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四章 待ち受ける罠
術の中で
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コワイ、イヤダ
イタクシナイデ
ダレカタスケテ
(――こ、これは……っ)
影元の術に捕らえられた瞬間、ありとあらゆる声が桜麟へと殺到した。
それは、人間に無下に扱われた付喪神の残滓だった。輝久が祭っていた付喪神の神社で感じていたものに似ている。だが、そこに宿るのは憎悪や怨念、恐怖といった負の感情だ。桜麟を同じ場所へと引きずり込もうと、自分達がされてきたことを桜麟の脳内に流し込んでくる。
ある付喪神は、たった一度の失敗で破壊された。ある付喪神は、劣悪な環境で働かされ続けた。ある付喪神は賭けの対象にされ、意に沿わぬことを何度もさせられた。
(みなさんっ……!)
四方から聞こえる怨嗟の声は、主に恵まれた桜麟を許さないと叫ぶ。同じ思いをさせてやると何度も何度も攻撃する。
それらに抗いながら、桜麟は必死に自分を保っていた。
妖魔に堕ちてはいけない……そんな思いとは別に、もう一つの思いが芽生えてくる。
この者達を安らかに眠らせたい。この者達の恨みを利用させたくはない。
だって、悲しいではないか。散々な扱いを受けたあげく、霊力を失った後もこのような悪事に使われる。
(いま、わたしが癒してあげます)
邪悪な霊力に全身を包まれながらも、桜麟は一心不乱に祈った。
自分の力は癒しの力。妖魔から悪しき力を祓い、バラバラになっていた籠目すら一時的に話せるように癒やした力だ。きっとこの者達にも届く。
付喪神にまで『成る』には長い年月を、損じることもなく霊力を蓄える必要がある。その中では、きっと大切に扱われた時期もあったはずだ。それを思い出してほしい。
(どうか、どうか……怒りを収めてください)
術の影響で意識が遠くなりながらも願い続ける。
(輝久様、わたしに力を貸してください。このモノ達を鎮めたいのです)
数多の付喪神を癒すには、自分の霊力だけでは足りない。主の力を借りようと、その顔を脳裏に思い浮かべた。
(え……?)
そこで、桜麟は気が付いた。
自分の中から力が湧き上がっていることに。いや、どこからか霊力が流し込まれている……解放されるような感覚。
その出所を探すと――すぐに見つかった。
りん、と軽やかに一つ音が鳴る。
(この鈴……ただの鈴ではない!)
輝久の静謐な霊力を感じる。自分を封じるはずだった鈴が、今や桜麟の力を後押しするように霊力を放っていた。
(輝久様っ!)
間近に大好きな主の気配を感じ、桜麟の全身に力がみなぎってくる。彼女の力を解放するだけでなく、どのように使えばよいか導いてくれる。
「なっ、その力は……どういうことだ!?」
閉じた瞼の向こう側から、影元の慌てたような声。
「輝久様――わたしに力を!」
祈りながら桜麟が叫ぶと、彼女の全身から膨大な霊力が吹き上がった。まるで竜巻のように室内を荒れ狂い、張り巡らせたお札を次々に吹き飛ばしていく。
「はあああっ!」
桜麟の気合で首元の鈴が弾けた。それが引き金となって、さらなる霊力が解放される。彼女の中心から解き放たれたのは、炎を纏った麒麟。それは地面に描かれた紋様を完膚無きまでに破壊すると、天へ昇っていったのだった。
イタクシナイデ
ダレカタスケテ
(――こ、これは……っ)
影元の術に捕らえられた瞬間、ありとあらゆる声が桜麟へと殺到した。
それは、人間に無下に扱われた付喪神の残滓だった。輝久が祭っていた付喪神の神社で感じていたものに似ている。だが、そこに宿るのは憎悪や怨念、恐怖といった負の感情だ。桜麟を同じ場所へと引きずり込もうと、自分達がされてきたことを桜麟の脳内に流し込んでくる。
ある付喪神は、たった一度の失敗で破壊された。ある付喪神は、劣悪な環境で働かされ続けた。ある付喪神は賭けの対象にされ、意に沿わぬことを何度もさせられた。
(みなさんっ……!)
四方から聞こえる怨嗟の声は、主に恵まれた桜麟を許さないと叫ぶ。同じ思いをさせてやると何度も何度も攻撃する。
それらに抗いながら、桜麟は必死に自分を保っていた。
妖魔に堕ちてはいけない……そんな思いとは別に、もう一つの思いが芽生えてくる。
この者達を安らかに眠らせたい。この者達の恨みを利用させたくはない。
だって、悲しいではないか。散々な扱いを受けたあげく、霊力を失った後もこのような悪事に使われる。
(いま、わたしが癒してあげます)
邪悪な霊力に全身を包まれながらも、桜麟は一心不乱に祈った。
自分の力は癒しの力。妖魔から悪しき力を祓い、バラバラになっていた籠目すら一時的に話せるように癒やした力だ。きっとこの者達にも届く。
付喪神にまで『成る』には長い年月を、損じることもなく霊力を蓄える必要がある。その中では、きっと大切に扱われた時期もあったはずだ。それを思い出してほしい。
(どうか、どうか……怒りを収めてください)
術の影響で意識が遠くなりながらも願い続ける。
(輝久様、わたしに力を貸してください。このモノ達を鎮めたいのです)
数多の付喪神を癒すには、自分の霊力だけでは足りない。主の力を借りようと、その顔を脳裏に思い浮かべた。
(え……?)
そこで、桜麟は気が付いた。
自分の中から力が湧き上がっていることに。いや、どこからか霊力が流し込まれている……解放されるような感覚。
その出所を探すと――すぐに見つかった。
りん、と軽やかに一つ音が鳴る。
(この鈴……ただの鈴ではない!)
輝久の静謐な霊力を感じる。自分を封じるはずだった鈴が、今や桜麟の力を後押しするように霊力を放っていた。
(輝久様っ!)
間近に大好きな主の気配を感じ、桜麟の全身に力がみなぎってくる。彼女の力を解放するだけでなく、どのように使えばよいか導いてくれる。
「なっ、その力は……どういうことだ!?」
閉じた瞼の向こう側から、影元の慌てたような声。
「輝久様――わたしに力を!」
祈りながら桜麟が叫ぶと、彼女の全身から膨大な霊力が吹き上がった。まるで竜巻のように室内を荒れ狂い、張り巡らせたお札を次々に吹き飛ばしていく。
「はあああっ!」
桜麟の気合で首元の鈴が弾けた。それが引き金となって、さらなる霊力が解放される。彼女の中心から解き放たれたのは、炎を纏った麒麟。それは地面に描かれた紋様を完膚無きまでに破壊すると、天へ昇っていったのだった。
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