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交錯
12.向日葵
しおりを挟む「隼人、もう他の奴に可愛い隼人を見せるなよ?」
「え?」
「他の奴と使ったおもちゃなんか捨てろ。」
あぁ、なんだそれでさっきから捨てろって言ってるのか。
「僕、あの頃から有輝一筋だから。他の誰かとやったことないよ。」
「そうなのか?そっか。俺、本当にごめん。」
「え?なんの謝罪?」
何?なんでそんな必死に謝ってくるのか分からなかった。
「他の奴とやる時に使ったやつだから、あんな反応だったのかと。」
「僕が、1人で使ってたやつ・・・です。」
「そうか。風呂行くぞ。」
「あ、うん。ひゃっ」
急に有輝に抱き抱えられたから僕は驚いて変な声が出た。自分で使ったと白状しなければならなくなって、恥ずかしい上に、恥の上塗りをして・・・。
「隼人、ごめん俺・・・嫉妬してた。隼人を抱いた想像上の奴に。だから中に出した。隼人は俺のものだって分からせたくて。すぐに洗うから。」
「そ、そうだね。確かにちゃんと洗わないと後で辛くなるもんね。」
僕は確かに聞いた「俺のもの。」だって。
嬉しい。独占欲ですか?有輝だって可愛いよ。嫉妬したって自分で言っちゃうなんて可愛い。
「やぁ、、中の出すだけじゃないの?」
中を洗うだけのはずなのに、僕の弱いところをコリコリと刺激してきて、僕の体が跳ねた。
「隼人が可愛いから。もっと気持ちよくなってほしくて、可愛い隼人を見たかった。」
有輝にそんなこと言われたら、僕は断れない。
力が抜けて崩れそうになるから有輝にギュッてしがみついた。
「許して・・・」
「隼人、可愛い。」
有輝は僕の全身を洗ってくれた。自分でできるって言ってるのに、バスタオルを奪われて体を拭かれて、髪も乾かしてくれた。
「ありがと。」
「俺がしてやりたいんだ。」
ベッドに寝かされると、僕は有輝の胸に埋もれた。僕のオーバーサイズのTシャツでも、やっぱり有輝には小さくてピチッとして笑えたけど、それでも有輝が隣にいることが嬉しかった。
「有輝、僕のこといつから好きだったの?」
「分からん。あの日からずっと隼人のことを考えてた。ちゃんと気付いたのは大学3年の時だが、卒業式のあの時から好きだったんだと思う。」
あの時?抱いたから情が移ったんだろうか?
再会してからなのかと思ってた。そんなに前から?好きだったからそんな必死に追いかけてくれたんだ。
「ふふふ、そっか。嬉しい。」
ってちょっと待って。もしかして梓って最初から分かってた?僕たち本人が気付いてないのに?
「有輝・・・梓はもしかしたら僕たちの気持ちに初めから気づいてたのかも。」
「そうか、なるほど。それで俺たちのこと焚き付けたのか。後でお礼言っておこう。」
確かに。お礼言わなきゃだな。
だからあんなにしつこく有輝にちゃんと言えって言ってたんだな。
「有輝、もう合コンに誘わないでね。」
「そんなことするわけないだろ?俺のなのに。」
「うん。有輝も僕の?」
「ああ。もちろんだ。」
「そっか。ふふ、もう寝るね。」
「うん、おやすみ。」
「おやすみ」
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「あっ、、ゆき、ゆき、、」
「隼人、可愛いよ。俺だけにもっと見せて。」
僕たちは朝起きるとまた体を重ねた。
気持ちよくて幸せ。こんな幸せでいいのかな?
また有輝にお風呂に入れてもらって、今度はソファーで有輝に抱きしめられながら配信の映画を見てる。
画面に広がる向日葵畑に、僕はドキドキした。
右ならえで整列する向日葵たち。君は向日葵。背が高くて眩しくて、真っ直ぐで。
また僕は、君の後ろ姿しか見られなくなる日が来るんだろうか?
「有輝って背が高くて真っ直ぐで、向日葵みたいだよね。」
「ん?じゃあお前は太陽だな。俺だけの太陽。」
そう言いながら僕を軽々と抱き上げて正面から抱きしめてくれた。
そっか、自分が太陽だとは思わないけど、僕が有輝と同じ向日葵じゃなければ、もう有輝の目線の先を同じように眺めなくていいんだ。
やっと向き合えた。
(終)
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