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ヴィー

回想5

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手紙を出してから返事が来るまでは、本当に緊張した日々を過ごしていた。

断られる可能性もあるだろうし、他国でしかもアルマ様は私のことなど覚えていないだろう。
何度か交流を重ねて、それから婚約期間を経て結婚。まだいくつか乗り越えなければならない壁がある。
それを一つずつクリアして、ようやく結婚できるんだ。
まだ始まったばかり。これからは私がどれだけアルマ様に好かれることができるかの勝負だ。


「先方を怒らせるようなことがあれば、我が家だけでなくコスタ王国にも迷惑をかけることになる。それを肝に銘じておけよ。」
「はい。」

アルマ様はそうそう激昂するような人には見えないから大丈夫だと思うが、私はアルマ様のことを全て知っているわけではないから、気をつけるようにしよう。




そうしてしばらく手紙の返事を待っていると、思いがけない内容の返事が届いた。
すぐにでも嫁に迎えたい。本当に嫁に来てくれるのなら全て揃えて待っているから身一つで来てくれと。

「お前、先方に気に入られるようなことをしていたのか?即決で嫁入りとは恐れ入った。
行ってこい。何も持たずに行かせるわけにはいかないから馬と金と、宝飾品もいくつか持たせよう。」
「父上、ありがとうございます。」
「我が国の陛下にも手紙を書いておこう。お前が隣国のフォンテ王国のメテオリーテ辺境伯へ嫁入りすることになったと。」
「はい。」


顔合わせなども無くていいんだろうか?
それとも、実はアルマ様は私のことを覚えていて・・・?いや、名乗った記憶はない。
ハンターとしてフォンテ王国に居たが、本名は使わず家名の一部を取ってクオと名乗っていたから私のことを知っているわけではないと思うんだが。
分からない。

この国まで来て噂を集めて判断したにしては早すぎる。私は疑問を持ちながらもすぐに支度を整えて家を出た。その時にハンター仲間にアルマ様の嫁になることになったと手紙を書いた。


一旦フォンテ王国の王都に行って、そこから辺境伯領を目指した。
もしかしてアルマ様は来るもの拒まずで、全ての相手を受け入れているのかもしれないと思い、王都の酒場で情報を探ってみると、意外な情報を得た。
アルマ様の嫁は決まっていないと。国内の婚約者がいない令嬢に手当たり次第に婚約の打診をしたが、全滅したらしいと。
は?そんなわけないだろう。あの凛々しく気高いアルマ様だぞ?

そして思い当たった。もう嫁取りに疲れて、嫁になってくれるなら誰でもいいと、即決で私を迎えることを決めたのだと。
それはそれで、気持ちが騒ついた。

国内の令嬢に打診した・・・、国内の令息にも打診したという話はない。
私の名前は女性っぽい名前だから、女だと思われたのかもしれない。
大丈夫だろうか?男だと知ったら追い出されたりするんだろうか?
そうなったら、父上は陛下に手紙を書くと言っていたし、受け入れてもらえなくて帰されたら、私はどうなってしまうんだろう?


アルマ様に会いたいという気持ちもあるが、追い返されるかもしれないという不安な気持ちの方が大きくなり、緊張しながら辺境伯領へ向かった。

アルマ様からいただいた手紙を携えて領主邸に入ると、応接室に案内された。
緊張しながら待っていると、ようやくアルマ様が訪れて、唖然とした表情をして私に誰かと訪ねた。
やはり女性が来ると思っていたんだろう・・・。

「俺と結婚したいと聞いているが、間違いないか?」
「はい。」

色々話したいと思ったが、緊張で何も話せなかった。

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