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第80話 アルテミシアとの対話
しおりを挟む私の体内に施されていた「制御魔方陣」の一部解除に成功した一同。
というわけで私たちはついに、古の魔女アルテミシアとの対話を試みることになった。
とはいえ、いきなり私が話しかけるのは怖いという意見が取り入れられ、まずはラティスが反応を伺うという形になる。
「それじゃあ、話しかけてみるよ魔王妃様」
今も尚私の手を握っているラティスがそう告げる。
これより先、何かミスがあってアルテミシアの機嫌を損ねると何が起こるか分からない。
当事者の私はもちろんのこと、周囲でそれを見守るロキやオーキンス達もゴクリと息を飲む。
もし、アルテミシアが暴走したら私はどうなるのかしらと思うと、知らず足が小さく震えるのだった。
「あーあー、聞こえる?」
緊張感漂うこの場にはそぐわない、ラティスの軽い調子の声掛けがあたりに響く。
それを合図として、私達は「いよいよ対話が始まったのか……」と更に緊張感を高めるのだった。
しかし、そんな心中とは裏腹にラティスは軽快な様子で雑談に興じているように見える。
もしかして、アルテミシアって結構良いやつだったりするのかしら?
というよりも、この軍医がコミュニケーション強者すぎるだけかもしれないわね……。
----
それからしばらく、ラティスは和気藹々とした様子でアルテミシアと対話し続けていた。
待ち続けること10分程度、一同は黙ったままその場に立ち尽くしている。
やはり、頑張って雰囲気を盛り上げているというより、普通に楽しんで喋っているだけだこれ。
「そうそう!それでさあ、魔王妃様ったら自分で調査に行っちゃうんだもん、信じられないよね~」
楽しそうに喋っているラティスを見ていると、なんだか生前に長電話に興じていた母親の事を思い出す。
というか、完全に無限に雑談するオバちゃんのそれである。
それに、きっとこれ私の悪口で盛り上がってる感じよね……。
こういった話題の種々は万国共通なのかもしれない。
「うん、それじゃあ魔王妃様に代わるね~」
ラティスは漸く話に一区切りつけたようであり、そんな彼の対応に親戚との電話のようななつかしさを感じる。
そして、楽しそうに会話していたラティスは「魔王妃様、アルテミシアと対話してごらん」と私にパスしてきた。
突然そう告げられ、一瞬パニック状態になる私。
そもそも、対話しろといわれてもやり方が分からない。
というか、この流れ二回目よね?
「とりあえず、話しかけてみれば大丈夫だよ多分」
気楽に行きなよと私の手をにぎにぎしているラティス。
傍で見ていたオーキンスも「ラティスがこの調子なら、たぶんアルテミシアは昔のままだから大丈夫ですよ」と安心した様子で言う。
たしかに、いまのやり取りを見ていた限りでは安全そうではある。
とはいえ、以前の宿主である前魔王妃メルヴィナが初めてアルテミシアを解放する際には一悶着あったと聞いていた。
なので、私達一同はそのことに関して心配していたのである。
でも、彼らが大丈夫というなら、きっと大丈夫なのだろう。
私がビビってても進まないしね……。
「じゃ、じゃあいくわよ?」
肩書だけの小心者魔王妃である私は、周囲に確認を取ってアルテミシアに話しかけることにした。
調査任務に赴いたりする割には、変なところでチキンな私なのである。
「ア、アルミテっ……っ……!!」
そんな私は緊張して、舌足らずの幼女の様に大事なところで噛んだ。
これは、一発目から関係を悪くしてしまうかと焦る私。
しかし、アルテミシアの名前を噛んでしまったわけだが、帰ってきた反応は悪くなかった。
というよりも、むしろ魔女の私に対する好感度が高すぎて少し引いている。
「やだぁ!!メルちゃんってば可愛いわ!!」
美しく、鈴の様に綺麗な声を張って私を褒めるアルテミシア。
そしてどうやら、私と直接対話する場合には周囲の人にも聞こえるようにできるらしい。
つまり、私が人間スピーカーのようになっている状態である。
なんというか、魔法って色々便利だったり不便だったりするのねと私は思うのだった。
「うお、アルテミシアの声か!どうやら相変わらず元気みたいだな」
大戦期のアルテミシアの様子を知っているオーキンスが声をあげる。
オーキンスの隣に立っていたドレイクも「魔力も衰えていないようだな、アルテミシア殿」と楽しそうに笑っていた。
ドレイクの言うようにアルテミシアが感情むき出しで「メルちゃんかわいい~」と騒ぐたびに、周囲に膨大な魔力渦が発生しているのである。
それを見ていたロキは「本当にこれ大丈夫なんすかねえ……」と半信半疑の様子でビビっていた。
というか、メルちゃんってわたしのことよね?
なんかこの前と様子が違いすぎないかしら?
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