幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第8話 魔王城の一室にて

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 黒翼の銀髪美青年系の魔物であるアドルことアドラメレクによって、私たち3人は魔王城の一室に通される。
 明らかに他の部屋とは異なる豪奢な扉を抜けた先には、公爵家のお屋敷がそのままスッポリとはいるようなサイズの空間があった。
 そして、庭園の中央にはヴィクトリアン・ハウスのような様式の建物がある。
 というかこれ、部屋って言っていいのだろうか?

「すごいですね・・・・・・」

 目の前に広がる庭園とお屋敷に、アリシアもガウェインも唖然とする。
 室内に屋外があって、更には空まであるという事実に私も驚かざるを得ない。
 私たちの様子に気づいたアドルは「魔王城は人間で言うところの国のようなものですからね」と答えた。
 彼の話によれば、魔王軍は魔王誕生のたびに魔物たちが集って群れを成すというシステムらしい。
 そのため、一つの土地に住み着いて国を作るといった考え方ではないのだ。

「それじゃあ、この魔王城中にこういった空間がたくさんあるわけかしら?」

 お屋敷へと続く石畳を歩きながら、私はアドルに質問する。
 それに対してアドルは「いえ、こちらのようにお城の一部をくり抜いたような場所は少ないです」と答えた。
 今私たちがいる空間は所謂「中庭」のような構造をとっており、ドーナツの様にお城の廊下の外壁がそのまま壁として使われている。
 さっきすれ違った犬部隊の宿舎なんかは、「離れ屋」のように少し外を歩いて建物に入るというシステムだという。
 ただ、お城が「異常にデカい」ことにより城の外郭が実質国境のようになっているというわけだ。

「それじゃあ、城塞都市国家ってことになるわけね」

 アドルの話を聞いた私が、なるほどといった様子で人差し指を口に当てて言う。
 その仕草はなんだか悪戯を企む子供のようであったらしく、アリシアが温かい目でこちらを見つめていた。

「大雑把に言うとそうなりますね」

 アドルが城内に用意された私の屋敷の扉に手をかけながら答える。
 扉の向こう側には、お屋敷の使用人たちが私たちを待っていた。
 玄関の端から延びるように、赤い絨毯を挟んで並び立つ使用人たち。

「お待ちしておりましたメルヴィナ様、私はこのお屋敷のハウス・スチュワードを任された「ラビアンローズ」と申します。以後お見知りおきを」

 使用人たちの中でもとりわけ背の低いウサギの魔物が、私の前で深々と礼をする。
 自らを執事長であると申し出た執事服のウサギさんは、幼女の私よりも少しばかり背が低かった。
 そのなんとも可愛らしい容姿に、生前遊んでいたおもちゃのなんとかファミリーを思い出す。

 様々な種族から構成される魔族のメイドたちにお辞儀される中、私たちは部屋へと案内された。
 こちらの建物は魔王城とは違い、人間サイズに作られた廊下と天井である。
 あたりを見回しながら歩く私に、ガウェインが「魔王城ってすごいところですね……」と感想を漏らしていた。

「こちらがお部屋になります」

 執事長のラビアンローズが扉の前で立ち止まる。
 謁見の間から歩くこと数十分、私たちはようやく客間へとたどりついたのであった。


----


 魔王城の中に用意されたお屋敷の一室で一息つく3人。
 豪華とはいっても、もともと公爵家で暮らしていたのであまり気にならないでくつろぐ私たち。
 この城にやってきた時から感じていた疑問を、私は二人にぶつけてみることにした。

「ねえ、魔王城ってどこにあるかしらね」

 魔物たちに「転移魔方陣」で連れてこられた私たちは、魔王城がこの世界のどこに存在しているのかが分からないのである。
 アリシアやガウェインも現在地の見当はつかないらしく、あとでラビアンローズに聞いてみようと思った私であった。
 ただ、これだけ大きな城が存在する以上は人間に知覚されていてもおかしくはないはずである。
 それなのに、人間国家では「魔王」などというワードを聞いたことが無い。
 私たち人間に捕捉されないようにプロテクトみたいなものが魔王城にかけられているのかしら?

 考えても答えは出ないのだが、気になったことはとことん気になり始めてしまう私なのであった。
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