インドラの箱

夏風涼

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破6

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 そうだ。この国は実際、国内のあやかしと争っている場合ではない。
 
 今、この国は大変な状況にある。
 この国は鎖国状態にあったが、圧倒的な軍事力や科学力の差を背景に開国をせまり、不平等条約を結ばせた。そのため、この国の人間は生活が苦しくなり、貧困に喘ぐ者さえいる。
 
 今はまだ、この程度で済んでいる。だが、この程度で済む訳がない。
 実際、ユーロピアンは内政にまで干渉し始めている。この国の未来は誰もが不安に思い、もう、先がないと思っている者さえいるだろう。
 
 尚登は聞いていた私の顔を見て、にんまりと笑った。

「現状、ユーロピアンには軍事力では勝てない。けれども、それはこの国の人間に絞った話です」
 
 そこまで聞いて、私は目が点になった。
 どういう意味だろう。そこにどういう意味があるんだろうか?

「あやかし、ならばどうでしょう?」
 
 その言葉を聞いて、私は背筋が凍る思いがした。
 これ以上、先を聞いてはいけない、耳を塞ぎたい衝動に駆られる。

「もともと、私達、あやかし狩りの妖術、それはあやかしの力を研究し、模倣して作られた技術です。インドラの箱の存在もそうです。あやかしは我々人間の理解を遥かに超える能力を持っている。あやかしが本当に人間を害しようと思えば、我々は実際、太刀打ちできないかもしれません」
 
 怖い。私は怖かった。
 話の組み立て方から、尚登はあやかしにとてつもない不幸を課そうとしていることが分かる。
 私が愛したあやかし達。村の民、王家の民。そして、影縫。
 私と影縫が大事にしていた大切な皆が、苦しむ顔が目に浮かんでくる。

「質問をお答えしますね。私はあやかしを全て私の奴隷にします。あやかし達を人体実験して、全てを解明した後、あやかし達を戦争に用います。なんと、ユーロピアンには生命の複製の研究あるようで、その技術があれば、無限に増やしたあやかしの兵隊から、最強の力(妖力)を持った軍隊が出来あがります。そこで外国に戦争をしかけるですよっっ!! そしてこの国が世界を支配する世の中を作り上げるのですっっ!!」
 
 私の顔面は完全に血の気が引いた。
 恐ろしすぎる計画だ。
 あやかし達の屍の上に、この国の人間のための楽土を作りあげる。
 絶対にそんなことをさせてはいけない。
 私はさっき浮かんだ、あやかし達が現世という地獄で苦しみ悶える姿が目に映る。
 
 大砲や爆弾。
 それらによって、皆、皆死んでいく。
 絶対に尚登の計画を阻止しなければならない。
 決してインドラの箱を使わせてはいけないッッ!!
 
 尚登は千年殺し中、いや、この世界に響き渡るように邪悪な笑い声をあげていた。
 ここにいる、あやかしの皆に、身の毛がよだつような恐怖が浸透したところで、尚登は笑いを止めた。
「私の崇高な考えを理解していただけたところで、聞きます。インドラの箱はどこにあるのですか?」
 
 私は立ち向かう。
 私が今できる最大のことは、立ち向かうこと、それ以外ない。

「知るかッッ!! たとえ知っていても貴様に教えるものかッッ!!」
 
 私のできる限りの鋭い声と言葉を聞いた時、尚登はおぞましい程、恐ろしい顔をした。

「痛めつけろ!! 気絶しても構わん」
 
 後ろの二人に命令し、部屋の中に侵入してくる。
 私は戦おうとした。
 武器はこの二本の腕だけ・・・・・・。
 だが、連日の私刑により、私は立っているだけで限界だった。
 
 簡単に倒され、鞭で何度も、何度も。
 私の皮膚、骨、筋肉、全てに食い込んでいき、私はとうとう気が遠くなっていってしまった。
 最後に眼に映り込んだのは、影縫の笑顔だけだった。
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