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3章 龍王国

第97話 さて、どうしよう

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夕食後、レギさんとリィリさんが俺の部屋に来ていた。
ナレアさんには少し悪い気がするけど......まぁ仕方ないよね。
ファラはまだ戻ってきていないようだからとりあえず俺達だけで打ち合わせをしよう。

「冒険者ギルドにも魔物の群れの情報が集まっていたぞ。」

「やはり増えているんですね。」

「あぁ、今は軍だけで対応している様だが、そろそろ国からギルドに依頼が来るだろうって話だ。」

「結構被害が出ているみたいなのに随分悠長にしていますね。」

「軍にはメンツってのがあるからな......自分たちで国を守り切れませんって言うわけにはいかないだろ?」

「まぁ、それは分からないでもないですけど......人の命には代えられないと思いますが......。」

「そうだな......それでも譲れないんだろうなぁ......俺達には分からない感覚だが。」

レギさんは苦笑してリィリさんは少し憮然としている。

「ケイの方は何かわかったか?」

「魔物に関しては特に......商人や冒険者にも噂が広がっているようなので一般にも知れ渡るのは時間の問題って所みたいですね。」

「なるほどな......ナレアの方の依頼が終わったら少し魔物狩りの依頼を受けるのもいいかもな......。」

レギさんが呟くように言う。
勿論俺もリィリさんも異論はない。

「まぁ、魔物の話はナレアちゃんと一緒に話をしてもいいんじゃない?今はケイ君のお使いの方が先だよ。」

リィリさんが話題を変えるように促す。

「そうだな、すまん......とは言え、あまり有益な情報はないんだがな。」

「聖域に出入り出来る巫女って言うのがいるって聞いたよ。」

「はい、聖域に自由に出入り出来るのは龍の巫女と呼ばれる人だけだそうです。後は儀式の時のみ王様と王太子が、後は応龍様の呼び出しに応えてって感じだそうです。」

「なるほどな......。」

「龍の巫女自体は聖域に住んでいるようですけど街にも出て来るらしいので、うまく接触できれば応龍様にお会い出来そうなんですが......。」

「それも中々骨が折れそうだが、聖域に行くよりは難易度は低そうだな。」

「それなりの頻度で街に来るみたいなので何とかならないかな、と。まぁ護衛がいるそうなんで出来れば誰かから紹介してもらいたい所ですが。」

「正面から話がしたいって言っても追い払われるだけだな。しかし巫女に紹介してもらえるような知り合いはいねぇぞ......。」

「その巫女ってのはどんな人なのかな?」

「性格とかまでは分かりませんが、元龍王国の貴族の女性でヘネイさんって方らしいです。」

「うーん、貴族かぁ。」

「知り合いにはいねぇな......。」

「流石にワイアードさんに合わせて欲しいって言われても確実に断られますよね。」

俺は龍王国の端の村であった騎士を思い出していた。
確か王都に家があるって言っていたけど......普通に考えて無理だよね。

「そりゃな......国の重要人物に合わせて欲しいなんて多少恩を売っていたとしても聞いてくれるわけがねぇな。」

「冒険者ギルドで仲介してもらえないかな......?」

「龍王国では全く仕事をしていない下級冒険者だからな......上級ならまだしもな。」

リィリさんの意見にレギさんが渋い顔をする。

「こういう時は高ランクが羨ましくなるね。」

「最終手段はナレアさんの力を借りるって感じですかね......。」

その場合はナレアさんに全てをちゃんと説明しないといけないだろう。
ナレアさんとはまだ半月程の付き合いだが信頼できる人だと思う。
知り合いの方の依頼が終わったら相談してみるのもいいかもしれないな。

「ナレアに話すかどうかはケイの好きにしたらいいさ。」

「分かりました。とりあえずナレアさんの方の依頼が終わるまでは僕達だけで方法を考えたいと思います。」

「......それ聞いたらナレアちゃん拗ねそうだなー。」

「べ、別に仲間外れにしているわけでは......。」

「こういうのは相手がどう思うかだからねー。」

それはそうですけど......。

「まぁ事が事だからな、理解はしてくれるだろうよ。だが文句は甘んじて受け入れろ。」

「うんうん、ちゃんと謝らないとダメだよー。」

俺の味方はいないようだ。
まぁでも文句を言われるのは間違いなく俺だろうね......。
どうもナレアさんは俺を弄るのが好きらしい......。
そんなことを考えていたら部屋のドアがコンコンとノックされた。

「ケイ、おるかの?ナレアじゃ。」

噂をすればって本当にあるよね。
俺が立ち上がりドアを開けるとナレアさんが酒瓶を片手に立っていた。

「今大丈夫かの?依頼主に到着したことを連絡したら先ほど返事が来てのう、明日にも会いたいとのことでな。ケイ達の予定は大丈夫じゃろうか?」

「僕は問題ありませんが......とりあえず中へどうぞ。」

「むむ?夜に妾を部屋に連れ込んで何をする気じゃ?」

「そう言ったことはしませんよ......。」

「そう言った事とはどういった事じゃ?あやふやな言葉でごまかして何かいやらしい事する気ではないかの?」

そんなことを言っている割にナレアさんはニコニコしながら部屋に入ってくる。

「今はレギさん達も部屋にいますから......。」

「む?そうじゃったのか......つまらんのう。」

ナレアさんは少しだけ口をとがらせながら俺についてくる。
まぁそう広い部屋ではない。
ナレアさんも部屋に入って直ぐレギさん達に気づいたはずだ。

「邪魔するのじゃ。」

「おう。」

「ナレアちゃん、こんばんは。」

ナレアさんがテーブルに酒瓶を置いてベッドに腰掛ける。

「邪魔しておいてなんじゃが、良かったのか?打合せ中じゃったんじゃろ?」

「えぇ、大丈夫です。丁度終わった所だったので。」

「ふむ、では妾の話をさせてもらってもいいかの?」

「えぇ、お願いします。」

「先ほど依頼主から返事が来てのう、明日にでも早速会いたいそうじゃ。それとこれは手土産としてもらったのじゃ。結構いい酒じゃから話しながら呑まぬか?」

「お、悪いな。」

「じゃぁ私肴になる様なもの頼んでくるよ。」

「む、気が利かなくてすまないのじゃ。」

「いいよいいよ、ナレアちゃんは座ってて。注文したら戻ってくるから。」

そう言ってリィリさんはいそいそと部屋を出ていく。
さっきしっかり夕飯食べたんだけど......かなりの量の料理が運ばれてきそうだな。

『......ケイ様少し失礼します。』

俺の横で丸くなっていたシャルが体を起こして窓の方に近づく。
多分ファラが来たんだと思うけど......人前にあまり出たがらないから中には入って来ないだろうな。
窓に近づき外にいるであろうファラに謝っておく。
良かったら中に入って欲しいと言ったが案の定固辞された。
そうこうしているうちにリィリさんが戻ってきたので酒が配られる。

「さて、今更ではあるが今回の依頼について少し話をさせてもらいたいのじゃ。内容についてはまだ聞いておらんのじゃが、協力してくれるお主らに依頼主についての話をしてもいいと言われたのでな。」

そう言ってナレアさんは一呼吸置く。
依頼人についても秘密だったのか......これは、ナレアさんの知り合いは結構お偉いさんってことかな?

「これから話す事は内密にしてもらいたい。もし約束できないのであれば今回の件は忘れてもらいたいのじゃ。」

そう言ってナレアさんは俺達の顔を見る。

「約束します、決して他言しないと。」

「おう、俺もだ。絶対に漏らさないと誓う。」

「うん、私も。ナレアちゃんの信頼に絶対に応えるよ!」

俺達がそれぞれ誓いの言葉を告げるとナレアさんが嬉しそうに微笑む。

「三人ともありがとう。まだ短い付き合いじゃが良き知己を得られたことを嬉しく思うのじゃ。」

ナレアさんは一口酒を呑み、唇を湿らせてから話を続ける。

「明日会いに行くのは龍の巫女、ヘネイと言う者じゃ。そして依頼主はこの国で信仰されている応龍じゃ。」

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