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新しい関係(ジョル視点)1
しおりを挟むディオを抱いて、そして抱きしめて眠った翌朝、モゾモゾと俺の腕の中で動くディオの動きで目が覚めた。
こんなに満たされた気持ちになったことなど有っただろうか。こんなにぐっすり眠れた日はあっただろうか?
すっかりディオに絆されてしまった俺はディオがモゾモゾと何をしているのか観察していた。
抜け出すでもなく俺の腕に触れ、胸筋に触れ、俺の胸筋の谷間に顔を埋めた。
ディオも遊び人だと言っていたからな、寝ぼけて女の胸と勘違いしたか?
それでもいい。俺の胸に縋り付いてくるなんて本当に可愛いな。
声をかけようと思ったが、あまりにディオが可愛くて声をかけるタイミングを失ってしまった。
されるがままにじっとしていると、ようやく目が覚めたのか伸びをして俺の腕から抜け出した。
服に浄化をかけて着ると、俺の服も綺麗にして畳んでくれた。
そして剣をジッと眺めていた。
しばらくすると泣いたのか、自分の服の袖で目を擦っていた。
剣のことを思い出したんだろうか?それとも別のことか。
ディオを苦しめる何かがあるのなら、俺がその何かからディオを守りたいと思った。
何か引っ掛かる。
俺は何か、大切な何かを忘れている。
なぜか、ディオを見ていると何か分からない思いが湧いてくる。それは苛々や苦しみや悲しみではなく、何か分からないが心地いいものであることだけは分かった。
恋心か?
夜に思った。ディオは俺が失った記憶に関係しており、記憶を取り戻す鍵になるのではないかと。
俺の知らない『ジョルジーノ』という人物の謎が解けるのではないかと思い、俺は思い切ってディオに一緒に冒険者をやらないかと誘った。
一度寝た相手とは二度としないと言っていたが、別に体を求めるわけじゃない。
同じBランクなのだし、お互いに足を引っ張ることも無いだろう。
断られるかもしれないと思ったが、ディオは即答で了承してくれた。
俺のことが嫌いではないんだな。今はそれでいい。
それに、何だか出会った時より表情が柔らかい。思わず見惚れてしまうほど、優しく綺麗な笑顔で俺に微笑んでくれるから、思わず期待してしまう。
魔物討伐に向かうと、また不思議なことが起きた。
「ディオ、近づいたら教えてくれ。」
「え?」
俺はなぜかディオが索敵を使えることを知っていた。
しかも、今までもディオに頼んでいたようなスムーズな流れで口をついて出ていた。
やはり俺とディオは知り合いだと思った。
しかし、記憶が閉ざされている理由も、どうしたら思い出せるのかも分からない。
戦闘に入ると、ディオは俺が欲しいところで援護してくれるし、回復や強化までかけてくれて、信じられないほど戦いやすかった。
いつもの半分くらいしか力を出さずに倒せたことにも驚いたが、ディオは俺の癖を熟知しているのではないかと思った。
何者だ?
「ディオ、やっぱり俺たち昔会ったことがあると思う。一緒に戦ったこともあると思う。」
「そうかもしれないね。」
そう言ってみたが、ディオからはどちらとも取れないような何ともあっさりとした返答が返ってきた。
そうか、ディオも記憶を失っているんだもんな。そうかもしれないと思ったとしても確証がないことは言えないか。
可愛いし有能だし、俺がディオを手放す理由はない。
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