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魔王との対面

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「ふーん、お前が勇者か。何だ弱そうだな。しかも1人か。」

豪華な玉座に座って肘をつき、つまらなそうに俺を見下ろすのは魔王だ。
背中には蝙蝠のような真っ黒な羽が生え、恐ろしいほどに美しい容姿をした男だった。
真っ白な肌に漆黒の髪は床につきそうに長く、俺を見据える目はルビーの宝石みたいで、真っ赤な唇の端からは、牙のようなものがチラリと見えた。


「美しい・・・」
「そうだろう?我は美しいんだ。この世の何者よりもな。」

思わず俺の口から漏れてしまった呟きを魔王はご丁寧に拾って上機嫌にそう言った。

「そうか。」
「まぁ、お前もそれなりに整っているんじゃないか?」
「そうか。ありがとう。」
「それで何しに来た?」

「とりあえず仲間を解放しろ!」

魔王城に入る時、仲間たちは吸着性の強い結界に捕まって俺しかここへ辿り着けなかった。
まずは仲間の解放が先だと思った。


「なぜだ?外部から不法に侵入する害のある奴らを排除しようとしただけだ。自分の城を守るのに当然だと思うが?」
「じゃあ俺はなぜ排除されなかったんだ?」
「害意がなかったんだろ。もしくは魔王城の意思か。」
「魔王城の意思?」
「あぁ。魔王城は魔物みたいなものだからな。その仲間とかいう奴らを解放したいなら我ではなく魔王城に頼め。我は知らん。」

「魔王城!俺の仲間を解放しろ!」




「ククク、聞いたか?」
「何をだ?」
「魔王城の言葉を。」
「俺には何も聞こえなかった。」
「あぁ、魔物の言葉が分からんのか。人間は不便だな。ほれ。」

魔王が長い爪を俺に向けると、キラキラとした何かが俺に降り注いだ。

「何をした?」
「魔物の言葉が分かるようにしただけだ。」
「そ、そうか。」

「魔王城、俺の仲間を解放してくれないか?」
『俺の仲間?それ、お前本気で言ってる?』
「当たり前だ。」
『魔王様、勇者可哀想。』
「そうだな。魔王城、説明してやれ。」
『勇者、お前、魔王様を殺したらあの3人に殺されるよ。魔王様を殺さなくても殺されるけど。』
「そんなはずないだろ。あいつらは仲間だ。」
『そう思ってるのは勇者だけ。勇者が死ねば新たな勇者が産まれる。今代の勇者は弱くて優しいから早く死ねばいいと思われてるみたいだよ。』
「そんな・・・嘘だ。そうやって仲間の間を引き裂く算段か?」

「魔王城、見せてやれ。」

魔王が不機嫌にそう言うと、俺の前に四角い何かが浮かんで、その中には俺の3人の仲間がいた。
中に閉じ込められているわけではなく、遠見の魔法のようで、城門にベッタリと絡められた3人の様子が映し出されていた。



「良かったよねー」
「俺ら安全なここで勇者が死ぬの待ってればいいんだろ?」
「直接手を下さなくても魔王が殺してくれるからな。」
「マジラッキー」
「あいつが早く死んで新しい勇者が生まれないと、俺らが怒られることになるからな。」
「魔王頑張れー」



そんな・・・
仲間だと思ってたのは俺だけ?
まさか仲間だと思っていた奴らに死を願われていたなんて・・・。
 
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