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二章
132.駄々っ子?(※)
しおりを挟む家に着いて、向かった先は部屋のソファだった。
「マティアスはやっぱり一人にしておけない」
「ごめんなさい」
これは僕の怠慢が招いた結果だから、素直に謝ろうと思った。視線を落とすと、指に巻かれた包帯がなんとも大袈裟で痛々しく見える。
「俺がいないと、男を勝手に家にあげ、男を泊め、体もボロボロにする」
「その言い方はひどいです。手荒れがひどくなったのは僕の怠慢が原因かもしれませんが、男を連れ込んだなんて言われるのは心外です」
やっぱりセルヴァ伯爵のこともクロッシー隊長のことも、まだ怒ってたんだ……
ラルフ様がいない時にってのが拙かったのかもしれない。これからはラルフ様がいない時には誰が来てもお断りすることにしよう。
ラルフ様に疑われるくらいなら、何もしない方がいい。
「すまない。分かっているんだ。マティアスが悪いわけではない。俺はマティアスの夫で独り占めしていいはずなのに、一緒にいられなかった。俺を差し置いて他の男がマティアスとの時間を過ごすなど……」
それって嫉妬っていうより、「あいつだけ狡い」って駄々っ子の発想? ラルフ様が可愛いくて胸がキュッとなった。
「ラルフ様、独り占めしてください。僕はお休みをいただいたから、少しの間ならラビリントに同行できますよ」
「独り占めはするが、ラビリントに同行する必要はない。王都に戻る交渉をしてきた。もうマティアスを一人にできない」
僕って信用なさすぎじゃない? でも独り占めはするんだ。その「独り占めはする」ってサラッと断言するところ可愛いです。
それにしてもいつの間にそんな交渉をしたのか。きっと僕が送ったセルヴァ伯爵が来たという手紙が届いてすぐだろう。
「ずっとそばにいてくれるなら嬉しいです。僕を独り占めしていいのはラルフ様だけですから。
ねえ、独り占めして? 続きしないの?」
ラルフ様の目を見つめて言うと、ラルフ様の目が温度を上げてメラメラと燃え上がった。
「いいのか? 指、痛いだろ?」
「大丈夫です。僕は指使わないから」
「そうだな」
いつもはサッと攫っていってすぐに裸にされるのに、なぜか僕を横抱きにしてゆっくり歩いてベッドに向かった。そして、ゆっくり服を脱がされていく。
何これ、ゆっくり脱がされるといつもより恥ずかしいんだけど……
「どうした? 顔が赤いぞ」
「うん。恥ずかしいだけです」
またお預けなんて言わないで。本当に恥ずかしいだけなんだから。
「なぜだ? マティアスの体は全部見たことがあるぞ」
「そうだけど、そんな恥ずかしいこと言わないでください」
「恥ずかしくないだろ。いつもと同じでマティアスは可愛いくて綺麗だ」
恥ずかしいよ。明るいし。ラルフ様みたいに引き締まって逞しい体じゃないのが恥ずかしい。きっといつ脱いでも完璧な肉体を維持しているラルフ様には分からないんだ。
「いっぱいキスしてください」
「分かった」
ラルフ様の「分かった」は本物だった。口にもいっぱいキスしてくれたんだけど、額にも頬にも耳にも顎にも、首から下に下りていって、肩や胸やお腹だけでなく、手のひらや手の甲、足の指にまでキスしてくれた。これもすごく恥ずかしいしちょっと擽ったかった。
「ん……」
「大丈夫か?」
「うん、気持ちいいです」
「そうか」
知ってるくせに。僕が気持ちいいところ全部知ってるくせに、そんな不安そうな目で確認しないでよ。
僕は大怪我をして体が動かせないわけじゃない。手荒れがちょっと酷くなっただけだ。そこ分かってるよね?
「ねえ、きて……」
「もういいのか?」
丁寧に開かれていくのは嫌じゃないけど、今は早く一つになりたい。ラルフ様が欲しくてお腹の中がグズグズ疼いてる。
オイルが足されて、ラルフ様がゆっくりと僕の中に入ってくる。
「あ、んん……」
「マティアス、愛してる。俺だけのものでいてくれ」
「うん。ラルフ様だけのものです。僕も愛しています」
僕は体は平気なのに、ラルフ様は僕の体を労るようにゆっくり動いてくれた。
僕がキスをいっぱいしてって言ったから、体を密着させてたくさんキスをしてくれた。
「んん……」
くぐもった吐息が口の端から漏れる。抱きしめられているのに、全然体重をかけられていないのは不思議。ラルフ様にのし掛かられたら、たぶん僕は潰れて息もできなくなってしまう。そんなところまで気を遣ってくれるラルフ様が大好きです。
離れないように、僕もラルフ様の背中に回した腕に力を込めた。
「あ、あぁっ……」
ゆっくり動いてくれたからって優しいわけじゃない。奥の奥まできて、僕がカタカタ震えているのにそんなの無視してずっと抽挿は繰り返された。
意識が飛びそうになってもやめてもらえなかった。
「ラルフさま……僕はさいこう?」
「ああ、最高だ。マティアスは最高に決まってる。必ず俺が守る。大丈夫だ」
「うん」
ラルフ様は僕を何から守ってくれるつもりなんだろう?
僕もラルフ様が駄々っ子を発動しないように、行動には気をつけようと思った。
ラルフ様は王都に戻る交渉をしたと言った。これからはずっと一緒にいられる。寂しくてピエールと添い寝する日々も終わりだな。
「ピエール……またね」
あれから僕は眠ってしまった。目が覚めると僕は一人でベッドにいた。まだお日様は高い位置にあるから、午後を少し過ぎた頃だと思う。
それでラルフ様はどこに行ったんだろう?
ガウンを羽織ってベッドから降りると、ちゃんとシーツは変えられていて、僕の体もスベスベだった。
眠ってしまった僕の体をラルフ様が拭いてくれたんだ。
外でビュンビュンと風切音が聞こえて、それはなんだか無視できない音に思えた。
窓を開けて下を見てみると、ラルフ様がポポママの先に錘をつけて素振りをしていた。
エドワード王子が、ポポ軍団の先に錘をつけて振ると室内でも剣の練習ができると言っていたような……
「ラルフ様! 何してるんですか?」
窓から身を乗り出して聞いてみる。
「マティアス危ない! 中に入れ!」
僕が落ちるとでも思ったんだろうか? 大丈夫だよ。子どもじゃないんだから落ちたりしない。
ラルフ様はすぐに部屋に来てくれた。なんだか不機嫌な気がするのは、僕が窓から身を乗り出したせいだろうか?
「ラルフ様、外で何してたんですか? 起きたらいないから寂しかったです」
「マティアス、ピエールとは誰だ?」
「誰っていうか、木彫りのチンアナゴです。ラルフ様がいなくて寂しいと言ったら、シルが新入りのピエールを貸してくれました」
「ふぅ~、そうか」
ラルフ様が明らかに安心した。
「俺だけのものだと言ってくれたのに、マティアスは眠る前にピエールという名前を口にした」
「ごめんなさい。これからはラルフ様が一緒だからピエールはシルに返そうと考えていたんです。僕はラルフ様だけのものですよ」
「安心した。マティアス……」
「ぐえっ」
安心したラルフ様が僕を思いっきり抱きしめたから、僕は苦しくて変な声が出てしまった。すぐに少し力を緩めてくれたから息ができなくなったりはしなかった。
屈強な肉体が欲しい……そう思いながら、ラルフ様の背中に手を回した。
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