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これから……
しおりを挟む――初夏。
ある朝の雨上がりに、私の大好きな並木道であなたと並んで歩く。
「ふわりさん、今日はどこをお散歩しますか」
穏やかで心地良いその声に誘われるように、私の視線はあなたを見つけて。目が合ったその奥には、まるで美しい青葉に残る雨の雫のように、キラキラと光る潤んだ綺麗な瞳が微笑んでくれている。
それはこの世界にひとつしかない宝石のように、眩しく感じた。
「ぇ? えっと、あの……心さんと一緒でしたら、私……嬉しいのです」
いつも私に歩幅を合わせて、隣を歩いてくれる。
そんなあなたのさりげない優しさが、とても嬉しくて、胸の奥がくすぐったい。
「えぇ、僕も。ふわりさんとだったら、どこにいても嬉しいです」
少しだけ触れ合った指先が、まだ手を繋ぐことを恥ずかしがる。
それでもいいとふたり見つめて、微笑み合う。
そして見上げた空には白くてふかふかの雲と青空が広がり、太陽が顔を出し始めた。
「ふわぁ~! 清々しい朝ですね。それに……お日様も出てきましたぁ~」
どんなに雨が降っていても、どんより曇り空に、寂しい闇夜、こうして太陽の光を感じる素敵な朝も。
あなたと一緒に見る景色は、とても幸せに想える。
「ふわりさん」
「は、はい?」
突然、真剣な顔で声をかけられドキッとした私の頬は紅潮し、恥ずかしさで身体中が熱くなる。
「傍にいてくれて、ありがとうございます。これからもずっと……」
ふわっ――ギュッ。
「こ、心さん……」
「ずっと、大切に……幸せにします」
抱きしめる腕が強くて、でも柔らかくて。
私も応えるようにぎゅっと、彼の背中に手をまわす。
伝わってくる体温と良い香りに、感じたことのない安心感に包まれた私は今にも眠ってしまいそうだ。
(それなのに! このドキドキが、心臓の鼓動が止まらなくて……)
でも、離れたくない。
ずっと、ずっと、これからも一緒にいたいと、私は心奥から願っている。
「はい……でも、もう私」
「うん? どうかしましたか」
(すぐに心配そうになるあなたの口調や声も、大好き)
「あの、私、心さんとずっと、一緒にいられるだけで、十分幸せなのです」
桜の花びらがふわひらと舞い散る季節に、あなたと出会えた奇跡。
一緒に見る景色に爽やかな風を感じる、夏の始まりは未来へと繋がって……。
「良かった。えぇ、僕も。こうして同じ時間を過ごせるだけで。幸せすぎるくらいです」
私は、人生で初めての恋をしていることに改めて気付いた。
そして、想う。
大好きなあなたに触れるたび、溢れていく幸せに、きっとこれからも恋心を重ねていくと。
◇
初恋とは。
生まれて初めての、恋。
初恋とは。
人生における初めての、恋。
――初恋って?
今はその気持ちで、胸がいっぱいだ。
◇
これは私、夢咲ふわりが生まれて初めて経験した初恋の病。
そして素敵な天使様……もとい、天使のような彼とこれから紡いでいく。
――――素敵な恋の始まりである。
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(1件)
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初恋がこんなにも素敵なものだなんて……!
読みながらこちらもふわりちゃんと一緒にドキドキしてしまいました(*´ω`*)
恋っていいですよねv
菜乃さん、ありがとうございました。
未来屋様
恋って、うっふふふ♡イイでしゅよねぇ♫
自分でも書きながら「んきゃーん」って
言っちゃってましたぁ(。・////・。)
こちらこそお読み下さり
ありがとぉございましたぁ。