼したスタンはヤバイんじゃねえかな、口封じされるかも。
屋敷は誰か見張ってんの?」

「確認する。もし見張りがいなかったら一度俺が行ってくる。」

「早い方がいいかも」

「分かった」


あのローズマリーという女…自分がどれだけ大事件を起こしたのか分かっているんだろうか?
他国の王女の誘拐、暗殺未遂。
侯爵家はもうダメだろう。
これだけの事をしたんだ。

一体どんな顔でいるのか見たくなり、学校へ向かった。
ナタリー様がいるので至急の連絡という言い訳がきくだろう。

学校に着き、ナタリー様に簡単に説明し、ローズマリーが登校しているか確認すると、

「今日は欠席してるわよ。ジャンが学校にいた事知ったら大騒ぎするでしょうね。」

と楽しそうに言っていた。


いないのならばここにいる意味はないので、すぐチルベル侯爵邸へ向かった。

そして、開け放たれた窓から怒鳴るローズマリーの声が聞こえた。

「どうして何の連絡もないのよ!どうなってるのよ!」

あ、これコイツで決まりだ。











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