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二章
116.ラルフ様の部屋
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迷宮のある街ラビリント!
ここに赴任中の騎士たちは寮に住むか、家族を呼んでいる人は賃貸の家を借りている人もいる。
ラルフ様は寮に住んでいて、お部屋を見せてもらった。
そこには手紙に書いてあったように、僕たちが送った手紙が全て壁に貼ってあった。シルが書いた絵が描かれた手紙だけでなく、僕が書いた手紙まで。
なんか恥ずかしいから飾るのはやめてほしい。
僕はラルフ様からもらった手紙は全て、寝室に置いてある鍵付きの宝石箱に入れている。
あの箱がもう入りきらないくらい、ラルフ様の手紙でいっぱいになったらいいな。なんて思いつつ、たくさん手紙が届くってことはラルフ様と離れ離れってことだから、もう手紙が増えないといいな。と真逆の思いも持っている。
この寮は部屋は一人用で、食事は食堂でとるし、お風呂やトイレは共同だから、ベッドと書類を書くための机と椅子、小さなクローゼットとキャビネットがあるだけだった。
机の上には僕があげたお守りが置いてあって、その隣には書類が積み重なっていた。
そしてそこにシルからもらった黒いポポママを飾った。この部屋でそこだけ異質ですね……
それで僕たちはここに泊まれるわけじゃないと思うけど、なぜここに連れてきたんだろう?
「ラルフ様、僕たちはここに泊まれませんよね?」
「そうだな。家族なら昼間の滞在は許可されているが、泊まることは想定されていない」
「じゃあ何しにここに来たんですか?」
「マティアスが訪れたという事実があれば、マティアスが帰っても一人で耐えられる」
そんなこと考えてたんだ。
僕は王都の家にいるから、ラルフ様の持ち物が色々あってラルフ様を感じられるけど、ラルフ様はここに一人で寂しかったんだ。半年は長いよね……
手、繋いでいるだけじゃ足りない。ラルフ様に愛されたい。ラルフ様も同じ気持ちだといいんだけど……
その後、ルーベンが合流して僕たちは四人でラビリントの街を観光することになった。
リーブとリズとパンたち馬は、グラートが宿に案内してくれている。
グラートはやっぱり僕たち男だけより、リズがいるからそっちがいいと言ったんだろうか?
リズは強いからそう簡単にグラートがどうにかできないけどね。
僕とシルは街に向かう時、鼻と口を覆うようにハンカチを巻きつけられた。
「ラルフ様、これは何ですか?」
「街中は砂埃がすごいから、喉を痛めるかもしれない」
なるほど? 砂埃がすごいと聞いてはいたけど、こんなことをするほどなのか。
「ラルは? しないの?」
「俺は強いからいいんだ」
「じゃあぼくもつよくなったらしない」
「いいぞ。強くなったらな」
強くなったらか……
僕には一生訪れないだろう。しかしこのハンカチは悪くない。ラルフ様の蜂蜜攻撃から、また顔の輪郭が丸くなってしまった悲しい僕の頬を、いい感じで隠してくれる。
よし! 今日は街をたくさん歩くぞ。
「マティアス、あれなんかどうだ? 人気があると聞いた」
ラルフ様が指差した先には、クリーム入りドーナツの看板があった。僕が最も食べてはいけないものだ。
「ラル、ママはおかしたべたらだめなの。びょうきなの。はれるの」
「は? マティアス、病気なのか?」
「病気じゃないけど、病気みたいなものです」
ハリオとラルフ様のせいでね。シルに腫れると言われるのは地味に辛い。
「すぐに宿に戻ろう」
「たくさん歩かないといけないので、まだ戻りません」
ラルフ様は不思議な顔をしていたけど、僕の方をじっくり観察しながら歩き始めた。
やだ、そんなにじっくり見ないで。まだ気付かないで……
脱いだらバレるけど、もうバレてるかもしれないけど、明るいところでジッと見たりしないで。
ここに来るまでにもう少しシャープな顎になっているはずだったんだ。
ミーナに毎晩のように脂肪を揉み出すようにマッサージしてもらって、お菓子は食べてない。たまにシルが作った塩味のクラッカーはいただいたけど、それだけだ。
ちゃんと庭のお散歩を日課にして、毎日櫓にも登った。たまにタルクと一緒に訓練もした。それなのに……
毎日のマッサージで、求めてもいないのに柔らかい質感になった気はする。そうじゃない。僕が求めているのは、質感ではなく余分な部分を削り取ることだ。
ふぅ……
「マティアス、やはり体が辛いのか? 観光を楽しみにしていたのは分かっている。俺が背負うか?」
悲観してしまい、思わずため息が出ると、ラルフ様に心配された。
「僕は自分の足で歩かなければいけないんです」
「分かった」
とても心配されてしまったけど、別に病気ってわけじゃないんだ。病気じゃないけど言いたくない。
シルにも心配の目で見られている。もう後には引けない。頑張るしかない。早くシャープな輪郭に戻りますように……
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