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第一章.憤る山
3.無賃乗車
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「……あれだ」
「……本当に、する、んですか……?」
雪がまばらに降り、足下も雪が積もり、滑りやすく危険な山の斜面から少し降りた所にある崖……その落ちるギリギリの端まで詰め寄り右斜め下にあるトンネルを指さす。
「もちろん……俺は見た目もガナン人だからな、公共機関に堂々と乗るにはこれしかない」
「……さす、が、に……飛び、降りる……のは、怖い、です……」
「その時は俺は抱きかかえて飛んでやる」
「……(フルフルッ」
飛び降りるのが嫌だと言うから抱きかかえて飛んでやろうかと思ったのだが……そうだな、若い女の子が男性に身体を触れられたくないよな……。
「すまん、配慮が足りなかったな」
「……(フルフルッ」
申し訳なさそうに首を振られるとこちらも申し訳なくなってくるな。
「……一人でできるか?」
「…………怖、い……だけで……でき、ないわけじゃ、な、いです……」
「そうか……来たな」
彼女の覚悟を確認し終わったところで機械と蒸気の音がトンネルを反響して辺りに響き渡る……しばらく待つとトンネルの出口から指向性を持った──ライトの光が飛び出し、間を置かずして本体である汽車が勢いよく駆け抜ける。
「まだ……まだだ」
「……(コクッ」
タイミングを見計らわないとな、汽車の前方の方には固形燃料が積まれているから着地に適さない……しかしながらそれが過ぎたらすぐに飛び移らないとただの自殺になってしまう……彼女は本当に大丈夫だろうか?
「……っ! 今だ!」
「っ?!」
固形燃料を積んだ車両が過ぎて直ぐに掛け声と共に崖を飛び降りる……雪空の冷たい風が頬を打ち、冷気を伴った空気が耳元で騒ぐ。それらを目を細める事で受け流し、汽車の天井部に着地する。
「っ! リーシャは?!」
「……?!」
多少遅れはしたものの、予想に反して彼女はちゃんと飛んだようだ……しかしながら天井に降り積もった雪に足を滑らせ着地に失敗し、横から落ちる。
「捕まれっ!」
「……! (コクッ」
汽車の横に身体を踊らせるように浮く彼女の手を掴み取り、落ちる事を防ぐ。滑りやすく、振動によってこちらまで落ちそうになる心許ない足場で踏ん張り、後ろから吹き付ける雪を伴った暴風に耐えながらなんとか彼女を引っ張り上げる。
「ふぅ……肝を冷やしたな」
いや本当に……俺の提案によって依頼場所に辿り着く前に相棒が死亡、もしくは行方不明になるなど洒落にならん。
「……あの!」
「……なんだ?」
「…………あ、あり、がとう……」
「……大丈夫だ、こちらこそすまないな」
「……(フルフルッ」
本当に彼女は真面目で礼儀正しいな、会話が苦手だと言うのにちゃんとお礼などはやる……こちらこそ慣れない事をさせて申し訳ない。でもこれしか遠くまで早く移動する手段が無いんだよな……。
「とりあえず、この汽車は目的地のヴィーゼライヒ領の領都まで走る。途中の駅では前方の固形燃料か後方の積荷に隠れる」
「……(コクッ」
女の子と一緒だからな、できれば汚れない積荷の方に隠れたいがそこも人の出入りはある……安全面で言えば固形燃料の方へ隠れたいが、既に危ない目に遭わせてしまったんだ、彼女を尊重しよう。
「その後、領都に着く前に適当な場所で飛び降りる……出来れば雪が深く積もっている場所が望ましい」
「……(コクッ」
普通の場所では無駄な怪我をしてしまうし冬の水場は本気で凍死してしまう……消去法で安全に飛び降りられるのは深く雪が積もった場所だろう。俺たち魔法使いならば身動きできなくても、魔法で脱出することは容易い……怪我をしたり、その後で急速に体温を奪われたり、衣服が濡れてしまう事よりもそちらの方が断然リスクが少ない。
「その後──トンネルだ、伏せろ」
「っ?! ……(コクッ」
話の途中で前方にトンネルが現れたために伏せる、気を付けなければ身体のどこかが千切れるか良くて骨折だ。
「「っ?!」」
……しまった、そうだこれがあるんだった……。伏せて事故を未然に防げたは良いものの、トンネル内で逃げ場を失った黒煙がもろに直撃する……目など開けていられるはずもなく、たまらず息も止める。
「「……」」
彼女と二人でこのトンネルを過ぎるのを待つ……実際はどのくらいであったのかは知らないが、この時はトンネルが物凄く長く、時間は一分が一時間に思えた。
「「ぷはっ!」」
「「けほっこほっ!」」
目を閉じては居たが途端に強烈な寒風が顔を叩きつけた事でトンネルを過ぎた事を知る、二人してすぐに息を吸い込み咽せる……いきなり勢いよく乾いた冷気と雪を一緒に吸い込んだためだ。
「リーシャは無事──プッ!」
「……? …………ぷふっ!」
リーシャの無事を目で確かめようと隣を振り向いて笑ってしまう……だって、これは仕方がないよ。……リーシャが全身真っ黒なんだもん! 僕の中でディンゴも見てる? 面白いよこれ! こちらを振り向いたリーシャだって思わず吹き出してるしさ!
「クックック……」
「ふふ……」
「ハハハ……」
「ふふふふ……」
「「アッハッハッハッハッ」」
こちらを振り向いたリーシャと向き合い、お互いの真っ黒な惨状を目にして笑い合う。それまで無口だった彼女とは想像もできない笑い声を一緒になって上げる。
「ハッハッハ……」
「くふふ……」
笑いすぎた涙の後だけ汚れが落ち、それを見て二人してまた笑いそうになる……この時、相棒である彼女と距離が一気に縮まった気がした。
▼▼▼▼▼▼▼
「……本当に、する、んですか……?」
雪がまばらに降り、足下も雪が積もり、滑りやすく危険な山の斜面から少し降りた所にある崖……その落ちるギリギリの端まで詰め寄り右斜め下にあるトンネルを指さす。
「もちろん……俺は見た目もガナン人だからな、公共機関に堂々と乗るにはこれしかない」
「……さす、が、に……飛び、降りる……のは、怖い、です……」
「その時は俺は抱きかかえて飛んでやる」
「……(フルフルッ」
飛び降りるのが嫌だと言うから抱きかかえて飛んでやろうかと思ったのだが……そうだな、若い女の子が男性に身体を触れられたくないよな……。
「すまん、配慮が足りなかったな」
「……(フルフルッ」
申し訳なさそうに首を振られるとこちらも申し訳なくなってくるな。
「……一人でできるか?」
「…………怖、い……だけで……でき、ないわけじゃ、な、いです……」
「そうか……来たな」
彼女の覚悟を確認し終わったところで機械と蒸気の音がトンネルを反響して辺りに響き渡る……しばらく待つとトンネルの出口から指向性を持った──ライトの光が飛び出し、間を置かずして本体である汽車が勢いよく駆け抜ける。
「まだ……まだだ」
「……(コクッ」
タイミングを見計らわないとな、汽車の前方の方には固形燃料が積まれているから着地に適さない……しかしながらそれが過ぎたらすぐに飛び移らないとただの自殺になってしまう……彼女は本当に大丈夫だろうか?
「……っ! 今だ!」
「っ?!」
固形燃料を積んだ車両が過ぎて直ぐに掛け声と共に崖を飛び降りる……雪空の冷たい風が頬を打ち、冷気を伴った空気が耳元で騒ぐ。それらを目を細める事で受け流し、汽車の天井部に着地する。
「っ! リーシャは?!」
「……?!」
多少遅れはしたものの、予想に反して彼女はちゃんと飛んだようだ……しかしながら天井に降り積もった雪に足を滑らせ着地に失敗し、横から落ちる。
「捕まれっ!」
「……! (コクッ」
汽車の横に身体を踊らせるように浮く彼女の手を掴み取り、落ちる事を防ぐ。滑りやすく、振動によってこちらまで落ちそうになる心許ない足場で踏ん張り、後ろから吹き付ける雪を伴った暴風に耐えながらなんとか彼女を引っ張り上げる。
「ふぅ……肝を冷やしたな」
いや本当に……俺の提案によって依頼場所に辿り着く前に相棒が死亡、もしくは行方不明になるなど洒落にならん。
「……あの!」
「……なんだ?」
「…………あ、あり、がとう……」
「……大丈夫だ、こちらこそすまないな」
「……(フルフルッ」
本当に彼女は真面目で礼儀正しいな、会話が苦手だと言うのにちゃんとお礼などはやる……こちらこそ慣れない事をさせて申し訳ない。でもこれしか遠くまで早く移動する手段が無いんだよな……。
「とりあえず、この汽車は目的地のヴィーゼライヒ領の領都まで走る。途中の駅では前方の固形燃料か後方の積荷に隠れる」
「……(コクッ」
女の子と一緒だからな、できれば汚れない積荷の方に隠れたいがそこも人の出入りはある……安全面で言えば固形燃料の方へ隠れたいが、既に危ない目に遭わせてしまったんだ、彼女を尊重しよう。
「その後、領都に着く前に適当な場所で飛び降りる……出来れば雪が深く積もっている場所が望ましい」
「……(コクッ」
普通の場所では無駄な怪我をしてしまうし冬の水場は本気で凍死してしまう……消去法で安全に飛び降りられるのは深く雪が積もった場所だろう。俺たち魔法使いならば身動きできなくても、魔法で脱出することは容易い……怪我をしたり、その後で急速に体温を奪われたり、衣服が濡れてしまう事よりもそちらの方が断然リスクが少ない。
「その後──トンネルだ、伏せろ」
「っ?! ……(コクッ」
話の途中で前方にトンネルが現れたために伏せる、気を付けなければ身体のどこかが千切れるか良くて骨折だ。
「「っ?!」」
……しまった、そうだこれがあるんだった……。伏せて事故を未然に防げたは良いものの、トンネル内で逃げ場を失った黒煙がもろに直撃する……目など開けていられるはずもなく、たまらず息も止める。
「「……」」
彼女と二人でこのトンネルを過ぎるのを待つ……実際はどのくらいであったのかは知らないが、この時はトンネルが物凄く長く、時間は一分が一時間に思えた。
「「ぷはっ!」」
「「けほっこほっ!」」
目を閉じては居たが途端に強烈な寒風が顔を叩きつけた事でトンネルを過ぎた事を知る、二人してすぐに息を吸い込み咽せる……いきなり勢いよく乾いた冷気と雪を一緒に吸い込んだためだ。
「リーシャは無事──プッ!」
「……? …………ぷふっ!」
リーシャの無事を目で確かめようと隣を振り向いて笑ってしまう……だって、これは仕方がないよ。……リーシャが全身真っ黒なんだもん! 僕の中でディンゴも見てる? 面白いよこれ! こちらを振り向いたリーシャだって思わず吹き出してるしさ!
「クックック……」
「ふふ……」
「ハハハ……」
「ふふふふ……」
「「アッハッハッハッハッ」」
こちらを振り向いたリーシャと向き合い、お互いの真っ黒な惨状を目にして笑い合う。それまで無口だった彼女とは想像もできない笑い声を一緒になって上げる。
「ハッハッハ……」
「くふふ……」
笑いすぎた涙の後だけ汚れが落ち、それを見て二人してまた笑いそうになる……この時、相棒である彼女と距離が一気に縮まった気がした。
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