4 / 6
4.囚われの僕
しおりを挟む「行ってきます」
楽しみ。昨日の僕とは違って、今日の僕の頭の中にはこれから買う漫画のことしか無かった。
描き下ろしSSがあるって聞いてるから、それを見るのも楽しみだし、とりあえず買って家に帰ったら1巻から読み直す。
そのお供として、ジュースとかお菓子やパンも買って帰ろう。やっぱコーラとポテチは必須だよね。何味のポテチにしようかな。
そんなことを考えて浮かれながら駅前の本屋に急いだ。
あった。まあ人気の漫画だし発売日翌日でもちゃんと在庫はあってたくさん積んであった。新刊のポップも大きくて、横には1巻から全部並べられてた。
僕は全部持ってるから最新刊の12巻だけでいい。シュリンクのかかった漫画を一冊手に取ってレジに持っていく。
お金を払えばもうこれは僕のものになる。
鞄にしまうと、本屋を出て、読書のお供を買いに行く。
すると僕は休みの日なのに学ランを来た不良に行くてを塞がれた。
その人を避けて進もうとするのに、その人は僕が避けた方に動いた。
「あ、すみません。邪魔をして。」
咄嗟に謝って逆側から通り抜けようとしたのに、今度はその人がそっちにきた。
「ねえ、ちょっと付き合って。」
「え?」
知らない人だし、不良怖い。
僕が固まってると、その人は僕の腕を掴んで引きずっていった。逃げたくてたまらないのに、怖くて逃げられなくて、林くんなんて全然怖くない不良なんだって初めて知った。
本物の不良はこんなに怖いんだ・・・
本当にいつ殺されるかと思うくらい怖い。足も手も震える。さっき間違えてこの人の進行方向を塞いだだけでこんなことになるなんて。
「本当にこいつか?」
「たぶん。」
「震えてんぞ。しかも眼鏡で冴えねえ奴。」
裏道に連れて行かれてボコられるのかと思ったら、まさかの仲間のところに連れて行かれた。いかにも不良が溜まり場にしてそうな倉庫みたいなところ。こんな大人数でボコられたら本当に死んじゃう。
斜めがけにした鞄のベルト部分を両手でギュッと握って震えることしかできなかった。
「とりあえず1発か2発くらい入れとく?」
「そうだな。」
それって、僕に1発か2発パンチかキックをするってことだよね?怖い・・・僕はギュッと目を閉じた。
林くん・・・僕には分からないよ。喧嘩をする理由が。だってこんなに痛い。地面にズザーって倒れて、地面は冷たいし、口の中が切れて血の味がした。眼鏡にヒビも入った。
涙が出る。なんでこんなこと。憂さ晴らしなの?
鞄を取られて、ああお金か。確かに不良はカツアゲとかするよね。って思った。わざわざ無抵抗の僕を殴らなくても、財布に入ってるお金でいいなら全部あげたのに。
殴られて痛いなら、そっちの方がまだいい。
「あったあった。」
でも、不良が僕の鞄を探って手に取ったのは財布じゃなくて僕のスマホだった。
「こっち向け」
倒れたままの僕の顎を掴んで無理やり顔を上げさせられると、スマホのロックは解除された。何をしようとしてるの?
お金ならあげるから、助けて・・・
「はいこっち向いてねー」
僕はまた顔を無理やり上げられると、ピースする不良とのツーショット写真を撮られた。
意味が分からない。僕で遊んでるんだろうか?痛めつけて遊んで、まさかこいつらが飽きるまで続くの?
怖い。ポロポロと涙が落ちていく。
「あーあ、可哀想に真面目くん泣いてるじゃん。」
「殴られて受け身も取れねーんだから、殴られ慣れてねーってことだな。」
「恨むなら銀狼を恨めよ。」
その言葉でやっと僕はなぜこんなところで殴られることになったのかを知った。
この不良は林くんに恨みがあるんだ。それで林くんと仲良くしてた僕を攫って林くんを誘き出すってこと?
行く手を阻んだからじゃないんだ・・・
林くん、僕のこと守るって言ったじゃん。僕、この不良たちに殴られたよ。腹が立った。
だって僕のせいじゃないのに、なんで僕が痛い目に遭わなきゃならないのかって。
守るって言ったのに守ってくるなかった林くんにも腹が立つし、関係ない僕を巻き込んだこの不良たちにも腹が立つ。
写真撮ったのも林くんを誘き出すためだったんだ。馬鹿みたい。そんなの送っても林くんが来る保証なんてないのに。
僕だったら行かない。
応援ありがとうございます!
21
お気に入りに追加
42
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる