【完結】可愛く転生したのに、僕は生まれ変わっても好きなものを好きと言えない

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「どうしたリアン」
「騎士なのにそんなこと言っちゃダメだって分かってるけど、前線に送り込まれるのが怖い……言わないで……」
 こんなこと言うべきじゃない。でも……戦うのは怖い。逃げたい。手が震えて、こんなことを言う騎士は失格だとみんなに軽蔑されるのではないかと思ってみんなの顔が見れなかった。ごめんなさい……。

「じゃあどうする? このまま放置したら、いずれは氷が溶けてワイバーンは復活するんだろ?」
 そうだよね、そうしたら、またみんなを危険に晒すことになる……。次は、本当に死者が出るかもしれないのに、それでもいいから黙っていてくれなんて、言えなかった。

「いいぞ。俺がお前らと倒したことにする。いいか?」
 殿下がそう言ってくれた。

「え! 俺たちだけじゃさすがに九体は……」
 一体ずつ氷を溶かして戦わされるのかと思ったのかもしれない。友達が呟いた言葉に僕は覚悟を決めた。みんなを守るためだ。

「僕がやります」
 僕は凍らせたワイバーンの、首元だけ氷を溶かして、魔法を……。

 できなかった。集めた魔力が魔法にならずにプシューっと消えた。
 生き物の命を奪うことが怖くて手が震えていたのは分かっていた。魔法を発動しようとした時、首の血管が脈打つのが見えて、それでまだ生きてるんだと思ったら魔法が消えてしまった。

「リアン、トドメは俺たちがやるから、首元だけ氷を溶かしてくれればいい」
 震えて上手く魔法を発動できない僕に、友達が言ってくれた。
「いいの?」
「だが本当に俺たちの手柄にしていいのか?」
「うん、むしろお願い。こんなこと頼んでごめんね」
 こんなこと頼むんだから、功績くらいもらってよ。

「分かった、やるぞ。これで後で確認されても俺たちがやった証拠にもなる」
「殿下の剣も借りてやっておくか」
「すまんな、俺のリアンの我儘で」
 なんでさっきから殿下は『俺のリアン』とか『俺の愛する男』とか言ってくるんだろう。助けてくれた感謝?

「いえ、俺たちはリアンの盾ですから」
「みんな、ありがとう」

 こうしてワイバーンを倒し、死闘を繰り広げたふうを装ってワイバーンの死体をズタズタにしたりして、僕たちは殿下を連れて帰った。途中で友達がたくさん合流してくれたから、まだ動けない殿下を安全に運ぶことができた。

「よかった、生きていて、今度こそ本当にもうダメかと思いましたよ殿下。てっきりワイバーンの餌になったのかと」
 すっかりその存在を忘れていたけど、今回は遠征についてきていたナタールさんが駆け寄ってきた。

「わざとだわざと。ワイバーンの巣に行って戦うためだ」
 殿下の目が泳ぎまくっている。殿下は自信満々に、「俺たちがやったことにする!」なんて言ったけど、無理な気がしてきた。

「彼らも手伝ってくれてドーンとやってバーンとな」
 ワイバーンの死体は、ポーションを飲んだり治癒魔法で治療されて動ける騎士たちが、総出で回収に行った。
 ワイバーンの素材は武器や防具だけでなく、薬にもなるそうだ。

 殿下は野営地に戻ってくるまでは元気だったけど、戻ってきて安心したのか、血が流れすぎて貧血になったのか、団長専用の天幕で眠っている。ナタールさんがついていてくれるから大丈夫だろう。

「どれも首を一突きにしたのが致命傷ですか……」
 ワイバーンの死体を検分していた副団長に訝しげな表情を向けられると、めちゃくちゃわざとらしく四人は目を逸らした。そして僕に注目が集まった。

「フロリアン、説明できるかね?」
 やっぱりそうなりますよね。副団長と数名の隊長に囲まれると、もう誤魔化すことはできないと思った。

「…………はい。僕が、やりました」


 結局隠すことはできなかった。 なんで僕だって分かったの? 初めから知ってたの?

 翌日になると「ワイバーンの巣まで一緒に行って洞窟を潰してくれ」と言われて、できないとは言えず、五割くらいの力でドーンとした。
 ふぅ、これでやっと終わりだ。

 戻ってくる途中でも、戻ってからも、副団長にジロジロ見られているのが気になった。
「な、何か?」
「フロリアンはあんなものぶっ放しても随分余裕そうだな」
 しまった……。巣となっていた洞窟を潰すと、岩壁は身体強化を使ってササっと下り、終わったのだと思って足取り軽く歩いて野営地まで戻ってきてしまった。少しくらい疲れた演技をするべきだった。

「いえ、あー、フラフラするかも、もう、ま、魔力がないみたいだ…………」
「嘘つけ」
 ですよね……、僕も嘘がつけない男だったようだ。


 *

 >>>殿下と秘書

「俺はとうとうリアンに愛を伝えたぞ!」
「そうですか」
「祝賀会を開かねばならん」
「大袈裟です」
 もっと早く伝えておけばこんなに拗れることもなかったのに、今朝までの殿下はもういつ死んでもいいと思っているほどに落ち込んでいた。殿を買って出て、ワイバーンに攫われたと聞いた時には、とうとう死にに行ったのだと思ったほどだ。

「リアンはキスしてくれたんだ。みんなの前で」
「は? 殿下の勘違いなのでは?」
 彼は人前でそんなことをするような男ではない。控えめな彼がそのようなことを……?
 ん? ナタールは思い当たることがあった。

「殿下、それはポーションを口移しされただけでは?」
「それもあるが、リアンの柔らかい唇が触れたんだ。それは立派なキスという行為だ! 俺はしばらく目を閉じ感動を噛み締めていた」
 殿下がこれでは、二人の関係はまた拗れてしまうのではないかとナタールは小さくため息をついた。

 
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