【完結】甘えたな子犬系Ωが実は狂犬なんて聞いてない

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二章

22.勘違い

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 これはやっぱり怒ってるんだよな?
 引き摺られるように早朝の廊下を進んで政宗さんの部屋に入ると、政宗さんは部屋に鍵をかけた。
 まさか朝帰りしたくらいで半殺しにでもされるのか? しかし大事になってしまった実感はある。申し訳ない気持ちもある。

「遥希、やっぱりここで暮らすのが嫌なのか? 俺がヤクザだから、嫌になったのか?」
 政宗さんは泣きそうな顔でそんなことを言ってきた。

「え?」
「やっぱり負担が大きいよな……」
 肩を落としながら、その目にはどんどん涙が溜まっていく。
「違います。そんなこと思ってない」
「じゃあ、誰も付けずに朝まで帰ってこなかったのはなんでだ?」
 俺はちょっと時間を潰すためにネットカフェに入って、そしたら寝てしまったのだと話した。

「遥希、それで?」
「え?」
「経緯は分かった。時間を潰さなきゃいけない理由があったんだろ? 俺か?」

 俺は思わず政宗さんから目を逸らしてしまった。後ろめたいわけじゃないけど、風俗に行ったくらいで文句を言うような、そんな心の狭い男だと思われるのも嫌だと思ったからだ。

「俺か……店をタダで渡そうとしたことか? でもそれは頭金はもらったし、それでもまだ怒ってたのか? もうタダで店を渡したりしないと約束する」
「いえ、別に怒ってませんから」
「じゃあ、なんだ? 俺自身が嫌とか? 俺が甘えるのが嫌なのか?」
「違います」
 そんなことではないんだ。政宗さんを嫌う要素などどこにもない。店のことだって話をすれば理解してもらえたし、怒っているわけではない。

「じゃあ何だ? 遥希、言えよ」
 胸ぐらを掴まれたわけではないけど、やはりこういう時には兄貴の政宗さんが少し顔を出す。仕方ない、こんなことで嫉妬するような情けない俺だが番になってしまったんだ。諦めてもらおう。独占欲が強い俺も受け入れてくれ。そんな祈りも込めて俺は口を開いた。

「昨日、見たんですよ。政宗さんが風俗店から出てくるところを」
「ああ、行ったな。それで?」
 そんな軽い感じ? 「だからなんだ?」という目で俺を見てくる。やっぱり政宗さんにとってはそんなこと大したことじゃないんだ。

「相手が気絶するまで抱いたんですか? あの人が政宗さんがよく気絶するまで抱いている人ですか?」
「は?」
「別の店にも通ってるんですか? 何人いるんですか?」
「ちょっと待て、遥希、何を言ってる?」
「やっぱり俺だけでは足りず、女性を抱きたいんですか?」

 情けないことだが、スッキリしていたはずの頭の中がぐちゃぐちゃになって、昨日の美女と政宗さんの顔がぐるぐると頭の中を駆け巡る。頭がおかしくなりそうだ。
 責めたくなんかないのに、政宗さんを責めるように言葉が止まらなくなった。

「落ち着け、遥希。もしかして、ヤキモチか?」
「そうですよ。俺は独占欲が強いんです!」
「なんか嬉しい。そっか。
 遥希、落ち着いてよく聞け。風俗店に行ったのは女を買いに行ったんじゃない。けつもちとして営業の状況を確認しに行っただけだ」

 え? あの美女を抱いたわけじゃない?
 いや、でも気絶するまで抱いている疑惑は?

「いつもは相手が気絶するまで抱いてるんですよね? 過去の話ですか?」
「その気絶するまで抱くってのは何なんだ? 俺は誰も気絶するまで抱いたことなどないんだが」
「そんなわけないです。政宗さん言ってたじゃないですか。気絶させられたのは初めてで、いつもは気絶させる側だって」
「そんなこと言ったか? 気絶ねえ……」

 何だか政宗さんは渋い顔をして腕を組んでいる。これは兄貴の時の顔だな。

「引くなよ、って言っても無理か……人を気絶させたことはある。だが抱いたわけじゃなくて、喧嘩で、その、殴ったり蹴ったりで……」
 喧嘩? 喧嘩で相手を気絶させた? もしかして、全部俺の勘違い? 勝手にそう思って勝手に嫉妬したということか? 恥ずかしい。

「ごめんなさい」
 穴があったら入りたい。
 俺は小さい声で謝罪を口にすると、逃げるようにベッドに向かって頭から布団を被った。

「は~るき、俺のことそんなに好きなの? 俺、遥希以外となんてしてないよ。遥希だけだよ。だって遥希が一番気持ちいいし、ねえねえ、する? 朝だけど。ねえ、遥希しようよ~」
 政宗さんはゴソゴソと布団に潜り込んできた。しかも服を全て脱いで全裸で。

「遥希、キスしよ? 嬉しくてもう我慢できない」

 政宗さんは俺の服を勝手に脱がしていって、俺の中心でくったりしているものに手を掛けてそっと撫でた。
 それだけでゾクゾクと快感が迫り上がってきて、温かい舌でねっとりと舐められると、どんどん硬さを増していく。
 ジュルジュルと音を立て吸い上げられると、もうダメだった。
 しかし政宗さんは俺がイく前に口を離した。

「俺のこと抱きたくないの?」
「抱きたい」
「じゃあ抱いてよ」
 俺は今までで一番優しく抱いたと思う。

「はるき……やだ、そんな優しくしないで……もっときて……」
 おかしな勘違いをして、しかもみんなに心配をかけてしまった。申し訳なくて、恥ずかしくて、言葉の謝罪だけでは足りないと思った。

「政宗さんは優しいの嫌ですか?」
「優しいの好きだけど、今日はもっと激しく求めてほしい」
 いつもより政宗さんの熱が高く感じる。その熱が俺にも伝わって欲望を掻き立てられた。

「そんなこと言ったら本当に激しくしますよ?」
「おねがい……はるき……して?」
 可愛い。俺だけなんだ。俺だけの政宗さん。
 潤んだ目で俺に向かって伸ばされた手を俺の首に回すと、抱き起こして下から激しく突き上げる。
 必死にしがみつく政宗さんの甘い吐息が肩にかかって、それだけで胸がギュッと締め付けられる。

「政宗さん、俺が一番気持ちいいんですか? 俺のこと好きですか?」
「うんうん……すき、すきだよ……はるき、はるきがいちばんだよ……」

 政宗さんは俺がほしい言葉をくれる。本当に独占したくなる。誰にも渡したくない。俺だけの愛しい人。

「俺も、政宗さんが好きです。政宗さんだけが好きです」

「あっ、きもちいい、はるき……意識とびそう……」
「政宗さん、俺だけの政宗さんでいて下さい」

「ん……ああ……」

 しばらくベッドの上でイチャイチャしてから、みんなのところに行って心配かけたことを謝罪した。
 政宗さんが全部暴露したりするから、みんなから「ラブラブっすねー」なんて散々揶揄われた。
 言わなくてもいいことを……
 今夜は寝かしませんからね。

 
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