前世大賢者のつよかわ幼女、最強ちびっこ冒険者になる!

メルメア

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第3章 幼女、王都へ行く

幼女、人形と対峙する

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 湧いて出るそこそこの強さのモンスターたちを倒し、私たちはダンジョンの奥の奥へと進んだ。
 そしてやってきた最奥と思われる場所。
 どっしり構える石の扉を、私は慎重に押し開けた。
 直ちに攻撃が飛んでくる気配はなし。
 私が部屋の中に入ると、リリスたちも後に続いた。

「ここが最終目的地?」

 リリスは拍子抜けした様子で部屋を見渡す。
 強力なモンスター、いわゆるボスの姿はおろか、これまでに登場したゴーレムなどの姿もない。
 かといって、転生のことが記されていそうな資料もない。
 部屋にあるのは7つの銅像だけだ。
『賢者たちの広場』にあったのと同じ助手たちの銅像。
 なぜか私のものはない。

「ミリア、これは一体……」

 首を傾げるイリナに、私は部屋を注意深く観察しながら答えた。

「多分、何かギミックがあるはず……」

 そう呟いた瞬間、部屋にある七賢人たちの銅像が一斉に光を放つ。
 赤橙黄緑青藍紫、1人につき1色で計7色。
 虹色の光が、部屋の中央へと集まった。
 そこで光は混ざり合い、真っ白な光となって天井へと高く突き上がる。
 あまりの眩さに、私たちはそろって後ずさりした。
 そして十数秒後、ふいに光が収まったかと思うと銅像に亀裂が走る。
 ばらばらと金属が崩れ去ったあとに、7人の人間が現われた。
 彼女らは自分の意思で台座を降り、私たち3人と向かい合う。

「嘘……」

「これ、相当まずくないかな?」

 イリナとリリスが顔をしかめた。
 かくいう私も、あぁーまじかぁーと変な汗をかいている。
 銅像の中から現れた7人、七賢人たちだ。
 アイツらが生きているわけはないので、もちろん偽物だけど。
 厄介なのは、これがアサシンメアのようなモンスターではなく、意思を持って動く人形だということ。
 おそらく作ったのはニノだろうね。

 ニノの人形は、一見すると本物と見間違うくらいに精巧だ。
 命があるわけではないから、感情もないし喋れもしない。
 しかしモデルを忠実に再現していて、モデルにできることはたいてい人形にもできる。
 言ってみれば、ほぼ完璧な複製コピーなのだ。

 そしてどうやらこの人形たち、7人がかりで私たち3人と戦うつもりらしい。
 手記に仕掛けられた謎の最後の番人というところだろう。
 ある程度の敵は想定していたが、まさか助手たち全員と戦うことになるとは思わなかった。
 シエルを連れて来なかった判断は正解だったみたい。
 彼女を庇いながらこの相手と戦うのはほぼ不可能だ。

「戦うしかないっぽいね」

 リリスがぐるぐると肩を回す。
 イリナも剣に手をかけ、すでに戦闘態勢だ。

「人間に見えても人形だから。思いっきりやっていいよ。イリナはルーガティウスをお願い」

「ルーガティウス様を?」

「うん。先祖に自分の力を見せるチャンスだよ!」

 イリナの今の実力を考えると、他の七賢人を相手にするにはやや苦しい。
 ただ戦闘能力が低くポンコツなルーガティウスなら、倒せる可能性は十二分にあると私は踏んだ。
 あとは私とリリスが他の6人を引きつけ倒せばいい。簡単な話ではないけど。
 それにしても、人形まで整った顔になっているのはルーガティウスの注文なのかな……。

「……!」

 何の言葉も発さず、ユーゲルが先陣を切って私へと突っ込んできた。
 私の家の地下で会った時と同じように、懐から短剣を取り出して斬りかかる。
 今回は身代わりを立てている余裕もない。
 私はガルーンを取り出し、その攻撃を払いのけた。

「その挑戦状、間違いなく受け取ったよ」

 私がユーゲルに斬りかかる。
 他の七賢人たちも一斉に動き出す。
 リリスも少し距離を取って攻撃態勢に入る。
 イリナはルーガティウスへとまっしぐらに低姿勢で突進する。

 伝説の七賢人 vs 大賢者&ダークエルフの長の生まれ変わりと七賢人が1人の子孫か。
 
 ……そういえばこれ、王都旅行だったよね?
 イリナの休暇についてきただけだったはずだよね?

 全然、休めてない気がするんだけど。
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