貴方だったと分かっても

jun

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女性アレルギー

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ダニエレ視点


「ハァ…」

「ダニエレ!ため息止めろ!」

「だって…レイチェルもテレスもいない…」

「早く向こうに行く為に引き継ぎ作業してるんだろ!さっさと仕事しろ!」

「分かってるけど、寂しい…」

「それは…分かる。」


そうなのだ。
レイチェルもテレスも帰ってしまった。
ナースカスが快適過ぎて、自国にいたくないなんて思うとは思わなかった。

レイチェルも父上、母上と楽しそうにしていて笑った顔は可愛くて可愛くて抱きしめると顔を真っ赤にして怒るのがまた可愛い。
母上には怒られたけど。

王妃付きの侍女達は事情を知っているので、レイチェルにも好意的だったし、レイチェルの気さくな人柄もあり、帰る時にはまた来てほしいと言われていた。
一度サンドラからレイチェルに手紙が来た時は心配したけど、読んだ後、レイチェルが嬉しそうだったから安心した。

ヘルマンがテレスをサンドラに会わせた事は知らなかった。
その時にテレスはサンドラの話しに、辛かったな、頑張ったな、謝れて偉いぞと声をかけていたらしい。
サンドラとヘルマンの頭を撫でて抱きしめてくれたそうだ。
ヘルマンが自慢していた。
俺には頭を撫でた事も抱きしめた事もないのに!
でも、それがきっかけでサンドラは昔のサンドラに戻ったとヘルマンは喜んでいた。
少しでもサンドラが立ち直ってくれたのなら嬉しいし、テレスがサンドラを立ち直らせてくれたのがとっても嬉しかった。

早く仕事を終わらせて、ナースカスに行きたい。
俺はナースカスに行ってレイチェルに婿入りする事が決まった。
1年後に婚約を発表し、その時“運命の番”だとも発表する予定だ。
それまでに結婚の準備を進めておいて、半年後に結婚式を挙げて子作りに励めとテレスに命令された。
俺達の子が多ければ、アティリアの後継にもナースカスの後継にもなれるから、だそうだ。
そして、
「俺は全然諦めてないんだからな!」と捨て台詞吐いて帰って行った。


ヘルマンとケンカしながら仕事を着々とこなし、何とか2ヶ月で終わらせる事が出来た。

その間、レイチェルとは手紙のやり取りをして、なんとか会いたい気持ちを抑えた。

テレスからも手紙が来て、“今日のレイチェル”と一々、俺を煽る内容に、今度はこっちがレイチェルから聞いたテレスの恥ずかしい話しを“今日の可愛いテレス”と題し、返信してやったりと、忙しい毎日だった。

そして、今日、ナースカスへと出発となった。
今回はヘルマンも一緒行く事になったが、クルトが、
「後学の為に俺も行きたい!」と駄々を捏ねまくり、一悶着あったが、クルトは次回という事で納得した。
本当は父上も行きたいと騒いだが、母上に怒られ諦めた。
ヘルマンは上機嫌だ。


そして馬車での移動だが、男ばかりなので左程ゆっくりする必要もなく予定よりも少し早くナースカスに到着した。

両陛下、ロルフ、レイチェル、テレス、その他顔見知りになった者もチラホラ出迎えに出てくれた。

馬車を降りた途端に、

「「「「ダニエレ(様)ーーーー!」」」」

と王族一家が叫ぶと、城から

「「「「「オオオオオーーー」」」」」と雄叫びが聞こえ、ヘルマンが腰を抜かしそうになっていた。

すかさずテレスが支えてやり、倒れる事はなかったが、さすがの俺も驚いた。

「ダニエレ…何これ?」

「人気者ってことかな…」

「なんか凄くない?お前何やったの?」

「何にもしてないけど…」

2人でコソコソしていたら、テレスを撫でられた。

「みんな待ってたんだ。ほら行くぞ!」
と言って、陛下達の所に行き、俺達は大歓迎の中城に迎え入れられた。


俺とヘルマンは隣同士の部屋を割り当てられ、
夜は晩餐というか歓迎会みたいになって、
最初は引いていたヘルマンもテレスやロルフが居てくれたお陰で、気付けば庭師の爺やとも仲良くなっていた。

そんな時、悪気なく近くにいた女性使用人が俺に触れた。

ザワザワっと鳥肌が立ったと思ったと同時に、離れていたレイチェルが「キャッ!」と叫んだのが、聞こえた。
その使用人が、慌てて「すみません!」と言って、一瞬シーンとしてしまった。
マズイ!と思ったら、テレスが大きな声で、

「悪い、ダニエレは女性アレルギーなんだってさ!それで王太子じゃなくなったって、笑えるよな!」

「「「ええーーーー⁉︎」」」

そこからは大爆笑になって、恥ずかしいやら可笑しいやらでそこからは周りが男ばかりになってしまった。

全くテレスには敵わない。
あっという間に空気を変えてしまう天才だ。

アティリアにいる時も、父上が何度もウチに来いと誘っていた。
「ダニエレだけでも大変なのに、クルトとヘルマンなんか相手に出来ない!」と断っていた。
でも、テレスがいたらアティリアとは国交断絶にはならないだろう。
もちろんロルフもだが。
俺に妹がいたらテレスは絶対婚約させられてたな。


そして数日後からテレスに付いて仕事をバンバンさせられた。
ヘルマンは、ロルフに連れられあちこちナースカスの領地を視察していた。
休憩と称して、レイチェルの所に逃げ込むとすぐテレスが来て邪魔をする。
結局3人でお茶をしているわけだが、例の一件以来、レイチェル以外の女性は恐る恐る近付くのは、なんとも言えない…。
でも、たまたま城にに来た令嬢達は知らないから相変わらず追いかけてくるが、アレルギーだと思っている誰かが、
「ダニエレ様は女性アレルギーなんです!触ったら死んでしまいます、ダニエレ様が!」
と言って追っ払ってくれるようになった。

それが瞬く間に広がり、今度は貴族令息達が気の毒な顔で見てから、
「頑張って下さい…」と言ってくれるようになった。
良いんだか悪いんだか…。

そんな日々が過ぎ、ヘルマンが帰る日になった。
またまた送別会があり、お馴染みの爺やに泣かれ、次の日盛大に見送られ、帰って行った。


それからは俺とレイチェルが住む事になる公爵領に行き、国が管理していた執務を俺が引き継いだり、屋敷を改装したり、レイチェルのウエディングドレスのデザインを決めたり、テレスの両親に会い、謝罪してテレスの“弟”の位置を獲得出来たりと忙しくしていたら1年はあっという間に経った。

そして、アティリアと同時に俺とレイチェルの婚約と“運命の番”の発表となった。









───────────────────────

18時、21時の投稿にて本編は完結となります。





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