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「……皆様、お集まりいただけましたかしら? 本日は、我がローズウッド公爵家が主催する『最後の断罪劇』にお越しいただき、誠に光栄に存じますわ」
王宮の大広間。
昨日の今日だというのに、私は主要な貴族たち、そしてセドリック様やジュリアン様、カトレア様を一堂に集めていた。
壇上に立つ私の姿は、あのヴァンダル侯爵の息がかかった汚職貴族たちには、死神の招待状のように見えているに違いない。
「ベルベット! 一体何の真似だ。ヴァンダル侯爵を捕らえただけでは飽き足らず、我々まで呼び出して……! 公爵家といえど、不当な拘束は許されんぞ!」
最前列で、一人の肥満体の伯爵が顔を真っ赤にして叫んだ。
彼は侯爵の右腕として、数々の不正融資に手を染めていた男だ。
「不当な拘束? まあ、人聞きが悪い。私はただ、皆様に『最高のエンターテインメント』をお見せしようとしているだけですわよ。……さあ、舞台の幕を上げなさい!」
私が扇子をバサリと振ると、背後の大型スクリーン……ではなく、魔法投影機が起動し、空中に数々の帳簿が映し出された。
「これは……!? 馬鹿な、あれは焼却処分したはずだ!」
「あら。貴方が燃やしたのは、私がわざと用意しておいた『偽の偽物』ですわ。本物は、貴方の愛人が大切に抱えていた宝石箱の底に眠っておりましたのよ。……セバスチャン、回収ご苦労様」
「お嬢様のために、少々荒っぽい『お買い物』をさせていただきました」
影から現れたセバスチャンが、涼しい顔で一礼する。
「貴様……! こんなもの、法的な証拠にはならん! ただの公爵令嬢のハッタリだ!」
「ハッタリ? ええ、そうですわね。確かにこれだけでは、貴方のような往生際の悪い方を黙らせるには足りないかもしれません。……ですから、私、本気で『悪役』をやることにいたしましたの」
私はゆっくりと階段を降り、震える伯爵の目の前で足を止めた。
そして、これまでの人生で培ってきたすべての演技力を動員し、瞳から光を消した。
「いいですか、伯爵。私が本気で貴方を潰そうと思えば、証拠なんて必要ありませんのよ。貴方の領地の物流を止め、貴方の名前を社交界から抹殺し、貴方の家族を路頭に迷わせる……。私が『オホホ』と一度笑えば、それが貴方の人生の終止符になる。……その覚悟、おありになって?」
私は、冷酷そのものの微笑みを浮かべ、彼の喉元に扇子の先を突きつけた。
「ひ、ひぃっ……!」
「今、ここで自白なさい。そうすれば、貴方の家族の『最低限の生活』だけは保証して差し上げますわ。……さあ、どうしますの? 私の『慈悲』を受け取るか、それとも私の『本気』で灰になるか」
私の背後から、キース様が音もなく歩み寄り、腰の剣に手をかけた。
彼の放つ圧倒的な剣気が、広間全体の空気を氷点下まで下げる。
「……ベルベット嬢の言葉は、私の剣よりも鋭いですよ。伯爵、これ以上の無駄な抵抗は、命の保証をしかねますが?」
キース様の低い声が、伯爵の最後の理性を断ち切った。
「わ、私がやりました! 侯爵に命じられて、王宮の予算を……私兵の維持費に回しました! 全部、全部話しますから、命だけは!」
伯爵が崩れ落ちるように膝をついた。
それを皮切りに、周囲にいた共犯者たちが次々と「私もです!」「許してください!」と喚き散らし始めた。
「……あら。意外と早かったですわね。もう少し、追い詰める楽しみを味わいたかったですのに」
私は瞳に光を戻し、つまらなそうに扇子を広げた。
「カトレア様。見ていらした? これが、相手の心の隙間に『逃げ道のない恐怖』を流し込む、悪役令嬢の完成形ですわよ」
「し、師匠……! 凄いです! 今の『光の消えた瞳』、私、一生練習しても届く気がいたしませんわ!」
カトレア様が、感動のあまりノートにペンを走らせる。
その横で、セドリック様は口をあんぐりと開けて固まっていた。
「……ベルベット。君、本当に……本当に恐ろしいな。私は今まで、君の爪の先すら見ていなかったということか」
「セドリック様。貴方は今まで、私の『舞台』を最前列で見ていた観客ですもの。舞台裏の苦労を知らなくて当然ですわ。……さあ、後は王族としての貴方の仕事ですわよ。このゴミ掃除、完璧になさいませ」
私はセドリック様の胸に、証拠書類の束をドサリと押し付けた。
「……ああ。分かった。これからは、君に頼らなくてもいいように、私が……私が責任を持って、この国を立て直してみせる」
セドリック様が、初めて王子らしい、力強い眼差しを見せた。
どうやら、私の「悪役」としての最後の授業も、それなりの成果があったようね。
「……お疲れ様でした、ベルベット嬢。……見事な大立ち回りでしたね」
キース様が、騒ぎが落ち着いた広間の隅で、私に歩み寄ってきた。
「あら、キース様。私の演技、少しやりすぎでしたかしら?」
「いいえ。貴女らしくて、最高に美しかったですよ。……さあ、これで本当に『悪役』としての舞台は終了ですね。……次は、私の『共演者』としての舞台を始めていただけますか?」
キース様が、私の手を取り、指先に優しくキスをした。
周囲の貴族たちがどよめく中、私は顔を赤くしながらも、最後まで傲慢に顎を上げた。
「……仕方ありませんわね。貴方のリードが素晴らしいなら、その舞台、受けて立って差し上げますわ!」
私は、今日一番の、そして一番幸せな高笑いを上げた。
「悪役令嬢」としての私の本領発揮。
それは、王国を救い、そして私自身の未来を掴み取るための、最高のカーテンコールとなったのである。
王宮の大広間。
昨日の今日だというのに、私は主要な貴族たち、そしてセドリック様やジュリアン様、カトレア様を一堂に集めていた。
壇上に立つ私の姿は、あのヴァンダル侯爵の息がかかった汚職貴族たちには、死神の招待状のように見えているに違いない。
「ベルベット! 一体何の真似だ。ヴァンダル侯爵を捕らえただけでは飽き足らず、我々まで呼び出して……! 公爵家といえど、不当な拘束は許されんぞ!」
最前列で、一人の肥満体の伯爵が顔を真っ赤にして叫んだ。
彼は侯爵の右腕として、数々の不正融資に手を染めていた男だ。
「不当な拘束? まあ、人聞きが悪い。私はただ、皆様に『最高のエンターテインメント』をお見せしようとしているだけですわよ。……さあ、舞台の幕を上げなさい!」
私が扇子をバサリと振ると、背後の大型スクリーン……ではなく、魔法投影機が起動し、空中に数々の帳簿が映し出された。
「これは……!? 馬鹿な、あれは焼却処分したはずだ!」
「あら。貴方が燃やしたのは、私がわざと用意しておいた『偽の偽物』ですわ。本物は、貴方の愛人が大切に抱えていた宝石箱の底に眠っておりましたのよ。……セバスチャン、回収ご苦労様」
「お嬢様のために、少々荒っぽい『お買い物』をさせていただきました」
影から現れたセバスチャンが、涼しい顔で一礼する。
「貴様……! こんなもの、法的な証拠にはならん! ただの公爵令嬢のハッタリだ!」
「ハッタリ? ええ、そうですわね。確かにこれだけでは、貴方のような往生際の悪い方を黙らせるには足りないかもしれません。……ですから、私、本気で『悪役』をやることにいたしましたの」
私はゆっくりと階段を降り、震える伯爵の目の前で足を止めた。
そして、これまでの人生で培ってきたすべての演技力を動員し、瞳から光を消した。
「いいですか、伯爵。私が本気で貴方を潰そうと思えば、証拠なんて必要ありませんのよ。貴方の領地の物流を止め、貴方の名前を社交界から抹殺し、貴方の家族を路頭に迷わせる……。私が『オホホ』と一度笑えば、それが貴方の人生の終止符になる。……その覚悟、おありになって?」
私は、冷酷そのものの微笑みを浮かべ、彼の喉元に扇子の先を突きつけた。
「ひ、ひぃっ……!」
「今、ここで自白なさい。そうすれば、貴方の家族の『最低限の生活』だけは保証して差し上げますわ。……さあ、どうしますの? 私の『慈悲』を受け取るか、それとも私の『本気』で灰になるか」
私の背後から、キース様が音もなく歩み寄り、腰の剣に手をかけた。
彼の放つ圧倒的な剣気が、広間全体の空気を氷点下まで下げる。
「……ベルベット嬢の言葉は、私の剣よりも鋭いですよ。伯爵、これ以上の無駄な抵抗は、命の保証をしかねますが?」
キース様の低い声が、伯爵の最後の理性を断ち切った。
「わ、私がやりました! 侯爵に命じられて、王宮の予算を……私兵の維持費に回しました! 全部、全部話しますから、命だけは!」
伯爵が崩れ落ちるように膝をついた。
それを皮切りに、周囲にいた共犯者たちが次々と「私もです!」「許してください!」と喚き散らし始めた。
「……あら。意外と早かったですわね。もう少し、追い詰める楽しみを味わいたかったですのに」
私は瞳に光を戻し、つまらなそうに扇子を広げた。
「カトレア様。見ていらした? これが、相手の心の隙間に『逃げ道のない恐怖』を流し込む、悪役令嬢の完成形ですわよ」
「し、師匠……! 凄いです! 今の『光の消えた瞳』、私、一生練習しても届く気がいたしませんわ!」
カトレア様が、感動のあまりノートにペンを走らせる。
その横で、セドリック様は口をあんぐりと開けて固まっていた。
「……ベルベット。君、本当に……本当に恐ろしいな。私は今まで、君の爪の先すら見ていなかったということか」
「セドリック様。貴方は今まで、私の『舞台』を最前列で見ていた観客ですもの。舞台裏の苦労を知らなくて当然ですわ。……さあ、後は王族としての貴方の仕事ですわよ。このゴミ掃除、完璧になさいませ」
私はセドリック様の胸に、証拠書類の束をドサリと押し付けた。
「……ああ。分かった。これからは、君に頼らなくてもいいように、私が……私が責任を持って、この国を立て直してみせる」
セドリック様が、初めて王子らしい、力強い眼差しを見せた。
どうやら、私の「悪役」としての最後の授業も、それなりの成果があったようね。
「……お疲れ様でした、ベルベット嬢。……見事な大立ち回りでしたね」
キース様が、騒ぎが落ち着いた広間の隅で、私に歩み寄ってきた。
「あら、キース様。私の演技、少しやりすぎでしたかしら?」
「いいえ。貴女らしくて、最高に美しかったですよ。……さあ、これで本当に『悪役』としての舞台は終了ですね。……次は、私の『共演者』としての舞台を始めていただけますか?」
キース様が、私の手を取り、指先に優しくキスをした。
周囲の貴族たちがどよめく中、私は顔を赤くしながらも、最後まで傲慢に顎を上げた。
「……仕方ありませんわね。貴方のリードが素晴らしいなら、その舞台、受けて立って差し上げますわ!」
私は、今日一番の、そして一番幸せな高笑いを上げた。
「悪役令嬢」としての私の本領発揮。
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