幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第79話 高等テクニック

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 私の両手を握り、慎重に魔力操作を行うラティス。
 なにやら、わたしの体内に魔力を介してアクセスすることでアルテミシアとの対話を試みるということらしい。
 簡単そうにやっているラティスであるが、少しのミスも許されない超高難易度な施術であることは私にもわかる。
 魔力感知ですら難しいと感じた私にとっては、他人の体内の情報を魔力で解析して、更にはアルテミシアと対話するだなんて無茶苦茶なことだと思った。

「おっ、この制御魔方陣が邪魔してるのかな?」

 作業中に無言で集中していたラティスが、何かを見つけたらしく声をあげる。
 彼の口ぶりから察するに、かつて私が名医ゲンジに埋め込まれた「制御魔方陣」の解析中らしい。
 やはり、この魔方陣がアルテミシアとの交信に干渉していたということみたいである。
 とはいえ、これが無ければ生後間もない私が生きながらえていたのか怪しいので仕方のないことだった。

「どうですかラティさん、なんとかなりそうっすかねぇ?」

 しゃがみ込むラティスの隣で同じように屈んで様子を伺うロキが言う。
 彼も魔王軍の中では高知能な魔物に分類されるだけあって、ラティスがやっていることの難解さは理解している。
 そんなロキが施術の行く末を案じるのは当然であった。
 事実、ロキは「俺がやってたら、多分姫さんは既に3回は死んでるなぁ……」とラティスの技術力の高さに感心している。
 この時の私は「魔法って便利なのねえ」と呑気なことを考えているのだった。


----

 それからしばらく、ラティスは私の手を握ったまま魔力操作を続けるのだった。
 私が握る、ラティスの細く白い手はじんわりと汗ばんでいる。
 おそらく、大戦を生き抜いた天才軍医にとってもなかなかに難解な施術であるのだろう。
 関わりを持ってから日が浅いラティスではあるが、これほどまで真剣な顔つきの彼を見たのは初めてだった。

「ふぅ、やっとプロテクトが剥がれたよ」

 そう言って肩の力を抜いて一呼吸置くラティス。
 その様子を見ていたロキやオーキンス達も「さすがはラティさんだぜ!」とガッツポーズで喜んでいる。
 私はそんなありがちなシチュエーションを見ながら「これって失敗フラグじゃないかしら?」とメタっぽいことを考えていた。
 
「魔王妃様にかけられていた制御魔方陣を解除したんだけど、これをかけた人間はかなり優秀な魔術師みたいだね」

 さらっとすごいことを言うラティスに私は驚く。
 彼はゲンジが埋め込んだ「制御魔方陣」を削除して、アルテミシアの魔力を自由に開放できるようにセットしなおしたという。
 ラティスが言うには、この術式を埋め込んだゲンジは私の命を脅かさない程度に魔力の流れを制限していたらしい。
 なので、成長も阻害されていたし外部の魔力感知も難しかったのだろうということだった。

「とはいえ、「成長阻害」を消したら命に関わるみたいだから、これはつけたままにしといたよ」

 術式を刻印する際に一緒に刻まれる「刻印者メモ」によると、私の成長ストッパーを外すと命にかかわるとのことであった。
 それを聞いた私は「そんな……」と悲嘆にくれる。
 制御魔方陣が解除されたと聞いたときに一瞬だけ「これで背が伸びる……!!」と心の中で勝利を確信した私は、ラティスの補足によって再び敗北の苦さを味わうのだった。
 そんな私の様子を見ていた一同は「まあ、そんな気はしていた」といった感じで、話にオチがついたことに満足しているようである。

「というわけで、いよいよアルテミシアと問題なく対話できるようになったわけだけど……」

 ラティスが「どうする?」といった様子で私や周囲で見守るロキ達に問う。
 それを聞いていた私やロキは「どうするっていっても、対話するしかないんでしょ?」とラティスにその先を促した。

 
「いやね、アルテミシアの機嫌もよく分かっていないし、まずは俺が話した方がいいかなって思ってさ」


 アルテミシアとの対話に内心ビビりまくりであった私は、ラティスの申し出に猛烈に首を縦に振るのだった。
 
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