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5.救出?
しおりを挟む「来ないと思う。」
僕は言った。
「は?」
「林くんは来ないと思う。」
「毎日家まで送られてるって話だったけどな。」
「え?」
「馬鹿みたいに守ってたんじゃねえの?」
嘘。そうなの?それで毎日送ってくれてたの?
「ほれ、来るってさ。」
僕にスマホの画面を見せながら不良は満足そうに笑みを浮かべた。
『すぐに行く。苺人には手を出すな。』
画面にはそう表示されてた。
「銀狼はこんなののどこがいいんかねー?眼鏡だし、弱いし、真面目くんだし。」
「眼鏡取ったら可愛いとかじゃね?」
「これがか?ないないない。」
そう言いながら不良は僕の眼鏡を無理やり取ろうとした。
「やだ、やめて。」
林くんと約束した「俺以外には見せんなよ」って。僕は殴られた時にも抵抗しなかったのに、眼鏡を取られそうになって必死に抵抗した。
「押さえつけろ!」
僕は不良たちに地面に仰向けに押さえつけられて眼鏡を取られた。
約束・・・守れなかった。
またジワリと涙が溢れていく。
「マジか。本当に可愛いやつじゃん。」
「俺、男とか無理だけどこいつならワンチャンいける。」
「銀狼のやつ、これを隠して守ってたのか。」
「剥いとく?」
僕の服に不良の手がかかった。
嫌だ。嫌だよ・・・林くん助けて。
「苺人!!」
林くんの声だ。本当に来たんだ。
眼鏡がないからぼんやりとしか見えないけど、シルバーアッシュの髪が目印になった。
「苺人から離れろ!」
「待て待て銀狼、こっちには人質がいるんだ。分かるだろ?黙ってお前が殴られておけば大事に守ってきたこいつは返してやってもいいぞ。」
「分かった。好きにしろ。その代わり苺人には手を出すな。」
え?嘘でしょ?殴られるんだよ?痛いんだよ?
僕のためにそんなことしなくていいよ。
なんでそんなことするの?
林くんは不良に囲まれて、たぶん殴られてる。ぼんやりとしか見えないけど、ドスっとか音が聞こえて、林くんのくぐもった呻き声も聞こえる。
「ほれ眼鏡探してんだろ?」
「・・・」
僕のところに1人残った不良は僕が手探りで探してたのが眼鏡だって分かったみたいで眼鏡を渡してくれた。
でも僕は眼鏡をかけて後悔した。
林くんの口からは血が出てるし、色んなところが切れて、服も汚れて、この前の怪我だって治ってないのに。
嫌だ。やめてよ。死んじゃう。林くんが、僕の大切な人が死んじゃう。
「やめてー!!」
僕は不良の手を振り解いて林くんのところに駆けた。その瞬間に林くんは不良を全員返り討ちにして、僕が彼のところに辿り着くまでに囲んでた全員が倒れてた。
僕は林くんに体当たりするみたいに胸に飛び込んで号泣した。
「やだ、やだ、もう喧嘩しないで、お願い。」
「よしよし、怖かったな。もう大丈夫だから。」
林くんは僕のことを軽々と抱っこすると、僕の鞄やスマホを回収して、僕の側にいた不良に話しかけた。
「お前どうすんの?俺とやんの?」
「やめておく。」
「次こいつに近付いたら、こんなんじゃ済まねえからな。」
「分かった。言っておく。」
僕は林くんに抱っこされたままどこかへ連れていかれた。
「どこ行くの?」
「俺んち」
「そっか」
家に着くと、林くんはタオルと着替えを用意してくれて風呂に入れと言った。
「髪、砂だらけだし、顔も。その間に洗濯するから。」
「うん。」
初めて来た誰かの家でいきなりお風呂に入ることになるなんて思わなかった。
確かにこのまま家に帰ったら母さんに何があったのか問い詰められそう。
髪を洗って、口も洗った。もう血は止まってるけど、やっぱり切れたところはちょっと痛い。
肘も擦れてた。石鹸が沁みて初めて傷に気付いた。
これって林くんの服かな?ハーフパンツは長いけどいいとして、Tシャツはブカブカだ。
林くんが普段着てたやつなのかと思うと、急に恥ずかしくなってドキドキした。
「苺人、まだ髪濡れてる。こっちこい。」
「うん。」
髪は林くんが乾かしてくれた。そして、部屋に僕を置いて林くんもお風呂に行った。
お菓子とジュースも用意してくれてる。
ここが林くんの部屋なんだ。新品みたいに綺麗な教科書が机の横に積んであって、やっぱり勉強はしてないみたいだった。そしてダンベルはあった。やっぱり鍛えてるんだ。
この前の答え合わせみたいに、部屋を眺めていると、僕の好きな今日買った漫画が本棚に置いてあった。ベッドのヘッドボードのところには昨日発売された最新刊もある。
林くん、僕と同じ漫画が好きなんだ。ちょっと嬉しい。ゲームの攻略本も置いてあって、僕がやってたゲームもあった。知らないゲームや漫画もあったけど、共通点が見つかったことが嬉しかった。
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