幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第24話 深刻な人手不足

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 斥候部隊の魔物ですら碌に情報を集めることができないと嘆くアドル。
 しかも、大戦経験者だからと言って必ずしも頭が切れるわけでもなく、実働可能な諜報員は3名程度であるという。
 その3人とは第1部隊の吸血姫ヴァネッサ、第2部隊の人狼ロキ、それと第3部隊隊長の土塊スターチアらしい。

「なんだか、通り名的には確かに3人ともキレ者っぽいわね……」

 私は初めて聞く3名の名前と通り名について気になった。
 吸血姫はおそらく「吸血鬼」であり、人狼は確かこの前廊下から見えた第2練兵所の端っこにいたはず。
 体格的にも近いガウェインが人狼の彼を注目してみていたのを思い出す。
 そして、土塊スターチアとはおそらく「人形のように可愛い」あの隊長のことだろう。
 私たちが昨日の夕方ガウェインを迎えに第3練兵所に行ったときに少し話した女の子である。
 あんな女の子が大戦経験者だったなんて驚きだわ。
 まあ、私みたいなのが言っても説得力ないんだけどね。

「でも3人ってちょっと少なすぎないかしら……?」

 1万を超える軍勢である魔王軍の中で高い知能を持つ者がわずか3人という話を聞いて私は驚きを隠せなかった。
 いくら武闘派集団とはいえ、これでは戦争なんてできるはずもない。
 500年前の大戦の時もこんな感じだったのかとアドルに聞くと「当時はもう少し頭の良い魔物がいましたね」と答えた。
 大戦が長引いていたこともあり、自然と頭の良い魔物が頭角を現していた時代でもあったという。

 アドルの切実な悩みを聞きながらも、私たちはお勉強を進めていく。
 魔王軍の「頭脳不足」の問題を少しでも解消できるように私たちも頑張らなければならないのだ。
 まだ二日しか魔王軍とは関わっていないが、結構気のいい連中であるのは確かである。
 私には帰る手段もないのだから、とりあえずはここで頑張ってみようというわけだ。

「ねえ、これって……」

 私は本を読み進めていくと驚くべき記述を発見した。
 それは「人間の勇者メルヴィナと魔族の王カオスは邪神フェイリスを打ち取り、そののちに魔族と人間の平和の懸け橋となる」という表記である。
 自分と同じ名前が出てきた私は、困惑してこれについてアドルに尋ねた。
 すると、やはり「メルヴィナ」とは先代魔王妃の名前であるという。

「魔物たちは「メルヴィナ」という名前は魔王妃に与えられるものだと思っているようですが……」

 魔王妃の名前は襲名するものではなく、単なる偶然ですというアドル。
 私が名づけられた時には「神話の女神メルヴィナ」から名前を取ったと言っていたはずである。
 500年前の勇者メルヴィナなんて存在がいたことは初耳であった。
 もし、そんな大層な有名人がいたならば歴史に残っているはずである。

「やっぱり、私たち人間の歴史には存在しない話が多いわね……」

 私は「魔族」の歴史が人間たちの間で消滅していることに気づいた。
 書き記されずにだんだんと失われていった歴史なのか、それとも人間にとって都合の悪い過去だったのかは分からない。


----


 私たちはそれから、一か月程度お勉強の日々を重ねる。
 私とアリシアは「魔族」についてかなり詳しくなり、魔王軍の訓練に参加していたガウェインも最近では第2部隊の訓練に混ざれるほどには成長したようだった。
 魔王城での暮らしにもすっかりと慣れて、最近ではアドルやほかの魔物たちを屋敷に招待して晩餐会なんかもしちゃったりしてる。

「さあ、いよいよね……」
 
 いつも通りの朝日の中、少し緊張した様子で私は廊下を歩く。
 隣を歩くアリシアとガウェインも「お嬢様はこの日のためにお勉強なさってたのですものね」とドキドキした様子だった。
 そう、今日は「魔王」に勉強の成果を見せるときである。
 私は以前、朝食の時に魔王から「勉強してから出直せ」とお叱りを食らった時からずっと思っていたのだ。

「私も魔王軍の政治に関わることをあいつに認めさせるのよ」

 魔王軍の今後の方針も含め、あれこれと口出しするためであった。
 妹のシャルロットや兄であるランスロットにいつでも会えるような環境づくりのためにも、私は頑張らなければならないのである。
 まあ、この時の私にはこれから待ち受ける苦難の日々など知る由もないのだが。

 こうして、私たち3人はアドルや魔王の待つ食堂へと歩みを進めるのであった。
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