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13.苦手な空気
なぜこうも暑い時期に夜会などやるのか。夜は涼しいとはいっても、正装は暑いし、人が集まればそれだけで暑い。
フィリップ様と共に現れた僕に、「あれは誰だ?」という視線が突き刺さる。
ベルガー辺境伯は帝国側の守りを固める重要地点で、街も結構栄えていた。
フィリップ様は当主となってまだ日が浅いと聞いているし、狙っていた令嬢も多かったんじゃないだろうか?
僕のような孕み腹の子息も。
僕がそっと離れていくと、「親戚でも連れてきたんだろう」と結論付けて、興味を失ったようだった。
先日、両親には会ったけど、兄さんには会っていない。兄さんを探してウロウロしていると、やっと見つけた。
「テオ、父上たちから聞いていたが、元気そうでよかった」
「兄さんも元気そうですね」
軽く近況などを話していると、知らない令嬢が僕にぶつかってきた。
「あら、どなたか知りませんが、リシャール様を独り占めなさらないでもらえます? ひっ!」
兄さん目当ての人か……と思ってその令嬢の方を向いたら、小さく悲鳴をあげて逃げるように立ち去った。
あぁ……僕の顔が怖かったんだろう。なんだか申し訳ないことをした。でも、兄さんと話をしたいなら、僕にぶつかる必要はないんじゃない?
「テオ、大丈夫か? あいつわざとぶつかってきたろ?」
「大丈夫です。たまに剣を振るっているので、ちょっと体力がつきました」
「テオは剣が苦手だろ? 無理やり戦いなどさせられているのか?」
「そんなことないです。騎士の人はいつも相手してほしいって言ってくるんですが、フィリップ様は無理に相手しなくていいって言ってくれます。だからたまにです」
相手と言っても、相手の剣を躱すコツを教えているだけなんだけど。
「そうか。それならいいんだ」
「兄さんもそろそろ結婚するんですか?」
「そうだな。見合いは何度かしたんだが、あまり乗り気になれなくてな。うちには父上がいるから、多少の殺気には耐えられる者でないと厳しい。
先程のような傲慢そうな令嬢も嫌だしな」
なるほど。僕とは違う悩みがあるんだな。美しく頭もいい兄さんなら、選び放題だと思ったけど、その門戸は狭いらしい。
さっきはフィリップ様の隣の奴は誰なんだという目線に怖気付いて逃げてしまったが、今度は兄さんの隣の奴は誰だという嫌な視線を感じる。
近寄ってこないのは、僕の顔のせいだろうか?
「テオちゃんの正装は久しぶりね」
「母上! 母上はいつも美しいですね」
母上が声をかけてきた。僕の母親なんだからそれなりに歳をとっているはずなのに、体型もしっかり維持されていて、相変わらず綺麗だ。ドレスを着ると美しさが際立つ。
「そういえばそうだな。テオは夜会にはほとんど出なかったからな。どこの輩が狙っているか分からないんだから気をつけろよ」
「大丈夫ですよ」
心配しなくても、僕に寄ってくるのは家族かフィリップ様くらいですから。
しかし、僕と過去に見合いをしたことのある人たちから、僕が孕み腹だって情報が広まったみたいだ。
「あいつが孕み腹?」
「孕み腹でも俺は無理だな」
「私もあれは無理だ」
「リシャール狙いか?」
無理だとか、怖いとか、ありえないなんて、もう何度も言われてきたのに、最近はフィリップ様の隣で平穏に過ごしていたから、耐性が失われていたらしい。
僕はあなたたちに何かしましたか? 聞こえるようにそんなこと言わなくてもいいのに……
フィリップ様は、好きなものは好きと言えばいいと言ったけど、これ以上ここにいたら兄さんにまで迷惑をかけてしまうかもしれない。母上と兄さんが話しているから、僕は離脱してそっと一歩ずつ後退していった。
やっぱり夜会は苦手だ。僕になんて構わないで他の素敵な人を探せばいいのに。
みんな同じような笑顔を貼り付けて、それなのに全然楽しそうじゃないのは何故だろう?
帰りたいな。勝手に帰ったりできないから、フィリップ様が帰ると言うまでは気配を消して壁の花ってやつになっておこう。
ダンスの曲が始まって真ん中に男女が集まると、ヒラヒラと舞うドレスが花みたいで綺麗だと思った。僕もダンスの練習はしたことがあるけど、夜会で踊ったりしたことはない。フィリップ様は誰かと踊るんだろうか?
人が多すぎてどこにいるのかも分からないけど、楽しんでいるといいな。
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