僕の過保護な旦那様

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二章

407.お疲れのラルフ様

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「おはよう」
 早朝訓練をしているとジェラルド殿下が訪ねてきた。単身で、今日は全く身分を隠す素振りもない。
 気軽に訪ねてくるのやめてよ。

 ロランドとルキオとリーノ、僕と使用人のみんなは「おはようございます」と頭を下げたけど、ラルフ様と部下の皆さんは無視だ。
 手を止めることなく訓練を続けている。
 シルは一瞬迷ったけど、ラルフ様を見て、そのまま訓練を続けた。パンは初めから興味なしだ。

 ピグロとサロモンは地下室にいる。二人とも今は自ら入っていて鍵はかけていない。
 ピグロはリーノに怒られて反省するため、サロモンはジェラルド殿下とのことを一人で考えたいのかもしれない。

「ねえママ、サロモンは?」
 殿下にママなんて呼ばれるのはサロモンにママと呼ばれるより違和感がある。サロモンの真似なんだろうけど、うちの敷地の外ではやめてくださいね。

「地下牢にいます」
「ふふっ、サロモンまた悪いことしたの?」
 殿下は楽しそうに笑っているけど、こんな問題児を本当に王宮に入れるつもりですか?

「地下牢には自ら入っています。鍵はかかっていないので呼べば来ると思いますよ。呼んできましょうか?」
「うん、ママお願い」

 サロモンを呼んでくると、ピグロも一緒に出てきた。ピグロは馬番の仕事があるから一緒に出てきたんだろう。庭には行かず厩舎へ向かった。
 サロモンと殿下は庭の隅で二人で何かを話している。今後のことか、デートの相談か、それ以外かは分からない。

 訓練が終わると、殿下も食堂に一緒についてきた。まさかうちで朝食をとる気ですか?
 王族が満足できるような豪華な食事は出せませんよ。

「いいね、寮って感じ。こういうの好き」
 殿下が嬉しそうに眺めている横で、サロモンが殿下のために慣れない手つきで料理を取り分けている。
 ルーベンの真似だ。チラチラとルーベンの動きを確認しながら真似しているのが面白い。
 やってみたいって言ってたもんね。
 その相手が殿下でなければ微笑ましいと思えるんだけど、僕は複雑だ。
 ラルフ様も難しい顔をしている。

 みんなが出勤する時に殿下も出勤してくれたのはよかった。「サロモンがいるからここにいる」なんて言い出したらどうしようかと、僕は一人で緊張していたんだ。

 今日はリーノがお休みで、ピグロにサロモンを近づかせないよう牽制している。
 今まではサロモンの恋人を探すという名目や、反省のための雪かきという理由があって一緒にいたけど、もう恋人は見つかったんだからピグロとサロモンが一緒にいる理由はない。
 ピグロは大人しくリーノに従っている。リーノを怒らせてまでサロモンに付き合う必要はないと思ったんだろう。

「ママ、俺は城に通うことになった」
「え? 通う?」
「ジェリーが先生を用意してくれた」
「そうですか。うちから馬車を出しますか?」
 勉強のために通うんですね。徒歩で通うなんてできないから、馬車を貸してくれないかという相談だろうか?

「いや、迎えが来る」
「そうですか。服装は指定されているんですか? 門前払いされるといけませんので買いに行きますか?」
「服装……そうか……」
 ラルフ様の普段着ですら、動きにくいだのその辺で寝れないだの文句を言っていたのに、窮屈な正装を着て一日過ごすなんてサロモンにできるんだろうか?

「初日は綺麗な普段着で行って、どのような服装が必要になるか、用意してもらえるのか聞いてきてください。正装が必要ならすぐには用意できません」
「分かった」
「それでいつからですか?」
「明日だ」
 すぐじゃないか。準備する暇もない。

 王宮ではどういった話になっているんだろう? 一通りのマナーや教養を身につけたら王宮に住まわせてもいいとか?
 王宮で雇った先生って凄そうだ。厳しい先生方にサロモンは耐えられるだろうか?

 サロモンと明日のことを話しているところにフェリーチェ様がやってきた。
 珍しく顰めっ面だ。きっとサロモンのことだろう。
 そして僕たちの前まで来ると、はぁ~っと大きなため息をついた。
「マティアス様に思い込みはダメだと教えてもらったのに、私の頭は本当に凝り固まっていたみたいです」
「そんなことないですよ。フェリーチェ様はいつでもよくやってます」
 それと、僕は思い込みはダメだと言ったことはありませんよ。日々思ってはいますけどね。

「まさかサロモンがね……」
 フェリーチェ様はサロモンの周りをぐるぐる回って、頭の先からつま先までジロジロと観察している。
 王子様が傭兵と恋に落ちるなんて思いませんよね。僕も今でも信じられません。しかもサロモンは明日から王宮に通うんですよ? 城壁を登って捕まった人が王宮に通うとか信じられます?

「恋人を追ってきたであろうことは予想していたけど、もっと突っ込んで聞いておくべきだった。せめて名前くらいは……」
「僕もそう思います」
「俺の恋人はジェリーだ」
 サロモンは堂々と胸を張って言ったけど、今更言われてもね……

「フェリーチェ様、バターサンドクッキーを食べながら、リラックスできるハーブティでもいかがですか?」
「うん。ぜひいただきたい」
「サロモンもどう?」
「じゃあ俺も。ピグロを誘ってくる!」
 僕は引き止めようとしたけど、その手は空を切った。リーノが顔を引き攣らせそうだ。お茶とおやつだけだから許してね。その後は僕とフェリーチェ様がサロモンを引き取ります。
 明日からはサロモンは王宮だし、リーノも少しは安心かな?

 ラルフ様が帰ってくると、サロモンが王宮に通うことになったことを伝えた。
「あいつが大人しく勉強などするとは思えん」
「僕もそう思います。僕たちは問題を起こさないよう祈ることくらいしかできませんね」
「そうだな」
「ルムのお酒を飲みますか?」
「飲む」

 ラルフ様の膝の上に座っていると、隣に座っているよりもラルフ様の気持ちがよく分かる。腕や肩に力が入っていることに気づいた僕は、ラベンダーのアロマキャンドルを焚いて、ルムのお酒を出した。
 ルムのいい香りが鼻腔を通り抜けていく。バターサンドクッキーにも使われているお酒だけど、お酒だけで飲むのも好きだ。
 ラルフ様は僕が少しだけ入れたお酒を一気に煽った。やっぱりかなり疲れているんだ。原因はサロモンとジェラルド殿下だろう。僕が解決してあげることはできないけど、癒してあげるくらいはしたい。

「ラルフ様、そこに寝転んでください」
「分かった」
「動いちゃダメですよ」
「何をするんだ?」
「内緒です」
 僕はラルフ様をベッドに横たえて、服を脱がせていった。一瞬で脱がされて裸ってのも悪くないけど、ゆっくり脱がせていくことにもちゃんと意味はあって楽しいんだ。
 少しずつ露わになっていくラルフ様の肌、一つボタンを外す度、シャツから腕を抜く瞬間、気持ちがどんどん昂っていく。

 ほら、ラルフ様も焦らされて気持ちがどんどん昂ってきたでしょう?
 まだ肌に触れていなくても、ちゃんと反応しているのがその証拠。

「マティアス、キスしたい」
「いいですよ。キスしてあげます」
 激しく燃え上がる炎もいいけど、こうしてゆっくりと高みに上り詰めていくのもいい。


 
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