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7章 西への旅路

第328話 理解できていない訳で

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『ふむ......何やら面白そうな話をしておるのう。』

俺がどう説明したものかと頭を悩ませていると、魔道具からナレアさんの声が聞こえて来た。

『お?ナレアか。帰ってきていたのか?』

『うむ、今しがたな。ノーラとリィリは土産をグルフに食わせておる。』

『お前はいかなくて良かったのか?』

『うむ、まぁ......そうじゃな。』

レギさんの問いかけに、何となくナレアさんの言葉が歯切れ悪い感じはするけど助かった。

『まぁそれよりも先程の話じゃが......魔物の正体が分かったのかの?』

「いえ、正体はまだ調べている所です。ただ少し気になることがあって、レギさんに相談していた所なのですが......。」

『ふむ?アンデッドと聞こえたが......。』

「えぇ。まず最初に魔物の事を目撃していたネズミ君がいたので、その子からの聞き取りで分かった内容を伝えておきますね。」

俺は先程レギさんに説明したものと同じ内容をナレアさんに伝える。

『なるほどのう......すまぬが、妾も心当たりはないのう......それでケイはアンデッドと睨んでおるのかの?』

「睨んでいると言うか......霊体って分かります?」

『霊体......いや、分からぬのう。どういったものなのじゃ?』

「う......ナレアさんもご存じないですか......困ったな......。」

ナレアさんが分からないってことは、幽霊系の魔物はいないってことのような気もするけど......いや、違うその結論に至る前に、幽霊的な物を俺が説明出来ないといけない。

『説明しにくいのかの?』

「そう、ですね......はっきりとこういった物って言う説明が出来ないのですよね......概念というか抽象的というか......そう言った感じなんですよね。なんか、こう......ふわっとしたものと言いますか......。」

いや、駄目だ。
何一つ具体的に説明できない......なんて言えばいいのだろう?

『ふむ......推察するに、実体のないアンデッドがケイの世界にはいるということかの?』

「えっと......いる、わけじゃないのですが......想像上の物というか......いや、もしかした居るのかもしれませんが......少なくとも僕は見たことがないです。」

『......なるほど......それは説明のしようがないかもしれぬが......何故そんな話になったのじゃ?』

「えっと......こちらで確認出来た情報から元の世界の話を思い出しました。それで......この世界は僕の元居た世界にとっては想像上の物が多いので、そういった物もあるかな?と思いまして......。」

『まぁ、絶対無いとは言い切れぬが......どういった物かもう少し説明してもらえぬことにはのう。』

「ですよねぇ......。」

レギさんに聞いてみようと息巻いて連絡した自分が恥ずかしい......何一つ説明出来て無いよ......。
何か......何かないのか!?

「あー死んだ人......いや、生き物が死んだ際にその場に想いを残すというか......肉体はなくなってもそこにいると言うか......。」

『体が無いのにそこにいる?謎かけのようじゃな......。』

うーん、自分で言っていても意味不明です。

「......あー精神体って感じなのですが。」

『精神体......体は無いのに意識だけが残っている......と言った感じかの?』

「そうです!それです!」

『ふむ......面白い話じゃのう。実際にそういったことが確認されたわけでは無く、想像上の物なのじゃろ?うむ、実に面白い考え方じゃ。死してなお想いを残すか......。』

ナレアさんの様子はこちらからでは見えないが......ある程度上手いこと伝わった気がする。
いや、俺のぐちゃぐちゃな説明をナレアさんが拾ってくれた感じだけど。

『あーなんとなく言いたいことは分かった気がするが......今回の魔物がそう言う感じなのか?』

俺とナレアさんの話を黙って聞いていたレギさんが俺に問いかけてくる。
そういえば、無駄に説明が長かったな......。

「そういう感じと言いますか......こちらでは僕が言っていたようなことはあるのかな?と思いまして......。」

『......死んでも意識が残る、か......リィリの事を除けば、聞いたことがないな。』

レギさんが少し考えるような雰囲気で言う。
リィリさんか......確かに生前の記憶を残したまま、身体はスケルトンになっていたからな。
身体が動かない間も意識があった的なことは言っていたし......まぁ、本当にずっと意識があったかどうかは分からないとも言っていたけど。

『そうじゃな......何故リィリの身にその様なことが起こったのかは分からぬが......リィリだけが特別と考えるよりは、知られていないだけで他にも同じような事例があると考える方が自然じゃな。』

『だが今回の魔物は骨すらないんだろ?』

「えぇ、そう聞いています。」

『いや、だからこそケイが精神体が......と言う話を持ち出してきたのじゃろ?』

『だが何度かそういう訳ではないって言っていたような......あー、つまりさっきから話がふわふわしていたのは、上手く説明できないから俺達にどう質問したらいいか分からなかったってことか......ふっ。』

『レギ殿......それはいくらなんでも身も蓋もなさすぎじゃ。』

ちょっ、レギさんが噴き出したのですけど!?
ちょー恥ずかしいのですが!?
余計な事ばかり言ってどうもすみませんでした!

『これは仕方ないのじゃ。共通する概念があるかどうかを確認するための話じゃからな。ケイが上手く説明出来なくても無理からぬことよ。まぁ......説明する方法が無いわけでは無いがのう。』

ナレアさん......フォローしてくれてるけど、最後にもっと上手くやれると思うと言われると......へこみます。

「えーっと......とりあえず、お二人の知る限り人が死んだ後に魔物化するという事は、その遺体や骨などが魔力によって動かされるという事であって、人としての何かが残って動くようなものではない。例外としてリィリさんのような存在が確認出来ている以上、完全否定までは出来ない......ってところですかね?」

『うむ、そうなるのじゃ。』

「ありがとうございます。今回の件が例外に当てはまる場合、説明が物凄く困難という事は分かりました。」

『依頼は調査だからな。しっかり報告書はあげろよ。』

「......レギさん、今からでも応援に来てくれませんか?もしくはナレアさん。こういった状況はナレアさんが調べて報告書を作った方が、より素晴らしい物......というか分かりやすい物になると思うのですが......。」

『『......。』』

いつもは頼もしい二人の声が途絶える。
いや、二人ともここに来たくない訳では無いのは分かる。
レギさんは先に別の依頼を受けている以上、来たくても来ることが出来ないだろう。
ナレアさんはナレアさんで、こういった不思議な現象に首を突っ込みたがらない訳がない。
でも恐らくノーラちゃんと約束が色々あるのだろう。
勿論、俺が助けを求めていると言えば、ノーラちゃんはすぐにでも助けにって言ってくれるだろうけど......うん、さっきのは完全に失言だった。
二人とも未知に挑んでいる俺の事を非常に心配してくれているだろうし......俺自身がそんなことを言って余計に心配させるのは、情けなさすぎて申し訳ない。

「すみません、冗談です。ちょっと書類を作るのが嫌だっただけです。報告書を作るときに相談させてもらうので、それ以外は心配しないでください。」

『ほほ、妾は高いぞ?』

「俺は読みやすい書き方くらいしか教えられないと思うがな。」

二人が俺の誤魔化しの軽口に乗ってくれる。
こういう所も、皆が俺を安心して送り出せない原因だよなぁ......もっと考えて口にしないと......。
後、もっと説明上手くなりたい......。
思いつきから行った通信だったが......色々と反省ばかりが募る内容だったよ。
俺は自分に呆れつつ、二人との通信を終えた。

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