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第25話 認められた魔王妃
しおりを挟む「お前も俺に力を貸してくれ」
結論からいくと、私メルヴィナは魔王に努力を認められたようである。
1か月前に軽くあしらわれた時に感じた憎たらしさを、彼からは露ほども感じなかった。
横に立つアリシアにも「アリシアも俺たち魔王軍に力を貸してくれないか?」と丁寧に頼む魔王。
なんだか私に頼むより少し丁寧じゃないかしら?
しかも名前で呼んでるし。
私に対しては「お前」呼びなところが少し気になるけども、私の優秀なメイドの力量も認められて嬉しく思うのだった。
----
深刻な人員不足に悩む魔王達は、さっそく私とアリシアを「定例会議」のメンバーに加える。
定例会議は、毎日行われる短い報告会のようなものであった。
謁見の間の玉座付近で行われる会議は、なんだか少しいつもと雰囲気が違う。
私とアリシアは、定例会議に緊張した空気を感じるのだった。
「それでは、定例会議を始めます」
司会進行役として立ち上がったアドルが、テーブルの上に広げた資料を見渡しながら言う。
謁見の間に設置された大きなテーブルの周りには魔王軍の幹部たちが座っていた。
第1部隊から第3部隊までの隊長、執事長の魔物やメイド長の魔物、その他各部署の代表が集まっている。
その中には料理長のオーキンスや私の屋敷を管理しているラビアンローズなんかもいた。
各部署の代表ではない面子としては、第1部隊の魔物が数名と私の家臣であるアリシアとガウェインが座っている。
アドルが開始を宣言した定例会は、日常的な業務連絡を淡々と報告していく。
魔物たちからは各部署で起きている大小の問題や、魔王軍全体に関する提案など色々と出てきた。
そして、ひとしきり平和な報告が終わったところでいよいよ緊張した空気が漂い始める。
「邪神教に関する調査なのですが、この一か月であまり有益な情報は得られておりません」
暗い表情で報告するのは第3部隊隊長の土塊スターチアである。
私よりも少し背の高い、青色の髪をしたお人形さんは成果をあげられていないことを申し訳なさそうに語った。
以前アドルが言っていたように、諜報部隊といえども必要な情報の取捨選択がうまくできていないようである。
スターチアが得た情報もほとんどは自身で調査したものであるという。
「むう、やはり諜報活動というのはむずかしいのだな……」
彼女の報告を受けて唸るのは第1部隊隊長の戦神シグマであった。
2mを超える大柄な体付きの虎の獣人であるシグマは、魔王軍の誇る「武力」の最高峰である。
彼は先代の大戦時から魔王軍に属する古株でもあるのだが、如何せん頭が良くなかった。
というより、戦闘に関すること以外はからきしなのである。
「いやいや、あんたや他の諜報部隊の奴らの頭がポンコツなだけよ」
シグマの横に座っている青白い肌の吸血鬼の女が、手をヒラヒラと動かしながら呆れたように零す。
彼女は以前アドルの話に出てきた「第一部隊の吸血姫ヴァネッサ」である。
ヴァネッサもシグマと同様に前回の大戦経験者であるらしい。
桃色の長髪がエッチな大人のお姉さんといった容貌のヴァネッサは、魔王軍の知能レベルに文句をつけていた。
「グレイナル山脈に生えてるおいしそうなキノコ」の情報とか今はいらんでしょと半笑いで言うヴァネッサ。
ちなみに、この情報はビッケが拾ってきたらしい。
「しかしな、お主のように頭のキレる魔物なんてそうそういないぞ?」
机を叩きながら笑ってるヴァネッサに対して意見を述べるのは「第2部隊隊長の竜人ドレイク」であった。
漆黒の鱗で覆われた竜人のドレイクは、シグマと同様に戦闘に特化した魔物であるらしい。
「お主的にまともに諜報できるやつは魔王軍に何人おる?」
ドレイクがヴァネッサに問いかける。
それに対してヴァネッサは「魔王様とアドラメレク宰相、第二部隊の人狼ロキ、あとはスタチーといったところね」と答えた。
スタチーとは第3部隊隊長のスターチアのことである。
スターチアもドレイクやヴァネッサとは旧知の仲であるらしく、先代魔王の時代からの家臣であるという。
会議の内容から、諜報活動ができる程度に強くて頭の良い人員が足りていないことを再確認した私であった。
以前アドルが言っていた深刻な問題というのは、どうやら本当に切迫した課題であったらしい。
これはまずいわね……。
「ちょっといいかしら?」
隊長達3人の会話もすでに昔懐かしの思い出話へと向かい始めているところで私は声を上げた。
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