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もう一人の元婚約者
しおりを挟むヘルマン視点
ダニエレが帰ってきた。
レイチェル様と共に。
そして、レイチェル様の元婚約者も。
ロルフ様とナースカス国王からの手紙とは別に、ロルフ様の側近のテレス殿からの手紙も何度か来ていた。
ロルフ様と国王陛下からはお礼状とダニエレ様の様子が書かれた手紙。
そして、ロルフ様から俺宛に手紙も来た。
その手紙と一緒にレイチェル様の元婚約者のテレス様からの物もあった。
王太子の側近として交流があっても良いかなと思って、とロルフ様の手紙には書いてあったが、テレス殿からの最初の手紙には思っていなかった事が書いてあった。
手紙にはダニエレとの初対面から城で伸び伸びと楽しんでいるダニエレの様子が事細かに書いてあり、目に浮かぶ姿にホッとした。
最後に書かれた文言に、ハッとした。
サンドラは元気なのだろうかと。
テレス殿は、同じ立場であるサンドラを気にかけてくれていたようだ。
してしまった事は許せない事だが、気持ちが分かってしまうから怒れないのだと書かれていた。
ダニエレとレイチェル様に、辛い目にあった二人の為に腹を立てたいが、どうしても怒りがわかなくて申し訳ないと謝ったらダニエレが「幼馴染みを慮ってくれてありがとう」と泣いてしまい、困ったと書いてあった。
なんだか涙が出た。
サンドラの気持ちが分かる唯一の人が、愛する人よりもサンドラを気にかけてくれた事が嬉しかった。
ダニエレも同じだったのだろう。
ダニエレの手紙にもテレス殿は何度も出てきた。余程テレス殿を気に入ったのか、何かと追いかけ回していたが、段々仕事をふられるようになって遊ぶ暇がないとほざいていた。
テレス殿の手紙には懐いてきてかなわんとハッキリ書いてあって笑ってしまったが。
そんなテレス殿に会ってみたかった。
そしてサンドラに会わせたい、そう思った。
馬車から降りてきたレイチェル様は可愛らしくも王族らしい凛々しさもあった。
陛下方と先を歩く後ろに、ダニエレとテレス殿がいた。
クルトも手紙を読んで、テレス殿のお人柄に惹かれ、ダニエレよりもテレス殿と話したくて二人ソワソワしていた。
「ダニエレ、おかえり。
テレス殿、私がヘルマン・ライスナーでございます!
テレス殿お疲れ様でしょう、さあさあ中へどうぞ私がご案内致します!」
「ヘルマン!ずるいぞ!
テレス殿、クルト・アティリアです!
あ、兄上、おかえりなさい、お疲れ様でした。」
「おい、お前ら!なんでテレスを優先するんだよ。テレスは俺が案内するからお前達はレイチェルを歓待しろ!」
「あの、私は付いて参りますので、どうぞお先にダニエレ様をお連れして下さい。」
「テレス!何故そんな他人行儀な呼び方をする⁉︎」
「他人だからですよ、ダニエレ様。ほら、レイチェル姫はあんなに遠くに行ってしまいましたよ、早く行ってあげて下さい。」
「そうだよ、兄上、レイチェル姫に付いて行かなきゃダメじゃないか!
母上と父上に取られてしまうよ!」
「嫌だ!お前達はテレスを連れて行ってしまうつもりだろ!テレスは俺の側で今後の打ち合わせをするんだ!」
「先ずは報告が先だ。だから同じ側近として俺がテレス殿の相手をする。お前達はさっさと先に行け!」
「あーーーとりあえずダニエレはレイチェルの所に行け!
クルト殿も後ほどゆっくりお話しさせていただきます。
ヘルマン殿、ご案内よろしくお願いします。」
「クソ、ヘルマンに取られた…」
「テレス殿、絶対後で色々ナースカスの事や色々お話しして下さいね、絶対ですよ!
ほら、兄上、行くよ!」
やっと王族二人を追いやり、テレス殿と二人になれた。
「ふぅ~なんだか人気者になった気分です…」
「人気者なんですよ、テレス殿。
私もクルトも貴方にお会いしたかったのです。会ってお礼が言いたかったのです。」
「お礼?」
「はい、貴方はダニエレと私、サンドラの心を救って下さいました。
ロルフ様とレイチェル様のお心もおそらくお救いしたのだと思っています。
本当にありがとうございました。」
「私は…お礼を言われる事をしたつもりはありません…。
ただレイチェルが幸せになれるならと身を退いただけです…。
サンドラ嬢がしてなかったら俺が同じ事をしていたかもしれない…。
だからサンドラ嬢を批難出来なかっただけなのです…。
ダニエレがワンワン泣くから何も言えなかっただけなんだよ。」
「それでもです。貴方がダニエレを受け入れ、二人を見守って下さった。
そして、貴方がサンドラの辛さを分かってくれた事が何より嬉しかった。
私の親友を、クルトは大好きな兄を、あんなに幸せな顔にしてくれたテレス殿に会いたくて仕方なかったのですよ。」
「なんだか分からないうちに男ばかりに懐かれてしまったようだ…。
ダニエレなど、俺の家に養子にしてくれとさっきまで騒いでいた。」
「アハハハ、それは良いですね」
あ~話したい事が沢山ある。
こんなに楽しみなのは初めてだ。
応援ありがとうございます!
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