インドラの箱

夏風涼

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破7

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 私は目を覚ました。
 そこは広大に広がる、草原。
 太陽が燦然と辺りに光を照らし、ここに根付く、草々や大小様々な樹木、そして、樹木を住処にするリスなどの小動物、広大な空を飛ぶ鳥たちや花につく虫たちまで、煌めくように反射させている。
 私はうなじ辺りに柔らかい感触があるのを感じる。
 
 ハッとした。
 
 そして、すぐに彼の横に端座する。

「ハハハ、どうしたのさ。凪紗」
 
 私は顔に熱が込み上げている。

「膝枕など、男にされたのは初めてだ。恥ずかしいのだ。恥ずかしいことをしてしまった」
 
 そんな私を横目に、影縫は言った。

「ハハハ、僕にもたれかかって寝ていたのに、今頃になって恥ずかしがるなんて、凪紗は面白いな」
「からかうな!!」
 
 もう、顔から火が出そうだった。
 そうなのか、私からまどろんでしまったのか・・・・・・。
 爽やかなそよ風が、私達に吹き付ける。
 
 私は草が波打つ様子を見ていた。
 ずっと。ずっと。ここにいられればいいのに・・・・・・。
 どこかでそれを望んでいた。これが幸せというものなのか?・・・・・・

「なあ、凪紗・・・・・・」
 
 私は再び、影縫にハッとさせられた。

「な、なんだ?」
「凪紗の父上は僕との婚約を許してくれると思うか?」
 
 私は眉間に皺を寄せながら、少し考えた。

「無理だと思う」
 
 考えるまでもなかったかもしれない。確かに父は優しい。
 だが、あやかし狩りの頭領であること。いや、誰でも同じか・・・・・・。人間とあやかしの婚約など、誰であっても許してくれないだろう。
 それを感じ取ったのか、影縫が言った。

「今の世の中、人間とあやかしの婚約が許されていないことになってる。でも、太古。人間とあやかしが共存共栄していたとき、僕らは夫婦になっていたんだ・・・・・・」
 
 私は目を見開いた。初めて聞く話だ。

「そうなのか?! その子孫はどこにいるのだ?」
 
 影縫は青碧の澄んだ瞳で私を見つめる。

「僕らだよ。僕らが何故、人間と造形が似ていると考えたことがないかい?」
 
 そういえば・・・・・・。
 翼は生えている。目の色も青だ。
 けれども目や鼻や口、そして手足。それはまごうことない、人間の身体だ。

「だからさ・・・・・・」
「だから?」
 
 影縫は私を両腕で、抱き抱えた。
 私は仰向けになって、手や足をバタバタさせる。

「影縫、何を・・・・・・」
 
 影縫が飛んだ。
 どんどん天空に昇っていく。濡羽色の両翼を羽ばたかせて、強く、だが優しく、飛翔していく。

「僕が、人間とあやかしが再び争わなくていい世の中、そして共に歴史を歩んでいける時代を作る」
「か、影縫・・・・・・・」
 
 全体重を影縫の腕に任せているため、怖いといえば、怖いかもしれない。
 だが、彼に、彼の腕に抱かれている感覚は私の心を暖かく包んでくれる。

「できるのか?」
「できるよ。そのために僕はまず王になる。そして君をお嫁にもらう時までに、世の中を変えてみせるよ」
 
 美形の顔をほころばせて、屈託のない綺麗な笑顔。
 私はきっと、影縫なら出来ると信じることにした。
 
 
 眼下には、草原と、遠くに見える森林。
 海岸線を越えて、大海原が見える。皆、陽光によって綺麗に輝いているように見えて、私はこの美しい国を争いのない国にしたいと心から願ってしまった。
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