瀬をはやみ

怜悧(サトシ)

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忘れえぬひと

side Searashi

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目が覚めると寝室のベッドの上で、まるで体が自分のものじゃないみたいに重く感じた。
寝室まで西覇が運んでくれたのだろうか。
今は高校の頃よりも更に体格差はあるはずだ。
綺麗に体は拭かれて、部屋着を着ていた。
この痛みさえなければ、まるで再会したこともされたことも夢だったんじゃないかという気にもなる。
体中を弄ばれて、でも、それは愛の営みでもなんでもなかったのはわかる。
西覇は俺と体を繋ぐことすらしなかった。
求めても求めても与えられることなく、それでも体は本能に忠実ではしたなく快感に溺れた。

掌で思わず顔面を覆う。

漸く探していた彼を見つけたことに、運命かもしれないなんて浮かれていてこのざまだ。

いつか許されることは、あるのか…………な。

起き上がって時計を見ると、夜の21時を回っていた。
15時くらいまでの記憶はある気がするが、5時間以上は意識を飛ばしていたことになる。
流石に、西覇も帰ったよな。
もっと……ちゃんと話をしたかったな。
話しても、許してはもらえないのはわかっているのだけども。
上体を起こして、ベッドから降りると腰のあたりに違和感を感じる。
セックスなんて、本当に十年ぶりだ。
セックスと呼んでいいのかもわからないけどな。
ため息をつきながら寝室を出ると、キッチンに西覇の後ろ姿を見つけた。
「せ、せいは?」
思わず挙動不審になりながら声をかけると、ゆっくりと振り向き眼鏡越しの視線が返ってくる。
「起きたのですね。冷蔵庫、勝手にあけてあるもので夕飯作りました。体、平気ですか」
「あ…ああ…平気……。悪ィ……すっかり寝ちまった」
焦って答えたものの、ギシギシする体は全然平気ではなかった。
「僕がムリさせたんですよ」
淡々とした口調で声をかけて、じっと俺を見つめてくる。
その視線の意味がなんなのか分からなかったが、俺はキッチンの前のカウンターへ腰を下ろした。
並べられる料理は、綺麗に飾り付けられていて、どこかのレストランのように完璧だった。
「料理うまいんだな……」
俺の冷蔵庫にあったものでよくつくれたなと感心して眺めていると、ふっと笑って西覇は俺を見て口を開いた。

「僕、今、恋人がいるんです。良く作ってあげてるんです。だから、今日のことはお遊びです」
俺の様子を伺うようにして、西覇は静かに言うと俺の席の隣に腰を下ろした。

一瞬の間。

「……そ…そうか。………そう………だよな、西覇、イケメンだし、モテるよな」
だから、身体なんて繋げられなかったのか。
浮気なんかしてはいけない。
ただ、俺があの時逃げたことに対して制裁を加えただけ。
そう考えると、納得できた。
……制裁か。
でも、そうまでして恋人がいるのに、俺にかかわらなくても良かったのではとも思うが、俺が強引に西覇を連れてきたんだった。

「別に恋人のこと好きではないですけど、やっぱり独りはさびしいのでね」

ああ、俺が、こいつから人を好きになるキモチを奪ってしまった。
そう考えると苦しくなった。
恋人ができたことも、仕方が無い。
心変わりなんてするに決まっている。
遊びだってことも、抱くことさえしなかったことから察しはつくことだ。

「俺は……オマエに遊ばれても文句ねえよ。ただ……その、オマエの今の恋人さんには悪ィと思うから。……だから、オマエが言ったように、もう会わない方がいいよな……会うと諦めきれねえし」

大の大人が泣くとかありえねえと思ったけど、俺は曇る瞳に信じられないように掌で目を覆った。
苦しい。
苦しくてどうにかなりそうだ。

しばらくして、ぽんっと西覇が俺の肩を叩いた。

「そうやってまた姿を消すんですね。やっぱり信用ならない人だ。恋人なんて……嘘ですよ……。オレを恋人から寝取ろうとか考えてくれないのは、貴方らしいけど。……だから許してあげません」

西覇の言葉に俺は顔をあげた。
表情のある少し困ったような表情で、俺の顔をじっと見返した。

「あの時も、そうやって簡単に僕をあきらめたんでしょ……。本当に何一つ変わってないですよね、貴方は」
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