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第3章 幼女、王都へ行く
幼女、学院へ行く
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翌日、目の下にうっすら隈を作ったシエルと共に私は学院へと向かった。
かなり遅くまで手記とにらみ合っていたらしい。
それなりの成果はあったようで、解読まであと一歩だと言っていた。
リスターニャ学院の校舎は王都の南側にある。
そして城壁の外へ出て少し行ったところの森も学院が所有するもので、生徒たちの訓練場になっているそうだ。
「んあっ、こんなところにも銅像が」
校門の前に、堂々と私の銅像がそびえ立っている。
ガルーンを天へと突き上げ、その切っ先を見つめている凛々しい姿をかたどったものだ。
「そりゃ、リスターニャ様のお名前を冠した学院だもの。銅像があるのはここだけじゃないわ」
深い青色の制服に身を包んだ生徒たちとすれ違いながら、私たちは校舎の中へと入った。
シエルは何度もここへ来ているようで、校舎の中をすいすいと進んでいく。
私の方も、通っていた時とあまり構造は変わっていないので迷うことはない。
“ここから先、研究棟”という見慣れない表示はあるが。
「ここは教育機関であると共に、図書館と並んで学者たちの集まる研究機関にもなっているの。まずはこの研究棟へ行くわ」
「図書館とここでは、何か研究内容に違いがあるの?」
「図書館は歴史の研究がメインで、こちらは新しいスキルの開発などをしているの。過去を知ろうとする学者と未来を作ろうとする学者。どちらが欠けても研究は上手くいかないから、柔軟に協力し合いながらやっているわ」
新しいものを生み出すには、今まで築き上げられてきたものを参考にして進化させていくのが基本だ。
スキルだって0から生み出したわけじゃない。
他種族の能力から生まれている。
「ここよ。所長に話をつけてくるわ。学院長か所長の許可があれば、ある程度は自由に学院内を歩き回れるから」
シエルだけが部屋の中に入っていく。
私はドアの前で待つことにした。
時々、研究者らしき大人や生徒たちが通りかかっては、私のことを不思議そうな目で見ていく。
明らかに場違いなのは私も自覚しているので、目が合ったらにっこり笑ってやり過ごした。
「お待たせー。許可証をもらったから、好きなように動けるわよ」
シエルは首から1枚の紙を下げている。
これが許可証か。
「それでメリュン様の手記が隠されているかもしれない場所ってどこなの?」
「彼女にとって……というより、大賢者と七賢人にとって思い出の場所だよ。食堂に行こうか」
「しょ、食堂?そんな場所に本当に手記が?」
「あくまでも可能性だけどね」
食堂があったのは、今いる校舎の3階。
近くにある階段を上がり、私とシエルは食堂へと向かった。
かなり遅くまで手記とにらみ合っていたらしい。
それなりの成果はあったようで、解読まであと一歩だと言っていた。
リスターニャ学院の校舎は王都の南側にある。
そして城壁の外へ出て少し行ったところの森も学院が所有するもので、生徒たちの訓練場になっているそうだ。
「んあっ、こんなところにも銅像が」
校門の前に、堂々と私の銅像がそびえ立っている。
ガルーンを天へと突き上げ、その切っ先を見つめている凛々しい姿をかたどったものだ。
「そりゃ、リスターニャ様のお名前を冠した学院だもの。銅像があるのはここだけじゃないわ」
深い青色の制服に身を包んだ生徒たちとすれ違いながら、私たちは校舎の中へと入った。
シエルは何度もここへ来ているようで、校舎の中をすいすいと進んでいく。
私の方も、通っていた時とあまり構造は変わっていないので迷うことはない。
“ここから先、研究棟”という見慣れない表示はあるが。
「ここは教育機関であると共に、図書館と並んで学者たちの集まる研究機関にもなっているの。まずはこの研究棟へ行くわ」
「図書館とここでは、何か研究内容に違いがあるの?」
「図書館は歴史の研究がメインで、こちらは新しいスキルの開発などをしているの。過去を知ろうとする学者と未来を作ろうとする学者。どちらが欠けても研究は上手くいかないから、柔軟に協力し合いながらやっているわ」
新しいものを生み出すには、今まで築き上げられてきたものを参考にして進化させていくのが基本だ。
スキルだって0から生み出したわけじゃない。
他種族の能力から生まれている。
「ここよ。所長に話をつけてくるわ。学院長か所長の許可があれば、ある程度は自由に学院内を歩き回れるから」
シエルだけが部屋の中に入っていく。
私はドアの前で待つことにした。
時々、研究者らしき大人や生徒たちが通りかかっては、私のことを不思議そうな目で見ていく。
明らかに場違いなのは私も自覚しているので、目が合ったらにっこり笑ってやり過ごした。
「お待たせー。許可証をもらったから、好きなように動けるわよ」
シエルは首から1枚の紙を下げている。
これが許可証か。
「それでメリュン様の手記が隠されているかもしれない場所ってどこなの?」
「彼女にとって……というより、大賢者と七賢人にとって思い出の場所だよ。食堂に行こうか」
「しょ、食堂?そんな場所に本当に手記が?」
「あくまでも可能性だけどね」
食堂があったのは、今いる校舎の3階。
近くにある階段を上がり、私とシエルは食堂へと向かった。
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