幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第26話 新・諜報部隊の問題点

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 魔王を含めた会議に参加する面々がこちらに注目した。
 吸血姫ヴァネッサも「あら、魔王妃様も何かご提案がありまして?」と興味深々でこちらを見つめる。
 立っても尚小さい私を全員が注視する中、私は「諜報部隊」の編制について話し始めた。
 諜報部隊とは、邪神教の魔物たちに関する情報を集めるための組織である。
 自信ありげにテーブル越しに意見を言う私。

「諜報部隊はすでに第3部隊にある。お前はいったい何を聞いていたんだ?」

 既に第3部隊に諜報部隊があるだろと呆れた様子で私に言う魔王。
 他の魔物たちやアリシアでさえ「お嬢様……」と哀れんだ目つきでこちらをうかがっていた。
 だが、そんなことは私だってもちろんわかっている。
 ここで提案する「諜報部隊」は既存のものとは大きく違うのであった。

「違うわ、私の言う諜報部隊は「4人一組」の小隊のことよ」

 私は新しい部隊の在り方について提案するのである。
 4人一組の部隊編成という情報を聞いたアドルが「しかし、現状ですでに4人も隊員がいないのでは?」と訝しげに意見を言った。
 魔王や他の魔物たちからも「魔王妃様何言ってるの?」みたいな雰囲気が謁見の間に流れる。
 いや、私だって流石にそれぐらいは分かるってば。

「さっきあなた達の言っていた人員不足っていうのは、戦闘もできて諜報もできるスーパーマンのことよね?」

 私は微妙な顔つきでこちらを見てくる魔物たちに説明を続ける。
 先ほどの議論で問題となっていたのは、「戦えて」「頭の良い」魔物がいないということであった。
 だが、実際問題その二つの能力が一人に備わっている必要があるのだろうか?
 私が言いたいのはそこなのである。

「頭が良いけど戦闘はこなせない魔物をリーダーにして、残り3人は武闘派で固めるってわけよ」

 つまり、作戦の指示係を別に用意するというわけだ。
 シンプルな手段を提案した私に対して戦神シグマや竜人ドレイクは「おお!それはいいかもしれない!」と沸き立つ。
 だが、吸血姫ヴァネッサや土塊スターチアのように「頭の良い」魔物たちは難色を示した。
 アリシアやガウェインは「単純ですけど、たしかにこれなら解決できるかもしれないですね」と納得している。
 しかし、二人の家臣はそれに加えて「でも、これくらいのことを思いつかないはずもないですよね……」とヴァネッサ達の方を見ていた。

「魔王妃様、それくらいのことは私たちも考えましたわ」

 やはりヴァネッサが私の意見に対して問題点を指摘してくる。
 彼女が言うには、魔物たちではその作戦が成立しないというのであった。
 基本的に魔物たちは「自分より強い魔物」に従う傾向があるという。
 これに関しては人間にも似たようなことが言えるが、魔物の場合特に顕著であるらしい。
 同じ軍隊の魔物同士であるならば、多少は融通が利くらしいが「文官」に戦場で命令されるようなことは快く思わないという。
 その前提があるからこそ、文官や執事の中にいる「頭の良い」魔物を情報収集に使うことはありえないのだった。

 ヴァネッサやスターチアも可能性としては考えていたらしい作戦であったが、会場の意見としては「ダメそう」というものであった。
 豪奢の王様席で頬杖をつく魔王も「なんとかならんものか……」と悩まし気につぶやいている。
 その他の魔物たちも、「今日も建設的な意見は出ないで終わりか」と少し暗い雰囲気であった。
 アリシアやガウェインも「お嬢様……」とやるせない表情を見せていたが、私は一人ニコニコと楽しそうにしている。
 近くに座りその様子を見ていたオーキンスは「魔王妃様のこの表情は……」となにやら察しているようであった。

 そう、この一か月勉強していた私はヴァネッサが語った「魔族の性質」など織り込み済みであったのである。
 つまり、この展開はすでに計算済みなのだった。
 勢いよくテーブルをバンと叩いて立ち上がる小さな私に、ほかの魔物たちは驚いたようにピクリとする。
 会議もそろそろ終わりにしようと考えていたアドルが「メルヴィナ様?」と困惑した様子でこちらを見た。

「ねえ、その魔族のプライドってやつは「隊長さん」でも同じなのかしら?」

 黒髪の美幼女である私は、悪戯っぽく右手の人差し指を口元に当ててニヤニヤと戦神シグマのほうを見る。
 私に指名されたシグマと、その様子を見ていた周囲の魔物たちは意味不明な質問に困惑するのだった。
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