幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第45話 追い込まれる者たち

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 ワタアメがウサギの魔物の攻撃を躱すことで気を引いている時、私は敵の気を引く手段を考えていた。
 ワタアメの様にあの岩攻撃をたやすく避けることなど私にはできないので、何か他の手段を見つけるしかない。

「なにか……あるはずよ……」

 絶体絶命の危機を乗り越える手段が何かあるはずだと、恐怖で平常心を保てているか怪しい頭を働かす。
 私は今までの人生の中で培った知識と経験を総動員して、なんとかこの場を切り抜けられないか考えるがどれもうまくいきそうになかった。
 というか、私の知識は純粋な「暴力」の前では無力なのだと思い知らされる。
 結局は「力」が無い私はシグマやガウェインに守られないと何もできないのだと痛感するのだった。

「あらあら?こっちのワタアメちゃんはもうそろそろ苦しくなってきたのかしら?」

 ニヤニヤと余裕たっぷりに笑いながら楽しそうにワタアメを追い込んでいた。
 対するワタアメは、だんだんと疲れてきたのか動きが悪くなっている。
 このままではガウェインの様に岩か氷に貫かれるのも時間の問題であった。
 私はその様子を見て歯噛みする。
 自分に力があれば……・。
 そう思わずにはいられなかった。
 魔王ならこんな時にあの「強大な魔力」でこのウサギを圧倒できるのかしら。
 強大な魔力……。

「ん?強大な魔力なら私にも……」

 そこまで考えた私は、魔王城に誘拐された初日の事を思い出す。
 アドルに連れられて謁見の魔で魔王と初めて対峙したとき、私は全身から邪悪なオーラを醸し出して魔物たちをビビらせたはずであった。
 ならば、その力を今ここで開放すればもしかするとこのウサギを威嚇できるかもしれない。
 攻撃手段はないので倒すことは叶わないが、シグマたちが来るまでの時間は稼げるかもしれないと私は考えた。
 彼らが到着すればなんとかなる、そう思うと「魔力」による威嚇は起死回生の一手に成りうるかもしれない。

「魔力感知と同じ要領で、体内の魔力を感じ取れば……」

 私はぶっつけ本番の見様見真似で体内の魔力を全身から放出していく。
 ぐっと力を込めた私の身体からはモヤモヤとした霧のようなオーラが徐々に溢れていった。
 それを見たウサギの魔物はピクリと耳を動かしてこちらを見る。
 一瞬ワタアメへの攻撃が止んだあたり、私の方へ関心を寄せたのだろう。
 しかし、そんな彼女は先ほどよりもいやらしい表情で笑みを浮かべてこちらを見ていた。

「あれれ?もしかして魔王妃様ったら、その程度の魔力で私と勝負しようとしてるのかしらね?」

 そんな魔力じゃ話にならないと口に手を当ててクスクス笑うウサギに、私は絶望感を抱く。
 やはり、あの時のような強大な魔力は体から溢れてはこなかった。
 これでは、脅しにすらならないと私自身も自覚させられる。

「もしかして、お仲間の虎と猫の到着を待ってるのかしら?あれれ?当たり?」

 思いついたように目を大きく開けてそういうウサギに、私は全身にゾクッと鳥肌が立つ。
 私たちの最後の手が敵にバレていたとしたら、そう思うとだんだんと地に立つ脚の力が抜けていくのを感じた。
 たしかにシグマたちの到着が遅すぎる。
 当初の予定である1分はおろか、もうすでに私たちが接敵してから10分は過ぎているのだ。

「今頃、魔法陣を探しに行った虎と猫にも私と同じ「四天王」の二人がお相手してるのよね」

 口に指をあてて呑気にそう言うウサギの魔物であった。
 彼女の口からでた「四天王」という言葉には私も聞き覚えがある。
 たしか大戦時代の事について書いてあった本によれば、邪神教のトップであるフェイリスが最も信頼する部下の4人であるらしい。
 つまり、私が今対峙しているこの化け物はアドルやシグマ、ドレイクやスターチアといった「隊長格」の魔物であるというわけだ。

「通りでガウェインが手も足も出ないわけね……」

 私と会話したり、ワタアメを殺さない程度にいたぶる余裕があったのも「増援が来ない」とウサギは確信していたからなのであった。
 そうでもなければ、出会い頭にいきなり一方的に殺されていたはずである。
 邪神教の四天王の一角である彼女にはそれができるだけの実力があったのだから。
 つまり、彼女はこの「狩り」を楽しんでいるということになる。

「でも、お遊びもそろそろ終わりにしようかしらね。そこにいる男を殺して、魔王妃様も殺して差し上げましょうね」

 急に真顔になったウサギは「ワタアメちゃんは逃げてもいいわよ?」と情けの言葉を口にしながら、コツコツと一歩ずつ地に臥すガウェインの方へと進むのだった。
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