幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

文字の大きさ
31 / 91

第25話 認められた魔王妃

しおりを挟む


「お前も俺に力を貸してくれ」

 結論からいくと、私メルヴィナは魔王に努力を認められたようである。
 1か月前に軽くあしらわれた時に感じた憎たらしさを、彼からは露ほども感じなかった。
 横に立つアリシアにも「アリシアも俺たち魔王軍に力を貸してくれないか?」と丁寧に頼む魔王。
 なんだか私に頼むより少し丁寧じゃないかしら?
 しかも名前で呼んでるし。
 私に対しては「お前」呼びなところが少し気になるけども、私の優秀なメイドの力量も認められて嬉しく思うのだった。


----


 深刻な人員不足に悩む魔王達は、さっそく私とアリシアを「定例会議」のメンバーに加える。
 定例会議は、毎日行われる短い報告会のようなものであった。
 謁見の間の玉座付近で行われる会議は、なんだか少しいつもと雰囲気が違う。
 私とアリシアは、定例会議に緊張した空気を感じるのだった。

「それでは、定例会議を始めます」

 司会進行役として立ち上がったアドルが、テーブルの上に広げた資料を見渡しながら言う。
 謁見の間に設置された大きなテーブルの周りには魔王軍の幹部たちが座っていた。
 第1部隊から第3部隊までの隊長、執事長の魔物やメイド長の魔物、その他各部署の代表が集まっている。
 その中には料理長のオーキンスや私の屋敷を管理しているラビアンローズなんかもいた。
 各部署の代表ではない面子としては、第1部隊の魔物が数名と私の家臣であるアリシアとガウェインが座っている。

 アドルが開始を宣言した定例会は、日常的な業務連絡を淡々と報告していく。
 魔物たちからは各部署で起きている大小の問題や、魔王軍全体に関する提案など色々と出てきた。
 そして、ひとしきり平和な報告が終わったところでいよいよ緊張した空気が漂い始める。

「邪神教に関する調査なのですが、この一か月であまり有益な情報は得られておりません」

 暗い表情で報告するのは第3部隊隊長の土塊スターチアである。
 私よりも少し背の高い、青色の髪をしたお人形さんは成果をあげられていないことを申し訳なさそうに語った。
 以前アドルが言っていたように、諜報部隊といえども必要な情報の取捨選択がうまくできていないようである。
 スターチアが得た情報もほとんどは自身で調査したものであるという。

「むう、やはり諜報活動というのはむずかしいのだな……」

 彼女の報告を受けて唸るのは第1部隊隊長の戦神シグマであった。
 2mを超える大柄な体付きの虎の獣人であるシグマは、魔王軍の誇る「武力」の最高峰である。
 彼は先代の大戦時から魔王軍に属する古株でもあるのだが、如何せん頭が良くなかった。
 というより、戦闘に関すること以外はからきしなのである。

「いやいや、あんたや他の諜報部隊の奴らの頭がポンコツなだけよ」

 シグマの横に座っている青白い肌の吸血鬼の女が、手をヒラヒラと動かしながら呆れたように零す。
 彼女は以前アドルの話に出てきた「第一部隊の吸血姫ヴァネッサ」である。
 ヴァネッサもシグマと同様に前回の大戦経験者であるらしい。
 桃色の長髪がエッチな大人のお姉さんといった容貌のヴァネッサは、魔王軍の知能レベルに文句をつけていた。
 「グレイナル山脈に生えてるおいしそうなキノコ」の情報とか今はいらんでしょと半笑いで言うヴァネッサ。
 ちなみに、この情報はビッケが拾ってきたらしい。

「しかしな、お主のように頭のキレる魔物なんてそうそういないぞ?」

 机を叩きながら笑ってるヴァネッサに対して意見を述べるのは「第2部隊隊長の竜人ドレイク」であった。
 漆黒の鱗で覆われた竜人のドレイクは、シグマと同様に戦闘に特化した魔物であるらしい。

「お主的にまともに諜報できるやつは魔王軍に何人おる?」

 ドレイクがヴァネッサに問いかける。
 それに対してヴァネッサは「魔王様とアドラメレク宰相、第二部隊の人狼ロキ、あとはスタチーといったところね」と答えた。
 スタチーとは第3部隊隊長のスターチアのことである。
 スターチアもドレイクやヴァネッサとは旧知の仲であるらしく、先代魔王の時代からの家臣であるという。

 会議の内容から、諜報活動ができる程度に強くて頭の良い人員が足りていないことを再確認した私であった。
 以前アドルが言っていた深刻な問題というのは、どうやら本当に切迫した課題であったらしい。
 これはまずいわね……。

「ちょっといいかしら?」

 隊長達3人の会話もすでに昔懐かしの思い出話へと向かい始めているところで私は声を上げた。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来
恋愛
ルーシュ・サウザント・ドラゴニアは公爵家の第8子だった。 武で名をはせたドラゴニア家には上に7人の姉。 待望の男児が生まれなかったドラゴニア公爵はルーシュを男児として育てる。 男として育てられたルーシュは剣と魔法の才能を発揮し12歳にして国家聖騎士団の一員となり功績を積むが、父より届いた手紙で全てを失う。 『待望の男児が生まれたから明日から女として生きろ』 こうしてルーシュは神殿仕えの身となって聖女の侍女となった。 ウザい聖女に絡まれながらもルーシュは今日も侍女としても務めを果たす。 侍女として働く一方で魔獣の王都侵入を防いだり、曲者の親友が家出してきたせいで何故か大帝国の王子に見初められたりと第2の人生は波乱万丈だった。 ※聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~とリンクしています。 ※ちょっぴり題名変えました。  カテゴリ【恋愛】に変えました。  ファンタジーだけど恋愛が中心になってきてしまったので(;^ω^)

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。 でも、なんだか周りの人間がおかしい。 どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。 これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

処理中です...