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「……ふむ。今年の小麦の価格は昨年比で一・二倍。輸入関税の撤廃騒動を見越して、商人が買い占めに走っていますね」
王都の中央広場。
庶民の活気溢れる市場の一角で、私はメモ帳片手に野菜の価格をチェックしていた。
「リーフィ。君はデート中まで市場調査なのか?」
私の隣で、大量の荷物(私の買い物袋)を持たされたクライヴ閣下が、呆れたように苦笑している。
彼は変装のために伊達眼鏡をかけ、普段のきっちりとした燕尾服ではなく、ラフなシャツ姿だ。
それでも隠しきれない高貴なオーラに、すれ違う女性たちが振り返っていく。
「当然です、閣下。市場価格の変動は国政の鏡。……それに、キャベツが三割も値上がりしているのは、私の家計に直結する重大インシデントです」
「わかった、わかった。私が一生分のキャベツを買ってやるから、そろそろあそこのカフェで休まないか?」
「……仕方ありませんね。カフェイン補給の時間としましょう」
私たちが歩き出そうとした、その時だった。
ガシャ、ガシャ、ガシャ……!
騒がしい市場の空気を切り裂くように、金属鎧の擦れる音が響いた。
人混みが割れ、王家の紋章をつけた一団が現れる。
近衛騎士団だ。
その数、およそ二十名。完全武装である。
「……何の騒ぎでしょうか?」
私が首を傾げると、先頭にいた騎士団長が、私を見つけてビシッと指を差した。
「発見したぞ! リーフィ・ベルンシュタイン嬢だ!」
「……え?」
騎士団長が大股で近づいてくる。
「ベルンシュタイン嬢! 国王陛下の命により、直ちに王城へ同行願いたい!」
「お断りします」
私は即答した。
「私は現在、買い物という極めて重要な『私用』の最中です。それに、私には逮捕状も召喚状も出ていないはずですが?」
「問答無用! これは国家の非常事態に基づく緊急措置である! アレクセイ殿下が『リーフィがいないと息ができない』と過呼吸を起こしておられるのだ!」
「知ったことではありません。紙袋でも被せておけば治ります」
「ええい、口答えするな! 貴様の協力が必要なのだ! 力ずくでも連れて行く!」
騎士団長が合図を送ると、部下の騎士たちが私を取り囲んだ。
周囲の市民たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。
「……乱暴ですね」
私は懐のスタンガンに手を伸ばした。
護身用として携帯しているが、さすがに二十人の騎士相手では分が悪い。
「確保せよ! 傷つけぬよう、手足を押さえろ!」
騎士の一人が、私の腕に手を伸ばしてきた。
その手が、私の服に触れようとした瞬間。
パキィィィィンッ……!!
空気が、割れた。
「……っ!?」
私の腕を掴もうとした騎士が、悲鳴を上げた。
「手が……! 俺の手が……!?」
見ると、騎士の小手が真っ白に凍りついている。
それだけではない。
地面のアスファルトから鋭い氷柱(つらら)が突き出し、私たちを取り囲む騎士たちの足元を凍結させていた。
「な、なんだこれは……魔法か!?」
騎士団長が狼狽える。
「……私の婚約者に、その汚い手で触れるな」
地獄の底から響くような、低く、冷たい声。
私の隣にいたクライヴ閣下が、ゆっくりと眼鏡を外した。
その蒼い瞳は、絶対零度の怒りで燃え盛っている。
「く、クライヴ公爵……!?」
騎士団長が絶句した。
「な、なぜここに……!? いや、貴方こそ国家の重鎮! 陛下の命令をご存知のはず! この娘を城に連れ戻さねば……」
「黙れ」
ヒュオオオオオッ!
閣下の足元から猛吹雪が発生し、騎士たちを吹き飛ばした。
市場が一瞬にして極寒の雪山と化す。
「陛下の命令? それがどうした」
閣下が一歩踏み出す。
「私は言ったはずだ。『彼女は私のものだ』と。……私の宝に指一本でも触れてみろ。この騎士団ごと、永遠の氷像に変えてやる」
本気だ。
この人は、国一番の魔法使いでもあることを忘れていた。
「ひぃっ……! さ、宰相閣下、謀反を起こすおつもりか!?」
「愛する者を守るためなら、国の一つや二つ、滅ぼしても構わん」
閣下は涼しい顔で、とんでもないことを言い放った。
「そ、そんな……正気か……」
「至って正気だ。……失せろ。三秒以内に私の視界から消えなければ、次は心臓を凍らせる」
「いち」
パキパキパキッ!
騎士団長の剣が凍りつき、粉々に砕け散った。
「に」
「て、撤退だーーッ!! 逃げろーーッ!!」
騎士団長が叫び、騎士たちは凍りついた足を引きずりながら、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
ものの数十秒で、広場には静寂が戻った。
ただし、気温はマイナス五度くらいになっているが。
「……ふぅ」
閣下が大きく息を吐くと、周囲の冷気がスッと引いていった。
彼は私の方を振り向き、先ほどの鬼神のような表情から一転、心配そうな顔で私の肩を抱いた。
「リーフィ! 無事か!? 怖くなかったか!? 心拍数は? 血圧は?」
「……閣下、落ち着いてください。私は無傷です」
私は呆れつつも、内心では少しドキドキしていた。
(……国を滅ぼしても構わない、ですか。非効率極まりない発言ですが、なぜか悪い気はしませんね)
「ああ、よかった……」
閣下は私を強く抱きしめた。
「すまない。少し理性が飛んだ。……君が連れ去られそうになるのを見たら、頭の中が真っ白になって……」
「お気持ちは分かりますが、市場の野菜を凍らせたのは賠償問題ですよ」
私は周囲を見渡した。
トマトやキュウリがカチカチに凍っている。
「……全部、私が買い取る」
「領収書は『王家への請求』で切りましょう。原因は彼らですから」
「そうだな。……それにしても」
閣下は私の顔を覗き込み、真剣な眼差しで告げた。
「これで分かっただろう。王家は手段を選ばなくなっている。君を一人にするのは危険だ」
「ですね。スタンガンの出力を上げる必要がありそうです」
「違う。……私の屋敷から一歩も出るなと言いたいところだが、君はそれを嫌がるだろう」
閣下は少し考え込み、そして不敵に笑った。
「ならば、逆に攻めよう」
「攻める?」
「ああ。これ以上、彼らが君に手を出せないよう、外堀を完全に埋めてやる」
閣下の瞳に、冷徹な策士の光が宿る。
「まずは君の実家だ。借金を理由に王家につけ込まれているなら、それを解消し、我がアークライト家の庇護下に置く」
「……!」
「そして、君との結婚を既成事実化する。来月の建国記念式典……そこで、全貴族の前で盛大に発表しよう」
「建国記念式典……それはまた、大きな舞台ですね」
「嫌か?」
「いいえ。王家への最大の牽制(嫌がらせ)になります。……効果的ですね」
私はニヤリと笑った。
「では、そのプランを採用します。オペレーション名は『絶対防御(プロポーズ)』で」
「可愛い名前だな。……愛しているよ、私の最強のパートナー」
衆人環視の中、閣下は私の手を取り、甲に口づけを落とした。
周囲の市民たちから「ヒューヒュー!」と指笛が飛ぶ。
市場での買い物デートは、こうして「公開惚気(ノロケ)大会」となって幕を閉じた。
だが、この一件で、王家との対立構造は決定的なものとなった。
特にアレクセイ殿下は、騎士団の敗走を聞いて逆上し、ある「最悪のデマ」を流すことを思いつく。
それは、私と閣下の名誉を傷つけ、社会的に抹殺しようとする卑劣な罠だった。
「……寒気がしますね」
帰り道、私がくしゃみをすると、閣下がすぐに自分の上着をかけてくれた。
その温もりに包まれながら、私は来たるべき決戦に向けて、静かに闘志を燃やしていた。
王都の中央広場。
庶民の活気溢れる市場の一角で、私はメモ帳片手に野菜の価格をチェックしていた。
「リーフィ。君はデート中まで市場調査なのか?」
私の隣で、大量の荷物(私の買い物袋)を持たされたクライヴ閣下が、呆れたように苦笑している。
彼は変装のために伊達眼鏡をかけ、普段のきっちりとした燕尾服ではなく、ラフなシャツ姿だ。
それでも隠しきれない高貴なオーラに、すれ違う女性たちが振り返っていく。
「当然です、閣下。市場価格の変動は国政の鏡。……それに、キャベツが三割も値上がりしているのは、私の家計に直結する重大インシデントです」
「わかった、わかった。私が一生分のキャベツを買ってやるから、そろそろあそこのカフェで休まないか?」
「……仕方ありませんね。カフェイン補給の時間としましょう」
私たちが歩き出そうとした、その時だった。
ガシャ、ガシャ、ガシャ……!
騒がしい市場の空気を切り裂くように、金属鎧の擦れる音が響いた。
人混みが割れ、王家の紋章をつけた一団が現れる。
近衛騎士団だ。
その数、およそ二十名。完全武装である。
「……何の騒ぎでしょうか?」
私が首を傾げると、先頭にいた騎士団長が、私を見つけてビシッと指を差した。
「発見したぞ! リーフィ・ベルンシュタイン嬢だ!」
「……え?」
騎士団長が大股で近づいてくる。
「ベルンシュタイン嬢! 国王陛下の命により、直ちに王城へ同行願いたい!」
「お断りします」
私は即答した。
「私は現在、買い物という極めて重要な『私用』の最中です。それに、私には逮捕状も召喚状も出ていないはずですが?」
「問答無用! これは国家の非常事態に基づく緊急措置である! アレクセイ殿下が『リーフィがいないと息ができない』と過呼吸を起こしておられるのだ!」
「知ったことではありません。紙袋でも被せておけば治ります」
「ええい、口答えするな! 貴様の協力が必要なのだ! 力ずくでも連れて行く!」
騎士団長が合図を送ると、部下の騎士たちが私を取り囲んだ。
周囲の市民たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。
「……乱暴ですね」
私は懐のスタンガンに手を伸ばした。
護身用として携帯しているが、さすがに二十人の騎士相手では分が悪い。
「確保せよ! 傷つけぬよう、手足を押さえろ!」
騎士の一人が、私の腕に手を伸ばしてきた。
その手が、私の服に触れようとした瞬間。
パキィィィィンッ……!!
空気が、割れた。
「……っ!?」
私の腕を掴もうとした騎士が、悲鳴を上げた。
「手が……! 俺の手が……!?」
見ると、騎士の小手が真っ白に凍りついている。
それだけではない。
地面のアスファルトから鋭い氷柱(つらら)が突き出し、私たちを取り囲む騎士たちの足元を凍結させていた。
「な、なんだこれは……魔法か!?」
騎士団長が狼狽える。
「……私の婚約者に、その汚い手で触れるな」
地獄の底から響くような、低く、冷たい声。
私の隣にいたクライヴ閣下が、ゆっくりと眼鏡を外した。
その蒼い瞳は、絶対零度の怒りで燃え盛っている。
「く、クライヴ公爵……!?」
騎士団長が絶句した。
「な、なぜここに……!? いや、貴方こそ国家の重鎮! 陛下の命令をご存知のはず! この娘を城に連れ戻さねば……」
「黙れ」
ヒュオオオオオッ!
閣下の足元から猛吹雪が発生し、騎士たちを吹き飛ばした。
市場が一瞬にして極寒の雪山と化す。
「陛下の命令? それがどうした」
閣下が一歩踏み出す。
「私は言ったはずだ。『彼女は私のものだ』と。……私の宝に指一本でも触れてみろ。この騎士団ごと、永遠の氷像に変えてやる」
本気だ。
この人は、国一番の魔法使いでもあることを忘れていた。
「ひぃっ……! さ、宰相閣下、謀反を起こすおつもりか!?」
「愛する者を守るためなら、国の一つや二つ、滅ぼしても構わん」
閣下は涼しい顔で、とんでもないことを言い放った。
「そ、そんな……正気か……」
「至って正気だ。……失せろ。三秒以内に私の視界から消えなければ、次は心臓を凍らせる」
「いち」
パキパキパキッ!
騎士団長の剣が凍りつき、粉々に砕け散った。
「に」
「て、撤退だーーッ!! 逃げろーーッ!!」
騎士団長が叫び、騎士たちは凍りついた足を引きずりながら、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
ものの数十秒で、広場には静寂が戻った。
ただし、気温はマイナス五度くらいになっているが。
「……ふぅ」
閣下が大きく息を吐くと、周囲の冷気がスッと引いていった。
彼は私の方を振り向き、先ほどの鬼神のような表情から一転、心配そうな顔で私の肩を抱いた。
「リーフィ! 無事か!? 怖くなかったか!? 心拍数は? 血圧は?」
「……閣下、落ち着いてください。私は無傷です」
私は呆れつつも、内心では少しドキドキしていた。
(……国を滅ぼしても構わない、ですか。非効率極まりない発言ですが、なぜか悪い気はしませんね)
「ああ、よかった……」
閣下は私を強く抱きしめた。
「すまない。少し理性が飛んだ。……君が連れ去られそうになるのを見たら、頭の中が真っ白になって……」
「お気持ちは分かりますが、市場の野菜を凍らせたのは賠償問題ですよ」
私は周囲を見渡した。
トマトやキュウリがカチカチに凍っている。
「……全部、私が買い取る」
「領収書は『王家への請求』で切りましょう。原因は彼らですから」
「そうだな。……それにしても」
閣下は私の顔を覗き込み、真剣な眼差しで告げた。
「これで分かっただろう。王家は手段を選ばなくなっている。君を一人にするのは危険だ」
「ですね。スタンガンの出力を上げる必要がありそうです」
「違う。……私の屋敷から一歩も出るなと言いたいところだが、君はそれを嫌がるだろう」
閣下は少し考え込み、そして不敵に笑った。
「ならば、逆に攻めよう」
「攻める?」
「ああ。これ以上、彼らが君に手を出せないよう、外堀を完全に埋めてやる」
閣下の瞳に、冷徹な策士の光が宿る。
「まずは君の実家だ。借金を理由に王家につけ込まれているなら、それを解消し、我がアークライト家の庇護下に置く」
「……!」
「そして、君との結婚を既成事実化する。来月の建国記念式典……そこで、全貴族の前で盛大に発表しよう」
「建国記念式典……それはまた、大きな舞台ですね」
「嫌か?」
「いいえ。王家への最大の牽制(嫌がらせ)になります。……効果的ですね」
私はニヤリと笑った。
「では、そのプランを採用します。オペレーション名は『絶対防御(プロポーズ)』で」
「可愛い名前だな。……愛しているよ、私の最強のパートナー」
衆人環視の中、閣下は私の手を取り、甲に口づけを落とした。
周囲の市民たちから「ヒューヒュー!」と指笛が飛ぶ。
市場での買い物デートは、こうして「公開惚気(ノロケ)大会」となって幕を閉じた。
だが、この一件で、王家との対立構造は決定的なものとなった。
特にアレクセイ殿下は、騎士団の敗走を聞いて逆上し、ある「最悪のデマ」を流すことを思いつく。
それは、私と閣下の名誉を傷つけ、社会的に抹殺しようとする卑劣な罠だった。
「……寒気がしますね」
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