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3章 龍王国

第94話 王都到着

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「はー、ここが王都ですか......すごく綺麗な街並みですね。」

ナレアさんと一緒に王都を目指して二週間、俺たちは龍王国王都に辿り着いた。
俺達はこの二週間の旅路の間、三回魔物の群れと遭遇している。
そのどれもがシャル達から逃げず、複数の種類の魔物で構成される群れだ。
何となくではあるが遭遇した全ての魔物から自分の意思のようなものを感じることが出来なかった。
何というか、機械的に襲い掛かってくるというか......近くにいるものに向かって攻撃を仕掛けるだけというか......そんな感じだったのだ。
とりあえず、物騒な話は頭の隅に追いやって今はやっとたどり着いた王都の街並みを楽しむとしよう。
王都は今まで見たどの街よりも広く非常に清潔感あふれる街並みだ。
街の南門から非常に大きな通りが街を貫くように奥へと続いている。
片道三車線くらいありそうだ......車道じゃないけど......でも馬車も通るからぎり車道?
まぁ歩道と別れているわけじゃないから......いや、それはどうでもいい。

「相変わらず町全体が真面目な感じなのじゃ。」

「真面目な街......まぁ何となくわからないでもないですけど......。」

静謐というには違うのだが、賑わっているのに雑多な感じのしないメインストリートには何か整然とした雰囲気がある。
何が違うんだろうと辺りの店を見ていて気付いたのは、買い物をする人たちがきちんと並んでいる事と他の街であれば張りのある声で飛び交う呼び込みの声がないのだ。
後は道が広いからか通行人のざわめきが少なく感じるのかな?
ナレアさんの言う街全体が真面目というのも何となくわかるというか......そういえばレギさんが龍王国について泰然自若とかって言ってたっけ?

「どこもかしこも白いな。」

確かに白い......。

「道も建物も......遠くに見えるお城も......全部真っ白だねぇ。」

「掃除が大変そうですよね。」

「この街を初めて見た者がいう感想の第一位じゃな。」

「むぐ......。」

いや、でもこの白い街並みを見たら絶対みんな言うよね......?
あ、みんな言うから一位か......。

「発想が貧困なのじゃ。」

「......。」

こっちが本命か......。

「まぁ、ここは龍王国の王都だ。それなりに台詞には気を付けろよ。」

声を少し落としたレギさんが皆に言い含めるように告げてくる。
あぁ、龍信仰に関する話か......。
そうだった、何が信仰を否定するような発言になるか分からない。
いつも以上に言動に気を付けよう。

「分かりました。」

俺が了解の意を示すとリィリさん達も頷いた。

「それじゃぁナレアちゃんこれからどうする?」

「そうじゃな。とりあえず宿を取るのじゃ。その後到着したことを連絡せねばならぬな。」

「すぐ会いに行かないんだ?」

「うむ。連絡をしたら向こうから迎えが来るのじゃ。向こうも忙しいのでな。まぁ、そう待たされないとは思うがの。」

「そっかー。」

「ケイの方はどうするのじゃ?手紙を届ける相手は王都の方にいると聞いてはいたが王都ではないのかの?」

「うーん、正確な位置は今調べてもらっている所なのですけど。僕もとりあえず宿にいきたいですね。」

「ふむ、では妾が何時も使っている宿屋があるのでそこでいいかの?」

「えぇ、お願いします。」

宿に行ってファラから情報を貰わないといけない。
王都までの道中結局ファラに追いつくことは出来なかったからな......流石に王都では会えるよね?

「では移動するのじゃ。リィリ殿、食事は期待してよいのじゃ。」

「それは大事な事だね!」

ナレアさんとリィリさんが楽しそうに宿に向かって歩き出す。

「何かいい方法が見つかるといいな。」

レギさんが俺の横に来てぼそりと呟く。

「そうですね......ファラから話を聞けるといいんですが......。」

「こんな清潔な感じの街にもネズミはいるんだな......。」

「人が住んでいる以上餌は豊富でしょうしね......きっとこの街にもしっかりネズミネットワークは構築されているはずですよ。」

「ネットワーク?」

レギさんが顔に疑問符を浮かべている。

「あぁ、すみません。ファラの配下を使った情報取集機構です。」

「なるほど......しかし外では詳しい内容について打合せはしないほうがいいだろうな。」

殊更声を落としてレギさんは言ってくる。

「そうですね......とりあえず王都の情報を確認してから後でリィリさんと三人でお話しさせてもらえればと。」

「......ナレアには力を貸してもらわないのか?」

「うーん、色々と情報を伏せてますしね......というか、巻き込んでもいいような内容なんですかね?」

「ナレアなら喜んで力を貸してくれそうな気はするが......しかし、おいそれと話していい内容でないことは確かだな......。」

「何かとっかかりになる様な情報があればいいのですけど......相手が相手ですからね......なかなか難しいでしょうねぇ。」

何かまだ神域の位置が分からない神獣様を探すほうが何とかなる気がする......聖域に祀られている相手に会う方法って言われるとな......。
ゲームとか物語の主人公とかは運で何とかなったり物凄い案を出したりして普通無理だろってことを乗り越えられて羨ましいなぁ......。
とりあえず情報を聞いてから考えるとしますか。
何か素敵な情報を貰えることを期待しながら前を歩くリィリさんとナレアさんについて宿に向かった。



『ケイ様、御前失礼致します!』

「う、うん。ファラ?」

『はっ!』

宿屋に着き自分の部屋に入ってすぐ窓からファラが入ってきた。
ファラに会うのは数カ月ぶりな気がする。
いや、今はそれよりも......。

「念話が出来るようになったんだね?吃驚したよ。」

『はっ!より正確に集めた情報を伝えられるように習得させて頂きました!』

凄いなファラ......グルフも練習しているみたいだけどまだ出来ないのに......。

「そうなんだ......うん、ありがとう。それと道中も配下の子達に色々と情報を集めて伝えてくれてありがとう、助かったよ。」

『もったいなきお言葉......お役に立てたようで何よりです。』

ファラはその小さな体をさらに小さくして頭を下げている。

「長い事、一人で色々と情報を集めるために走り回ってくれてありがとうね。それで早速で悪いんだけど情報を聞かせてもらってもいいかな?」

『はっ!何からお話ししましょうか!?』

頭を上げたファラと目が合う。
ファラとは直接会う機会が少なくてまだどんなことを考えているかはっきりとは分からないけれど、もの凄く気合が入っているのは伝わってくる。

「応龍様の居場所と聖域について分かるかな?」

まず最初に聞きたいのはこれだろう。
ここでもし会う方法が分かれば最高なんだけど......それは望みすぎだよね。

『応龍様は聖域と呼ばれている場所におられるようです。聖域は城の後ろに聳え立つ山の事を差すようですが、聖域に入ることが出来るのは現国王と龍の巫女と呼ばれる者だけです。』

「やっぱり聖域に入れるのは限られた人だけなのか。それと神域と聖域は違うものなのかな?」

『申し訳ございません。神域と聖域の違いについてはまだ調査中です。』

「そっか......まぁ少し気になっただけだから大丈夫だよ。続けてもらっていいかな?」

『はっ!件の聖域ですが、流石に敵対行動になると思われたので聖域への侵入は果たせておりません。申し訳ありません。』

「いや、その判断でいいよ。その聖域に穏便に入る方法はありそうかな?」

『申し訳ありません、宗教的にも政治的にも重要な場所なので正面から入るのは不可能に近いかと......。』

まぁそうだよね......。

「王様と龍の巫女って言う人の事教えてもらえるかな?」

『龍王国の王は代々聖域にいる応龍様により任命されると言われていますが、実際には王が王太子を指名しています。ただ、王位継承の儀は聖域にて王と王太子、龍の巫女の三人で向かい執り行うので応龍様に任命されるというのも嘘と言うわけではありません。』

「なるほど......。」

『現在の王はハインロウ=セオ=シンエセラ。七十二代目の国王です。治世は穏やかで政治的には安定しております。』

七十二代って何年くらい龍王国は続いているんだろう?
四千年にしては少ないと思うけど......。
二千年くらい続いていたりするんじゃないかな......?

『龍の巫女は応龍様に仕える巫女とのことで、王は継承の儀の時か応龍様に呼ばれた時だけ聖域に入ることが出来るらしいのですが巫女は普段から聖域への出入りが自由に出来るそうです。』

「へぇ、巫女の人にはどこで会えるのかな?」

『普段は聖域にいるそうですが、王都にも良く来ます。私も何度か目にしておりますが、接触は難しいかもしれませんが。』

なるほど......何とか巫女の人に会って事情を説明できないかな?
ふむ......方針が少し見えて来たかな......もう少し巫女の情報を掘り下げて聞いてみたいけど......。

『巫女の名はヘネイ。龍王国の貴族の出ですが巫女になった際に家名は失っております。街に来るときは最低でも三人の騎士に守られています。』

まぁ要人であれば護衛がいるのは当然だよね......。
この辺の情報を一度皆と共有して今後の方針を考えよう。
あ、魔物の話もファラに聞いておかないといけなかったな。

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