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髪を拭いて乾かしてもらう
しおりを挟むシャンプーが終わった。幸せな時間が終わり寂しくなってしまう。
「失礼しますね。」
お姉さんはタオルを下に差し入れて僕の顔を優しく撫でる。ふわふわなタオルの柔らかさが心地いい、それに洗剤の違いかいい香りがする。押し付けるように顔を優しく拭ったあとタオルが離れていき、次はうなじと首周りを拭かれる。首元を粗方拭いてそのままうなじにタオルを置かれた。
彼女の腕が僕の脇に差し込まれ胸に触れる。「あっ」と思わず声を漏らしてしまった。
「はい、起き上がってね。」
僕の声は聞こえなかったようで彼女は気にした様子はない。そのまま彼女の手に胸を押されて体を起こす。うなじに置かれたタオルもお姉さんが支えてくれていた。
背凭れに背中が着くと胸に置かれた彼女の手が僕の胸板をなぞるように離れていった。驚きと恥ずかしさと興奮で体が強張ってしまう。陰茎も少し硬くなってきている。今はカットクロスを外しているので勃起してテントを張ると確実にバレる。落ち着くために呼吸をゆっくりするように意識する。
お姉さんは後ろに立ってタオルで僕の頭を拭いていく。髪の表面を撫でるように優しく拭いていき全体的に水気を取っていく。その後少し強めに髪を掻き分けて頭皮を拭いていく。よく考えると髪を拭かれる行為って家族か恋人にしか普通はしないことに思えて想像が膨らんでしまう。
「何かタオルもいい香りがしますね。」
リラックスしてしまい思ったことがそのまま口から出てしまう。
「そう?今日は私が使ってる洗剤でタオル洗ったからね。いつもと違う香りだとは思うけど。」
「…そ、そうなんですね。」
リラックスしてたのに緊張してしまう。今頭を拭いているタオルは、彼女の服と同じ香りをしている。シャンプーほどの衝撃はないがそれでも意識してしまう。
髪を拭き終わってタオルが離れていき、彼女はドライヤーを取り出した。
「ドライヤーかけるね。」
「はい。」
ブーンと音を立てながら温風を当てられる。髪が風で巻き上げられてシャンプーの香りが広がる。
乾かし終わったらこの時間が終わってしまう。温風と髪を撫でる彼女の手がすごく気持ちいいのに残念な気持ちが胸に広がってくる。鏡を見ると微笑みながら僕の髪を乾かすお姉さんが見える。すごくきれいだ。
髪が完全に乾いてドライヤーが止まる。音が止むと店内がすごく静かに感じる。残念に感じているとお姉さんは櫛を取り出して僕の髪を整えていく。ゆっくり優しく髪が梳かれていく。
「はい、お疲れ様。」
「あっありがとうございました。」
終わりを告げる言葉に寂しさを感じるが僕にはどうしようもできない。寂寥感が大きくならないうちに帰ろうと思い、立ち上がろうとすると両肩に手を置かれた。
鏡越しに目が合う彼女は変わらず微笑みを浮かべている。両肩に置かれた手が動いて僕を撫ではじめていた。驚きで硬まってしまうが構わずに肩は撫でられ続ける。
そのまま時間が少し過ぎると午後5時を知らせるチャイムと放送が外から聞こえてきた。その放送はこの店が閉店時間を迎えたことも同時に知らせている。
「ねぇこの後時間ある?」
耳元で囁かれる。吐いた息が耳にかかってくすぐったいがそれどころではない。答えなければ。
「……はい。予定は、無いです。」
「…そう、良かった。じゃあもう少し施術を続けましょうか。」
両肩を撫でていた手が首元に移動してそのまま輪郭をなぞるように撫でられる。同じ方向を見ながら見つめ合って互いに逸らそうともしない。
「……はい。お願いします。」
「今からは仕事じゃなくてプライベートだからね。」
「…?はい、?」
お姉さんの言葉の意図が分からず間抜けな返事をしてしまった。彼女はお店の出入り口まで歩いていき、扉を開けて営業中の札を返す。そのまま外に行ってトリコロールを止めてから店内に戻ってきた。扉のガラス部分のブラインドを下げてから再び僕の後ろに立つ。
「今からは店員とお客様じゃなくて、1人の女と1人の男として、てこと。」
優しい微笑みではなく、妖艶な笑みで目を細めている。雰囲気が少し変わったように感じた。
「せっかくだから、顔剃りしてあげるね。」
さっきまでの丁寧な口調ではなくフランクで軽い言葉にソワソワしてしまう。
「顔剃り、ですか。じゃあお願いします。」
「敬語使わなくてもいいよ。」
彼女は耳周りのシェービングをしたときと同じクリームを片手に持っていた。
「椅子倒すね。」
「はい。」
「クリーム塗るから目閉じて。」
「はい。」
彼女に言われるままに目を閉じて待つ。
ヌチャヌチャ 音を立てながら顔にクリームが塗られていく。
「じゃあ動かないでね。」
「はい。」
顔全体にクリームを塗られてから剃刀で生毛を剃られていく。経験がないので少しヒリヒリするように感じる。
ザリザリ ザリザリ 小さく音を立てながら顔の毛が剃られていく。おでこ、頬、鼻の下、顎と剃られていく。会話は無いが心地よさはある。
顔全体を剃り終えるとお姉さんが離れる音がしたがすぐ戻ってきた。
「化粧水塗るね。」
「あ、はい。」
パシャパシャ 音が聞こえた後、彼女の両手の平が僕の頬に触れる。肌に塗り込むように揉み込まれる。微かに甘い匂い。
「保湿クリーム塗るから、まだ目開けちゃダメだよ。」
「はい。」
再び彼女の手でクリームを塗られていく。目を開けていないのでより彼女の手の柔らかさや温かさを感じる。
塗られ終わると閉じた目の上に熱さを感じた。
「わっ」
「ふふ、ついでにホットアイマスクもしましょうか。」
「あっはい。」
温かいおしぼりが置かれたようだ。少し熱めだが気持ちいい。
リラックスしていると頬を撫でられた。
「顔剃りしたから肌スベスベだね。」
「あっそうなんですね。」
右手で自分の顔を撫でるといつもより肌を触っている感覚がある。
「なんかいつもより抵抗がない感じはします。」
「そうでしょ。頬擦りしたいくらいね。」
「…あはは。」
冗談にしても少し生々しい。ずっと撫でていたいとかならまだありそうだが。
「そういうば私も昨日自分の顔剃りしたの。」
彼女は僕の右手を取って動かす。そのまま僕の右手は何かに触れた。一瞬冷たさを感じたがすぐにその奥にある温かさに気付いた。スベスベという表現を聞くことはあったがこれがその感覚なんだと納得した。
「どう?」
「気持ちいいです。温かくて、柔らかくて、スベスベしてて。」
もう彼女は僕の右手を掴んではいない。自分で動かして彼女の頬を撫で続ける。
「ありがとう。」
アイマスクをしているので彼女がどんな表情をしているのか見えない。でもその方が彼女の感触を感じられる気がするのでそのまま。
会話が途切れた後も少しの間撫で続け僕は手を下ろした。間があって彼女が動く気配。直後に背凭れの軋む音。呼吸音が近付いてきて僕に触れた。
「気持ちいいね。」
「はい。」
彼女の頬と僕の頬が触れている。少しだけ顔を動かして互いの頬を押し付け合う。どちらの肌もスベスベしていて心地がいい。ほんの十数秒だけ頬を当て合って彼女は離れていった。でも呼吸音は変わらず近いまま。
彼女の呼吸音が止まり、唇に柔らかい感触。僕が何もできずに固まっていると再び感じた。さっきよりも長めだがすぐ離れていった。また感じる。今度は離れずに柔らかさを続けて感じる。10秒ほど唇を押し付けるようにしていると彼女は離れていった。
アイマスクはぬるくなってきたがまだ十分に温かい。
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