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4章 遺跡

第147話 ゴーレム、ゴーレム、またゴーレム

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準備をしっかりと整えて開始した階段前の戦闘は、一瞬でケリがついてしまった。
三十秒も戦っていなかったのではないだろうか?
まず最初に強化を掛けたレギさんが重装タイプを吹き飛ばした。
......壁にめり込まんほどに。
すぐに追撃を仕掛けたナレアさんが頭部の魔道具をはぎ取って重装タイプを沈黙させる。
次の瞬間天井から奇襲を仕掛けたマナスが狙撃タイプに伸し掛かり一瞬で魔力を奪って狙撃タイプのゴーレムをガラクタと化し、遅れて飛び出した俺が軽装タイプの動きを抑えてリィリさんが魔道具を回収。
しっかり準備すればゴーレムの一組程度なら問題なく処理できそうだ。
この先に別のタイプがいたらまた変わってくるかもしれないけど。

「これで一階部分はゴーレムも魔道具も全部沈黙しましたね。」

「うむ、ファラ達の方はどうかの?」

『ファラ達は現在地下三階の罠を解除しています。二階は既に完了しているとのことです。』

「二階の魔道具は無力化しているようです。今は三階を処理中です。」

「二階のゴーレムは巡回が二組、階段前に一組じゃな。」

地図を見ながらナレアさんが言う。

「合流する前に処理したいですね。」

「ここみたいに広さがあれば可能かもしれないが、通路で戦うとなると時間がかかりそうだな。」

「挟まれるような位置では戦いたくないですね......。」

地下二階の通路は網目状になっていてゴーレムがお互いの状況を把握できているのであれば、確実にこちらを挟む形で援軍に来るだろう。

「階段降りてすぐの場所で待ち構える?そこなら十分に広さはあるし退路も確保できるでしょ?」

「そうだな、リィリの言うようにそこならこちらが有利に立ち回れるだろう。」

「それがいいじゃろう。じゃがレギ殿。先ほどのようにゴーレムを壁にめり込ませるのは無しじゃ。遺跡が崩落するかと思ったのじゃ。」

「......すまねぇ。あんなにふっ飛ぶとは思わなかったんだ。」

戦闘中は遺跡に被害を出さないように慎重に動くよう言われていたのに、思いっきり危険な感じにやっちゃったからな......。

「すみません。強化が強すぎたみたいですね。」

「いや、もともと相手の陣形を崩すために俺が頼んだことだ。やはりいきなり実戦に持ち込むのは駄目だな。とりあえず感覚は把握できたから次も同じ強さで頼む。」

「了解です。」

「まぁ、この遺跡は地下に作られていて相当頑丈なようじゃからな。ある程度は大丈夫じゃろうが、くれぐれも注意だけは忘れぬように頼むのじゃ。」

「おう。」

「気を付けます。」

俺とレギさんが謝る横でリィリさんがニヤニヤとしている。
恐らく後でレギさんはからかわれるのだろうね。

「では二階に降りるのじゃ。」

レギさんを先頭に階段を降りるとすぐに上の階と同じ様な広場に出る。
一階と同じくマナスが魔道具を無効化しているため真っ暗だが俺達には関係ない。

「なんで一気に最下層まで降りられないのでしょうね?」

二階より下へ行くための階段がここにはなく、別の場所に設けられているのだ。
日常的に使うには物凄く不便だと思うけど......。

「重要な施設は防備を厚くする必要があるからのう。わざと遠回りをさせるように作られておるのじゃよ。」

「あぁ、そういえばそんな話を聞いたことがある気がします。」

「守りやすく、攻めにくい。ついでに迷いやすいってわけだ。まぁそれも地図を作られたら意味はあまりないがな。」

何か推理物の漫画とかで似た話を見たことがあるな、テロ対策とかだっけ?
何処の世界でも人は同じような考えに行きつくんだね......。
そんな話をしていると通路の向こうから足音が聞こえてくる。

「来たようじゃな。準備はいいかの?」

「あぁ、重装を脇に追いやるから残りは任せたぜ。」

「了解です。」

戦闘が始まった場合すぐにでも反対側の通路からゴーレムが押し寄せてくる可能性がある。
出来る限り手早く処理したいところだね。
のそりと姿を現したゴーレムにレギさんが飛びかかり吹き飛ばす。
後は一階の時と同じ流れだった。
手早く三体のゴーレムを倒した俺たちはすぐに次の巡回しているゴーレムたちに備えるが近づいてくる足音は聞こえない。

「どうやら、ゴーレムはお互いの状況を離れた位置では確認出来ないみたいですね。」

「だとすると警備としては少し不便な気もするのう。」

俺の言葉にナレアさんが返事をする。

「そうですね......警備の指令室みたいなのがあってそこから人が指示するとかじゃないですかね?」

「ふむ、完全自立よりはその方が簡単そうじゃが......そうなるとどうやって指示を出すかが問題じゃな。」

......それもそうだ。
無線とかで連絡ってわけにもいかないのだから。
クレイドラゴンさんは遠距離で念話の出来る魔道具を持っていたが、アレは妖猫様の魔法の込められた魔道具と言っていた。
念話以外に普通の会話も可能だとしたら遠距離で会話する魔道具もあるのかもしれないけれど......この遺跡は比較的新しい時代の物らしいし、魔法の込められたタイプの魔道具は使われていないだろう。

「遠距離で会話が出来る様な魔道具はないのですか?」

「それは各国で研究中の魔道具じゃな。妾は今まで必要なかったから研究したことはなかったがのう。」

ナレアさんはぼっちだったからな......。

「また失礼なことを考えておる様じゃな......必要がなかっただけじゃ。」

それは通信用魔道具がですか?
それとも友人がですか?

「......巡回ゴーレムが来たようじゃが......レギ殿、ケイが一人で戦いたいそうじゃよ?」

「いやいやいやいやいや!ここでその冗談はきつすぎますよ!」

ナレアさんから物凄い目で睨まれたが......命がかかった状況でのお仕置きは厳しすぎる。

「......まぁ遺跡から出た後でじっくり話す必要があるようじゃな。それまでは協力してやるのじゃ。」

外に出るまでは協力するって......それは完全に緊急事態で敵と一時的に手を組む時の台詞ですよね......?
音を立てて近づいてくるゴーレムはまだ距離がある。
ゴーレムには是非ともナレアさんの気分転換の為に頑張ってもらいたい。
新しいタイプとかギミックのあるゴーレムだといいな。
やがて姿を現したゴーレムは、俺の願いも空しく今までと同じタイプの組み合わせだった。



「流石に五度目ともなると慣れたものですね。」

同じ組み合わせと戦う事既に五回。
これといった問題もなく二階にいたゴーレムも全て排除することが出来た。

「まぁ、普通はこんなに簡単には倒せないじゃろうな。ゴーレムは簡単な相手ではない。しかもこの遺跡のゴーレムは他の遺跡のものよりも高性能じゃ。正直妾一人でここに来ていたら流石にどうしようもなかったじゃろうな。」

「強化魔法が無かったら力ずくで抑え込むなんて出来るはずないしな。遺跡の中じゃ同時に戦える人数はたかが知れているし......たとえ囲めたとしても有効打が与えられるかどうか。」

確かにゴーレムの硬さはかなりの物だったし、レギさんも強化を強めにかけないと相手の攻撃を受けるのに苦労していた。
強化魔法があったからこそ安定して戦うことが出来たのは間違いない。
普通の冒険者や騎士の人達ではゴーレムに対抗するのは非常に難しいだろう。

「ナレアさんは他の遺跡でどうやってゴーレムと戦っていたのですか?」

「ここまで強力なゴーレムとは戦ったことはなかったのう。何発か足の関節に魔力弾を叩きこめば折れる程度じゃった。」

なるほど......。
ここのゴーレムとはかなり性能が違いそうだね。

「そういえば、一階で戦った時、破壊したはずの腕が直っていましたよね?あれって何が起こったんですか?」

「あぁ、それなら調べてあるのじゃ。ここのゴーレムは四肢が取り外し可能なようでな。一番後ろにいる射撃型が幾つか腕や足なんかの予備を収納しておるみたいじゃな。」

「それはまた用意周到なことで......。」

「射撃型は軽装の割に動く必要がないからのう。さて、二階の調査を始めるのじゃ。一階に比べると少し広いから少し時間がかかると思うのじゃがいいじゃろうか?」

「あぁ、じっくり調べてくれ。二階には遺品の類はなかったからな。とりあえず俺たちはゴーレムを運び出しておくが......ケイかリィリのどっちかは残ってナレアの護衛をしてくれ。」

「ファラちゃん達との連絡もあるかもしれないからケイ君が残って護衛してくれるかな?」

「わかりました。ではナレアさん宜しくお願いします。」

「うむ、調査中は少し周りが見えないのでよろしく頼むのじゃ。」

ナレアさんの護衛に残ることになったのはいいけど......周りが見えなくなるのは少しだけかなぁ......?

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