2 / 91
第2話 着飾られる幼女
しおりを挟む名医ゲンジによる「アルテミシア封印」も成功し、無事に誕生した私は「メルヴィナ」と名付けられた。
メルヴィナとは、かつて「人間」と「魔族」の和平を実現した神話の女神の名である。
人間の器の中に、強大な魔力を宿しながらも生きる宿命を与えられたのだ。
あれから時は流れていき、私は18歳となる。
健やかに育つも「アルテミシア封印」による延命により、公爵令嬢としての人生に少なくない影響が出ていた。
不幸にも身長が120㎝程度で成長を終え、生涯「幼女」のまま生きなければならなくなってしまったのである。
「しかしまあ、せっかく可愛いのになんだかなあ・・・・・・」
公爵家のお屋敷の自室でつぶやく私。
大きな姿見の前で独り言つ私は今、幼いころからの専属メイドであるアリシアによって、妹シャルロットの結婚式典参加のための着付けをされている。
鏡に映る小さな女の子は、今まで私が見たことのあるどんな美少女よりも綺麗なお人形のようであった。
肩のあたりまで伸びる青みがかった黒い髪、透き通る水色の瞳は神話に描かれる魔女「アルテミシア」に似ているという。
「お嬢様!大変よく似合っておりますよ!」
私の肩に手をのせて満面の笑みでそう言うアリシア。
彼女のその様子は、飼い主にくっついて尻尾をブンブン振る小型犬のようであった。
白に近い綺麗な金の長い髪を後ろで纏め、目はパッチリと大きく、悔しいが胸も大きい。
アリシアは今年で21歳になるのだが、平均と比べても背が低い彼女は少し幼く見える。
まあ、同年代の平均よりもぶっちぎりで小さく幼い私が指摘するのは滑稽な話だが。
彼女が選んだ服を着せられた私は、体をひねるように動かして全体像を確認する。
頭に装着されたのはサンバイザーのように広がる、黒いつば広のヘッドドレスであった。
肩から胸にかけて垂れる三角の白いカラーにはレースのような装飾が施され、下に着ている黒いジャンパースカートとよく馴染んでいる。
美しく伸びる細い脚の先には白い靴下と黒いショートブーツ。
まあ、あれだ、所謂ゴスロリ系の衣装だ。
「本当に可愛らしいわ!!これでパーティー会場の皆さんもメルヴィナ様に夢中ですわ!!」
アリシアを筆頭に、着付けを担当している侍従たちは目にシイタケ模様の光を浮かべて「尊い!」と騒がしい。
私は完全に着せ替え人形状態である。
確かに、前世が成人女性である私から見ても眩くて直視できないレベルで美形だった。
100年に一人の美少女がかすむレベルである。
惜しむらくは、これ以上伸びることのない身長と凹凸の無い体つきであった。
お人形のような扱いも、毎日のアリシアによるお肌手入れによって既に慣れたものである。
完璧な容姿の美少女として完成した私を連れて、アリシアは部屋の外へと出た。
扉の前で待っていた青年騎士のガウェイン卿が「お嬢様・・・・・・」と私の美しさに息をのむ。
未だ少年の面影を残す、燃えるような短い赤髪を立てたイケメンナイトのガウェイン。
彼は私が幼いころから「専属騎士」として私に仕えてきた。
初めて会った時から、私と目を合わせると緊張したような仕草を見せる。
大分慣れたとはいえ、それは今でも変わらない。
「どうしたのガウェイン?顔に何かついているかしら?」
いつもよりも大きく驚いて固まっているガウェインに対して、どうしたのかと尋ねる私。
するとガウェインは「い、いえ、何でもありません!」と慌てて佇まいを改める。
その横ではアリシアが柔らかな笑みを浮かべて楽しそうにしていた。
「それじゃあ、パーティ会場へ行きましょうか」
こうして準備の整った私たち3人は、後方で多くの侍従達に見送られながら妹シャルロットの結婚式典の会場へと向かったのだった。
11
あなたにおすすめの小説
男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー
高井繭来
恋愛
ルーシュ・サウザント・ドラゴニアは公爵家の第8子だった。
武で名をはせたドラゴニア家には上に7人の姉。
待望の男児が生まれなかったドラゴニア公爵はルーシュを男児として育てる。
男として育てられたルーシュは剣と魔法の才能を発揮し12歳にして国家聖騎士団の一員となり功績を積むが、父より届いた手紙で全てを失う。
『待望の男児が生まれたから明日から女として生きろ』
こうしてルーシュは神殿仕えの身となって聖女の侍女となった。
ウザい聖女に絡まれながらもルーシュは今日も侍女としても務めを果たす。
侍女として働く一方で魔獣の王都侵入を防いだり、曲者の親友が家出してきたせいで何故か大帝国の王子に見初められたりと第2の人生は波乱万丈だった。
※聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~とリンクしています。
※ちょっぴり題名変えました。
カテゴリ【恋愛】に変えました。
ファンタジーだけど恋愛が中心になってきてしまったので(;^ω^)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど
monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。
でも、なんだか周りの人間がおかしい。
どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。
これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる