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「きゃああああああああ!」
朝日が昇りきった午前七時。
宰相執務室に、女性の悲鳴がこだました。
悲鳴の主は、朝の清掃係のメイドだ。
彼女は腰を抜かし、ガタガタと震えながら部屋の中を指差している。
「へ、部屋が……部屋が消えている……!?」
「消えてはいません。綺麗になっただけです」
私は給湯室から新しいお茶を運びながら、冷静に訂正した。
「あ、あなたは誰ですか!? それに、ここは魔窟と呼ばれた宰相閣下の部屋……書類の山はどこへ!?」
「ゴミ処理場です。あと、魔窟という呼び名は対外的にどうかと思いますよ」
私が淡々と答えていると、騒ぎを聞きつけた宰相補佐官たちがドタドタと駆けつけてきた。
「どうした! 何事だ!」
「曲者か!?」
血相を変えて飛び込んできた彼らは、部屋の中に足を踏み入れた瞬間、石化魔法にかかったように固まった。
「……は?」
「……え?」
「……ここ、どこ?」
彼らは一度廊下に戻り、部屋番号を確認し、もう一度部屋に入り、そして顔を見合わせた。
「おい、俺たちは異世界に転移したのか?」
「床が見えるぞ……。五年ぶりに床の模様を見た……」
「空気が……美味しい……」
呆然とする彼らの視線の先で、宰相クライヴ様が優雅にティーカップを傾けている。
その姿は、いつもの「死にかけの幽鬼」ではなく、絵画のように美しい「氷の貴公子」そのものだった。
「おはよう、諸君」
クライヴ様が爽やかに声をかける。
「今日の紅茶は格別だぞ。君たちも飲むか?」
「閣下!? そ、その輝くような笑顔は一体……!?」
「過労でついにあちらの世界へ!?」
「失礼な。私は至って健康だ。これほど目覚めの良い朝は十年ぶりかもしれん」
クライヴ様は立ち上がり、私の肩に手を置いた。
「紹介しよう。今日から私の『特別首席補佐官』として働いてもらうことになった、リーフィ・ベルンシュタイン嬢だ」
「初めまして。以後、お見知り置きを」
私がペコリと頭を下げると、補佐官たちはギョッとして目を剥いた。
「ベ、ベルンシュタイン嬢!? 昨晩、アレクセイ殿下と婚約破棄騒動を起こしたばかりの!?」
「はい、その本人です。現在はフリーランスですのでご安心ください」
「フリーランスの意味がわかりませんが……いや、しかし、なぜ彼女がここに?」
「彼女がこの部屋を片付けたのだ」
クライヴ様の一言に、全員の視線が私に突き刺さる。
「……一人で? 一晩で?」
「はい。ついでに未決裁箱の案件も八割方処理しておきました。決裁印を押すだけの状態にしてありますので、確認をお願いします」
私がデスクの上に整然と積まれた書類の塔を指差すと、補佐官の一人が震える手で一番上の書類を手に取った。
「こ、これは……難航していた運河建設の予算案! 完璧な折衷案が作成されている!」
「こっちは貿易摩擦の解消案!? 相手国の法改正まで網羅されているぞ!」
「なんだこの計算速度は……人間業じゃない……」
彼らは戦慄の表情で私を見た。
「閣下……彼女は何者ですか? 魔法使いですか? それとも錬金術師ですか?」
「いいや」
クライヴ様は真顔で断言した。
「私の『女神』だ」
「は?」
「彼女がいなければ、私は今頃書類の雪崩に埋もれて窒息死していただろう。彼女こそが、この国の行政を救う救世主なのだ」
クライヴ様、言い過ぎです。
私は心の中でツッコミを入れたが、彼は止まらない。
「リーフィ嬢。先ほどの契約の話だが」
クライヴ様が私の手を取り、跪かんばかりの勢いで迫ってきた。
「君を手放すなんて考えられない。君が欲しい」
「……はい?」
「私の側には君が必要なんだ。他の誰でもない、君でなくてはダメだ。一生、私の傍にいてくれないか?」
そのセリフだけを聞けば、まるで熱烈なプロポーズである。
補佐官たちやメイドが「きゃあああ!」と顔を覆う。
「こ、婚約破棄の翌日に、宰相閣下からの求婚!?」
「なんてドラマチックなの!」
「氷の宰相を溶かすなんて、すごい……!」
周囲が勝手に盛り上がっているが、私は冷めた頭でその言葉を翻訳していた。
(翻訳:君の事務処理能力が便利すぎるから、定年までこき使いたい)
実にブラックな誘い文句である。
だが、私にとっては好都合だ。
「条件の確認です、閣下。『一生』というのは、終身雇用契約ということでよろしいですね?」
「あ、ああ。そうだ。君が望むなら、死ぬまで離さない」
「福利厚生は?」
「王族に準ずるレベルを用意しよう。住居は我が屋敷(公爵邸)の東棟を自由に使っていい。食事は専属シェフをつける」
「残業代は?」
「青天井だ。君が働いた分だけ、国家予算から……いや、私の個人資産から支払おう」
完璧だ。
これ以上の好条件は、王都中を探しても見つからないだろう。
私はニッコリと微笑んだ。
「素晴らしいご提案です。謹んでお受けいたします」
「本当か!?」
「はい。このリーフィ、本日より閣下の『手足』となり、徹底的に業務を効率化させていただきます」
「ありがとう……!」
クライヴ様は感極まったように私の手を両手で包み込んだ。
その瞳は潤み、背景に薔薇の花が見えるほどのキラキラ具合だ。
周囲の勘違いは加速する一方である。
「す、すごい……即日プロポーズ、即日婚約成立だ……」
「お似合いすぎる……」
「これは号外が出るぞ……」
誰も「雇用契約」の話だとは微塵も思っていない。
まあ、訂正するのも時間の無駄だ。
「元婚約者」に追いかけ回されるリスクを考えれば、「宰相の婚約者」という防波堤(ダミー)があるのはむしろ好都合かもしれない。
私は計算機を弾くように思考を巡らせた。
(宰相閣下の婚約者という立場を利用すれば、面倒な夜会の誘いも断りやすいですし、アレクセイ殿下への牽制にもなります。まさにウィン・ウィン)
私はクライヴ様に微笑みかけた。
「では閣下、契約成立の証として、早速ですが……」
「なんだ? 指輪か? それともキスか?」
「いえ、こちらの『業務改善提案書』にサインをお願いします。第一弾として、補佐官たちのシフト見直しと、無駄な定例会議の廃止を提言します」
「……君は、本当にブレないな」
クライヴ様は苦笑しながらも、どこか嬉しそうにペンを走らせた。
こうして、私は「宰相の婚約者(仮)」兼「スーパー事務員」としての地位を確立した。
だが、この「勘違いプロポーズ」の噂が、光の速さで王城中に広まり、あのお花畑王子の耳に入ることまでは、計算に入れていなかった。
「……えっくし!」
私は小さくくしゃみをした。
誰かが噂をしているのだろうか。
「風邪か? すぐに医務官を呼ぼうか?」
過保護になり始めた新しい上司(ボス)を見ながら、私は「前途多難だが、退屈はしなさそうだ」と小さく笑った。
さて、まずは今日の定時退社を目指して、補佐官たちを叩き直すとしましょうか。
朝日が昇りきった午前七時。
宰相執務室に、女性の悲鳴がこだました。
悲鳴の主は、朝の清掃係のメイドだ。
彼女は腰を抜かし、ガタガタと震えながら部屋の中を指差している。
「へ、部屋が……部屋が消えている……!?」
「消えてはいません。綺麗になっただけです」
私は給湯室から新しいお茶を運びながら、冷静に訂正した。
「あ、あなたは誰ですか!? それに、ここは魔窟と呼ばれた宰相閣下の部屋……書類の山はどこへ!?」
「ゴミ処理場です。あと、魔窟という呼び名は対外的にどうかと思いますよ」
私が淡々と答えていると、騒ぎを聞きつけた宰相補佐官たちがドタドタと駆けつけてきた。
「どうした! 何事だ!」
「曲者か!?」
血相を変えて飛び込んできた彼らは、部屋の中に足を踏み入れた瞬間、石化魔法にかかったように固まった。
「……は?」
「……え?」
「……ここ、どこ?」
彼らは一度廊下に戻り、部屋番号を確認し、もう一度部屋に入り、そして顔を見合わせた。
「おい、俺たちは異世界に転移したのか?」
「床が見えるぞ……。五年ぶりに床の模様を見た……」
「空気が……美味しい……」
呆然とする彼らの視線の先で、宰相クライヴ様が優雅にティーカップを傾けている。
その姿は、いつもの「死にかけの幽鬼」ではなく、絵画のように美しい「氷の貴公子」そのものだった。
「おはよう、諸君」
クライヴ様が爽やかに声をかける。
「今日の紅茶は格別だぞ。君たちも飲むか?」
「閣下!? そ、その輝くような笑顔は一体……!?」
「過労でついにあちらの世界へ!?」
「失礼な。私は至って健康だ。これほど目覚めの良い朝は十年ぶりかもしれん」
クライヴ様は立ち上がり、私の肩に手を置いた。
「紹介しよう。今日から私の『特別首席補佐官』として働いてもらうことになった、リーフィ・ベルンシュタイン嬢だ」
「初めまして。以後、お見知り置きを」
私がペコリと頭を下げると、補佐官たちはギョッとして目を剥いた。
「ベ、ベルンシュタイン嬢!? 昨晩、アレクセイ殿下と婚約破棄騒動を起こしたばかりの!?」
「はい、その本人です。現在はフリーランスですのでご安心ください」
「フリーランスの意味がわかりませんが……いや、しかし、なぜ彼女がここに?」
「彼女がこの部屋を片付けたのだ」
クライヴ様の一言に、全員の視線が私に突き刺さる。
「……一人で? 一晩で?」
「はい。ついでに未決裁箱の案件も八割方処理しておきました。決裁印を押すだけの状態にしてありますので、確認をお願いします」
私がデスクの上に整然と積まれた書類の塔を指差すと、補佐官の一人が震える手で一番上の書類を手に取った。
「こ、これは……難航していた運河建設の予算案! 完璧な折衷案が作成されている!」
「こっちは貿易摩擦の解消案!? 相手国の法改正まで網羅されているぞ!」
「なんだこの計算速度は……人間業じゃない……」
彼らは戦慄の表情で私を見た。
「閣下……彼女は何者ですか? 魔法使いですか? それとも錬金術師ですか?」
「いいや」
クライヴ様は真顔で断言した。
「私の『女神』だ」
「は?」
「彼女がいなければ、私は今頃書類の雪崩に埋もれて窒息死していただろう。彼女こそが、この国の行政を救う救世主なのだ」
クライヴ様、言い過ぎです。
私は心の中でツッコミを入れたが、彼は止まらない。
「リーフィ嬢。先ほどの契約の話だが」
クライヴ様が私の手を取り、跪かんばかりの勢いで迫ってきた。
「君を手放すなんて考えられない。君が欲しい」
「……はい?」
「私の側には君が必要なんだ。他の誰でもない、君でなくてはダメだ。一生、私の傍にいてくれないか?」
そのセリフだけを聞けば、まるで熱烈なプロポーズである。
補佐官たちやメイドが「きゃあああ!」と顔を覆う。
「こ、婚約破棄の翌日に、宰相閣下からの求婚!?」
「なんてドラマチックなの!」
「氷の宰相を溶かすなんて、すごい……!」
周囲が勝手に盛り上がっているが、私は冷めた頭でその言葉を翻訳していた。
(翻訳:君の事務処理能力が便利すぎるから、定年までこき使いたい)
実にブラックな誘い文句である。
だが、私にとっては好都合だ。
「条件の確認です、閣下。『一生』というのは、終身雇用契約ということでよろしいですね?」
「あ、ああ。そうだ。君が望むなら、死ぬまで離さない」
「福利厚生は?」
「王族に準ずるレベルを用意しよう。住居は我が屋敷(公爵邸)の東棟を自由に使っていい。食事は専属シェフをつける」
「残業代は?」
「青天井だ。君が働いた分だけ、国家予算から……いや、私の個人資産から支払おう」
完璧だ。
これ以上の好条件は、王都中を探しても見つからないだろう。
私はニッコリと微笑んだ。
「素晴らしいご提案です。謹んでお受けいたします」
「本当か!?」
「はい。このリーフィ、本日より閣下の『手足』となり、徹底的に業務を効率化させていただきます」
「ありがとう……!」
クライヴ様は感極まったように私の手を両手で包み込んだ。
その瞳は潤み、背景に薔薇の花が見えるほどのキラキラ具合だ。
周囲の勘違いは加速する一方である。
「す、すごい……即日プロポーズ、即日婚約成立だ……」
「お似合いすぎる……」
「これは号外が出るぞ……」
誰も「雇用契約」の話だとは微塵も思っていない。
まあ、訂正するのも時間の無駄だ。
「元婚約者」に追いかけ回されるリスクを考えれば、「宰相の婚約者」という防波堤(ダミー)があるのはむしろ好都合かもしれない。
私は計算機を弾くように思考を巡らせた。
(宰相閣下の婚約者という立場を利用すれば、面倒な夜会の誘いも断りやすいですし、アレクセイ殿下への牽制にもなります。まさにウィン・ウィン)
私はクライヴ様に微笑みかけた。
「では閣下、契約成立の証として、早速ですが……」
「なんだ? 指輪か? それともキスか?」
「いえ、こちらの『業務改善提案書』にサインをお願いします。第一弾として、補佐官たちのシフト見直しと、無駄な定例会議の廃止を提言します」
「……君は、本当にブレないな」
クライヴ様は苦笑しながらも、どこか嬉しそうにペンを走らせた。
こうして、私は「宰相の婚約者(仮)」兼「スーパー事務員」としての地位を確立した。
だが、この「勘違いプロポーズ」の噂が、光の速さで王城中に広まり、あのお花畑王子の耳に入ることまでは、計算に入れていなかった。
「……えっくし!」
私は小さくくしゃみをした。
誰かが噂をしているのだろうか。
「風邪か? すぐに医務官を呼ぼうか?」
過保護になり始めた新しい上司(ボス)を見ながら、私は「前途多難だが、退屈はしなさそうだ」と小さく笑った。
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