私の婚約者の苦手なもの 番外編

jun

文字の大きさ
上 下
114 / 143
新婚旅行編

トーマス視点

しおりを挟む


ルイジェルド殿下とトリーちゃんの結婚式の為、一斉に帰っていった。
物凄く静かになり、寂しくなった…。

クロはとうとう独寝するようになり、夜も一人になってしまった…。

陛下が帰る前に、クロに何が出来て、何が出来ないのかを確認していた。
クロに危険性がない事を知っているのは話しが出来る者しかいない為、安易にクロの存在を公表出来ない。
その為にもクロの環境整備が急務で、関係者以外の接近、接触を避ける水堀を作りたいが、時間も人手も足りない…
それならばクロにやれる事はやってもらおうとなった。

クロは土を掘る事自体をした事が無いので、俺が、犬が穴を掘る時の仕草を真似してみたら、クロはどデカい穴を掘った。
危ないのですぐ戻した。

“イケる”となってからは俺が監督としてクロを指導しながら堀になる場所の木の伐採をしている。

周りの警備は多すぎても少な過ぎてもダメなのでハンスやセバス、モトサン、その他元“影”の人達がやってくれている。

問題はクロの家だ。
あのクロの“おウチ”にいちいち行くのは面倒で、乗って行くしかない。
今ではハンス、セバス、モトサンはクロに乗れるようにはなったが、やはり危険極まり無い。
だったらクロ用の“鞍”を作ろうとなった。
クロはこれからどんどん大きくなる。
なので、大きくなっても使える物でなくてはならない。
これが中々難しい。
今はとりあえず試作品を製造中。

クロと堀にする場所の木を伐採…まあクロが踏み倒しているのだが、伐採している途中で滝つぼで遊ばせていた時、クロが滝に頭を突っ込んでいる時があった。

「クロ何しての?頭洗ってんの?」

『ここにある、赤いのが、美味しい』

「そんなとこに木の実なんかあるんだな」

『奥に、もっとある』

「奥?」

『穴がある』

「穴?デカいの?クロは入れないの?」

『怖いから、入った事ない』

「入れそうな大きさなの?」

『大きい、でも真っ暗』

「うーーん、俺が一緒なら入れる?」

『トーマス、一緒なら入る』

ならばと思ったが、何も装備していない。
暗くて見えなきゃ調べられないし、セバスとモトサンに相談しようと一旦戻った。

後日、セバスと俺とクロで滝の裏の穴に入ってみる事した。

とりあえずクロに乗り、穴に入ってもらったら、かなり大きい洞窟だった。雨具を入り口近くに置いていく。

入り口付近は明るいが奥は真っ暗だ。
松明を持ったセバスを先頭に、俺、クロと続く。
洞窟はクロが屈まなくても歩けるほど大きい。
かなり、奥が深い。


松明の火が揺れているから何処からか外気は入ってきているのだろう。

そして一番奥まで来ると、ちょっとした広場に出た。

「何コレ?」

「大昔に出来たんですかね。湧水もありますね、透明で綺麗ですから。」

「あの光ってるのはキノコ?」

「そうみたいです。今まで見た事はないです。でも、綺麗ですね。」

「うん、これくらいならクロも怖くないんじゃない?」

『ここなら眠れそう、静かだし』

「ここを新たなクロのおウチにしよう!誰にも入れないし!」

「そうですね、ここなら人は簡単には入れません。堀も作る必要がないのでは?」

「陛下に報告しとこう!」

早速、クロに報告してもらった。

陛下は、

「何?そんな良い寝床があったのか⁉︎それも滝の裏⁉︎なんて都合の良い場所に見つかったのだ!」
と大喜びしていた。

とにかく一度誰かに確認させると言い、ハロルドおじさんが来る事になった。

いつもいるだだっ広い所は少し整備して、宿直も出来る監視小屋の様な物を建てる事にした。
作業をしている間は、クロには隠れていてもらい、大工のオッチャン達にちゃちゃっと作ってもらった。
クロが倒した木材は沢山あるが、すぐには使えないらしいので、後日無料で提供するということで話しがついた。


数日後にはハロルドおじさんとハンスが来た。
クロは、父さん、俺の次におじさんの事が好きらしい。
尻尾をバタンバタンさせるのは、家族以外ではおじさんだけだ。
ちなみにサイモンとハンス、ロイには尻尾を一回だけバタンとする。
クロなりに気を使っているのだろう。

三人で滝の洞窟に入った。

おじさんもハンスも驚いていたが、
ハンスは、
「何ココ!凄い!秘密基地みたいだ!」
と感激していた。

奥まで行くと、

「これは凄いな、綺麗だ。空気も綺麗だ。空気穴が何処かにあるんだな。」

「この水、めちゃめちゃ透明ですよ、冷たいし、美味しい!なんか神聖な感じっすね!」

おじさんは、
「洞窟の入り口がクロ以外入れないようだし、水もある。真っ暗な訳でもないのでクロも怖くはないだろう。
クロ、食べ物はどうする?」

『クロは食べなくても、大丈夫。たまにみんなと食べる』

「そうか、ならここがクロの新しいおウチだ。」

ここはどういう仕組みなのか分からないが、寒くないのだ。
意外と快適だ。



こうしてクロの環境が大まかに整い、
いよいよお披露目だ。


なんと、俺が騎乗するんだとか!
ちょっと、ドキドキするぅ~!

そして、打ち合わせにヘンリーが来るそうだ!

しばらく会ってないから楽しみだ!








しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

雑多掌編集v2 ~沼米 さくらの徒然なる倉庫~

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:653pt お気に入り:6

オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,792pt お気に入り:619

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,386pt お気に入り:4,131

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:33,412pt お気に入り:2,830

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:17,440pt お気に入り:3,350

処理中です...