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「お嬢様、大変です! 王宮から『罪状確定書』が届きました!」
翌朝、荷造りに精を出す私の元へ、侍女のアンナが青い顔をして駆け込んできた。
「罪状確定書? ああ、昨日殿下が言っていた例のリストね。どれどれ、見せてちょうだい」
私は、最新式の防寒マント(内側にソーセージを隠せるポケット付き)を試着しながら、その紙束を受け取った。
「見ないほうがよろしいですよ! あまりにも酷い、お嬢様を貶めるような内容ばかりで……!」
アンナが涙目で見守る中、私はどれほど凶悪な罪が並んでいるのかと期待に胸を膨らませて読み始めた。
第一条:深夜における不審な隠密行動、および不正な物品の摂取。
「隠密行動? ……ああ、夜中にこっそり厨房へ忍び込んで、焼き立てのパンにたっぷりバターを塗って食べていたことかしら」
「お嬢様、それは単なる『夜食』です……」
「だって、あの頃は王妃教育のせいで、夕食が小鳥の餌みたいなサラダだけだったんですもの。空腹は最大の敵よ」
私は鼻を鳴らし、次の条文に目を移した。
第二条:怪しげな薬物、および粉末の所持・使用。
「薬物!? 人聞きが悪いわね。あれは隣国から取り寄せた『激辛スパイス』と『乾燥キノコの粉末』よ。スープに入れるとコクが出て最高なんですもの」
「殿下はそれを、リリィ様を毒殺するための毒薬だと思い込んでいるようです……」
「失礼しちゃうわ。あんな美味しいものを毒だなんて。味覚の死滅した殿下こそ、一度北の地で厳しい食事教育を受けるべきだわ」
私はさらに読み進めた。
第三条:公式行事における、不敬極まる居眠りと王家の権威失墜。
「これは覚えがあるわ。歴史講義の最中よね。でも聞いてちょうだいアンナ、あの講師の先生、声が低くて心地よい子守唄みたいだったのよ。私は目を開けたまま寝る特技を身につけたのに、見破られるなんて一生の不覚だわ」
「自慢になりませんよ、お嬢様……」
第四条:聖女リリィに対する、身体的および精神的苦痛を与える発言。
「これね! 『そんなもの、今すぐ私の前から消して』ってやつ」
「はい、殿下はリリィ様の存在そのものを否定したとおっしゃっていますが……」
「違うわよ。彼女が持ってきた『手作りの愛妻弁当(仮)』が、どう見ても青紫色のドロドロした物体で、腐敗臭を放っていたから言ったのよ! あれを放置したら王宮がバイオハザードに包まれるところだったんだから!」
私は読み進めるうちに、怒りを通り越して笑いがこみ上げてきた。
「ねえ、アンナ。これ、罪状リストじゃないわ」
「えっ……違うんですか?」
「これ、私の『ライフスタイル・マニュアル』よ。私が私らしく生きていた証が、丁寧にも箇条書きでまとめられているんだわ!」
「お嬢様、ポジティブが過ぎます……」
私は「罪状確定書」を丁寧に折り畳むと、荷造り用のトランクの底に敷いた。
「よし、これでいいわ。これを見るたびに、王都での窮屈な生活を思い出して、『二度と戻りたくない』って決意を新たにできるもの」
「あ、あの、お嬢様。もう一つ……国王陛下から、ヴォルグ辺境伯への紹介状も届いています」
アンナが差し出したのは、重厚な封蝋がされた手紙だった。
「中身、見てもいいかな?」
「不敬ですよ! でも……気になりますね」
私たちは顔を見合わせ、こっそりと封を剥がした。
そこには、流麗な文字でこう記されていた。
『北の死神、ヴォルグ辺境伯へ。この手に負えない食いしん坊の悪役令嬢を、貴殿の領地で好きにするが良い。もし彼女が不満を漏らすようなら、魔物の餌にしても構わない』
「魔物の餌……」
アンナが真っ青になって震え出す。
しかし、私の反応は違った。
「魔物の餌……。ということは、北の地には魔物がたくさんいるのね? 魔物の肉って、実は美味しいって噂を聞いたことがあるわ。特に大猪の魔物なんて、脂が甘くて絶品だって!」
「……お嬢様、そっちですか」
「決まりね! アンナ、今すぐ追加で『魔物解体用のナイフ』と『最高級の岩塩』を注文して! 追放先でのメインディッシュが、私を待っているわ!」
「……かしこまりました。お嬢様の胃袋が、北の地の生態系を破壊しないことを祈るばかりです」
アンナは諦めたように溜息をつき、部屋を出て行った。
私は再び鏡の前に立ち、防寒マントの襟を立てた。
鏡に映る私は、確かに少し目つきが鋭いかもしれない。
けれど、その瞳には、これから始まる未知のグルメ、もとい、新生活への希望がキラキラと輝いていた。
「地獄へ落ちろ、ですって? ふふん。地獄だろうと極寒の地だろうと、私が歩けばそこが美食のパラダイスになるのよ」
私は高らかに宣言し、勢いよくトランクの蓋を閉めた。
パチン、と景気の良い音が部屋に響いた。
翌朝、荷造りに精を出す私の元へ、侍女のアンナが青い顔をして駆け込んできた。
「罪状確定書? ああ、昨日殿下が言っていた例のリストね。どれどれ、見せてちょうだい」
私は、最新式の防寒マント(内側にソーセージを隠せるポケット付き)を試着しながら、その紙束を受け取った。
「見ないほうがよろしいですよ! あまりにも酷い、お嬢様を貶めるような内容ばかりで……!」
アンナが涙目で見守る中、私はどれほど凶悪な罪が並んでいるのかと期待に胸を膨らませて読み始めた。
第一条:深夜における不審な隠密行動、および不正な物品の摂取。
「隠密行動? ……ああ、夜中にこっそり厨房へ忍び込んで、焼き立てのパンにたっぷりバターを塗って食べていたことかしら」
「お嬢様、それは単なる『夜食』です……」
「だって、あの頃は王妃教育のせいで、夕食が小鳥の餌みたいなサラダだけだったんですもの。空腹は最大の敵よ」
私は鼻を鳴らし、次の条文に目を移した。
第二条:怪しげな薬物、および粉末の所持・使用。
「薬物!? 人聞きが悪いわね。あれは隣国から取り寄せた『激辛スパイス』と『乾燥キノコの粉末』よ。スープに入れるとコクが出て最高なんですもの」
「殿下はそれを、リリィ様を毒殺するための毒薬だと思い込んでいるようです……」
「失礼しちゃうわ。あんな美味しいものを毒だなんて。味覚の死滅した殿下こそ、一度北の地で厳しい食事教育を受けるべきだわ」
私はさらに読み進めた。
第三条:公式行事における、不敬極まる居眠りと王家の権威失墜。
「これは覚えがあるわ。歴史講義の最中よね。でも聞いてちょうだいアンナ、あの講師の先生、声が低くて心地よい子守唄みたいだったのよ。私は目を開けたまま寝る特技を身につけたのに、見破られるなんて一生の不覚だわ」
「自慢になりませんよ、お嬢様……」
第四条:聖女リリィに対する、身体的および精神的苦痛を与える発言。
「これね! 『そんなもの、今すぐ私の前から消して』ってやつ」
「はい、殿下はリリィ様の存在そのものを否定したとおっしゃっていますが……」
「違うわよ。彼女が持ってきた『手作りの愛妻弁当(仮)』が、どう見ても青紫色のドロドロした物体で、腐敗臭を放っていたから言ったのよ! あれを放置したら王宮がバイオハザードに包まれるところだったんだから!」
私は読み進めるうちに、怒りを通り越して笑いがこみ上げてきた。
「ねえ、アンナ。これ、罪状リストじゃないわ」
「えっ……違うんですか?」
「これ、私の『ライフスタイル・マニュアル』よ。私が私らしく生きていた証が、丁寧にも箇条書きでまとめられているんだわ!」
「お嬢様、ポジティブが過ぎます……」
私は「罪状確定書」を丁寧に折り畳むと、荷造り用のトランクの底に敷いた。
「よし、これでいいわ。これを見るたびに、王都での窮屈な生活を思い出して、『二度と戻りたくない』って決意を新たにできるもの」
「あ、あの、お嬢様。もう一つ……国王陛下から、ヴォルグ辺境伯への紹介状も届いています」
アンナが差し出したのは、重厚な封蝋がされた手紙だった。
「中身、見てもいいかな?」
「不敬ですよ! でも……気になりますね」
私たちは顔を見合わせ、こっそりと封を剥がした。
そこには、流麗な文字でこう記されていた。
『北の死神、ヴォルグ辺境伯へ。この手に負えない食いしん坊の悪役令嬢を、貴殿の領地で好きにするが良い。もし彼女が不満を漏らすようなら、魔物の餌にしても構わない』
「魔物の餌……」
アンナが真っ青になって震え出す。
しかし、私の反応は違った。
「魔物の餌……。ということは、北の地には魔物がたくさんいるのね? 魔物の肉って、実は美味しいって噂を聞いたことがあるわ。特に大猪の魔物なんて、脂が甘くて絶品だって!」
「……お嬢様、そっちですか」
「決まりね! アンナ、今すぐ追加で『魔物解体用のナイフ』と『最高級の岩塩』を注文して! 追放先でのメインディッシュが、私を待っているわ!」
「……かしこまりました。お嬢様の胃袋が、北の地の生態系を破壊しないことを祈るばかりです」
アンナは諦めたように溜息をつき、部屋を出て行った。
私は再び鏡の前に立ち、防寒マントの襟を立てた。
鏡に映る私は、確かに少し目つきが鋭いかもしれない。
けれど、その瞳には、これから始まる未知のグルメ、もとい、新生活への希望がキラキラと輝いていた。
「地獄へ落ちろ、ですって? ふふん。地獄だろうと極寒の地だろうと、私が歩けばそこが美食のパラダイスになるのよ」
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