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しおりを挟む「イルフェルトさん!あれ、なんですか?」
「おい!それはトレントだ!近付くな!」
「え?」
やけに動く木だなぁ、と思っていたらどうやら魔物だったようです。……仕方ないじゃないですか。私、滅多に外出して貰えなかったので魔物とか知らないのですよ。
「……おい、お前は勝手に動き回るな」
「あ、あそこ何かいますよ!」
「話を聞け!」
イルフェルトさんは怒りながらも、私の指した方、どうやらゴブリンらしかったのですが、すぐに倒してしまいました。騎士って凄いですね。
「はぁ……。これでは、今日中に抜ける必要がある」
イルフェルトさんは、そう言うと、私を抱き上げました。……ん?何故、私は抱き上げられて?と思っていたら、イルフェルトさんはそのまま走り出しました。
「ふぇっ?ま、待ってください!」
「喋るな。舌を噛むぞ」
……まぁ、結果を言えば、それから少しして森を抜けることが出来ました。けど、いきなりアレはないと思うのですよ。
「イルフェルトさんって、騎士団の人、なんですよね?」
「……あぁ」
「なのに、一人なんですか?」
「隊長だからな」
ええと、それは理由になっているのです?いや、まあいいですけど。
「……お前は、どうするつもりだ。住むところもないのだろう」
「そうですねー。どこかで住み込みの仕事でも探してみようかと!」
「……しばらくは、私の屋敷で暮らせばいい」
その提案に、私は思わず固まりました。ですが、何故。
「何故、そこまでしてくれるのですか。私、多分相当の不審者だと思うのですよ。アクアポート王国だって国外追放になり、名前だって明かせないのですから」
「……子どもを放置しておけるわけがないだろう」
「む、私これでも明日で18歳になるんですからね!」
私は確かに、少し背が低いですが。それでもそんな子どもと思われていただなんて思わないのですよ。
「……済まない」
「……イルフェルトさんって、いい人ですよね。私、イルフェルトさんなら信用できそうです!」
「……そう簡単に信用するものではないだろう」
私は多分、この人になら名前を貰ってもいいかも知れない。そんなふうに思えたのです。顔は……。少し怖いですけど。
「私、イルフェルトさんに助けていただいて良かったです」
イルフェルトさんは、私の言葉に困ったような顔をする。ですが、イルフェルトさんは私が聖女と知れば、どんな顔をするんでしょう。それが、少しだけ怖いと思うのは、役立たずと言われたから、なのでしょうか。
「お前は、変だな」
「変ってなんですか!」
「気にするな」
なんとなくですが、イルフェルトさんは最初よりも表情が穏やかになったような気がします。
*
そして、イルフェルトさんに連れられて着いた先は貴族の御屋敷でした。……私、本当にここにいて良いのですかね?場違いな気がしてきたのですよ。
「おかえりなさいませ、イルフェルト様。おや、そちらの方は……」
「迷子のようなものだ。しばらく面倒を見ることになった」
「おやおや、それはそれは……」
執事らしい人に、ジッと見つめられます。……なんでしょうね?やはり、私のことが気に入らないのでしょうか。
「えっと、よろしくお願いします?」
私が挨拶をすると、執事の人は笑みを浮かべました。
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